母が封筒で「現金」を送ってきます。合計110万円を越えているのですが、これって贈与税の申告漏れになるのでしょうか?
配信日: 2024.04.29
今回は贈与税と、贈与税が非課税となる贈与財産について解説します。
執筆者:辻章嗣(つじ のりつぐ)
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士
元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
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相続と贈与
贈与税は相続税法(※1)に、相続税とまとめて規定されています。
「相続」は、亡くなった方が保有していた財産を、特定の人が相続や遺贈により取得することで、いわば人の死によって必ず発生する財産の移動になります。一方で「贈与」とは、特定の個人などへ生前に財産を渡す行為であり、相続によらない財産の特別な移動といえます。
このような考え方を基に、贈与税は相続税法に、相続税とともに規定されており、相続税に比して贈与税の税率は高く設定されています。
「暦年課税」と「相続時精算課税」
贈与税は、生前に個人から財産を贈与されたときに課税される税金で、課税方法には「暦年課税」と「相続時精算課税」があります(※2)。
1.暦年課税
「暦年課税」は、1人の人が1月1日から12月31日までの1年間に、贈与によりもらった財産を対象として課税する方法です。課税される額は、贈与された財産の合計額から、基礎控除額110万円を差し引いた額となります。
なお、贈与を受けた年の1月1日において18歳以上の者が、父母や祖父母などの直系尊属から財産を贈与により取得した場合は、直系尊属以外の人から贈与された場合に比して、暦年課税における税率が緩和されています。
また、複数の人から贈与を受けた場合は、その人数に関わらず、贈与を受けた財産の合計額から基礎控除額の110万円を控除した額に、相続税が課税されます(※3)。
2.相続時精算課税
「相続時精算課税」は、特定の要件を満たす方が対象となる方法です。具体的には、贈与を受けたときに、そこから特別控除額2500万円を控除した額に税率を乗じて求めた贈与税をいったん納付し、贈与者が亡くなったときに、その贈与財産と相続財産を合計した額を基に計算される相続税から、贈与税を控除して清算します。
なお、「相続時精算課税」と「暦年課税」のどちらを選ぶかは、贈与する対象者ごとに選択することができます。一度「相続時精算課税」を選択した場合は「暦年課税」に変えることはできません。
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生活費や教育費は贈与税が課税されない
親子などの扶養義務者から、生活費や教育費として、必要な都度直接これらに充てるために、通常必要とされる範囲内で贈与された財産は、贈与税が課税されません(※4)。「生活費」とは通常の日常生活に必要な費用をいい、治療費、養育費、子育て費用などを含みます。また「教育費」とは、学費、教材費、文具費などをいいます。
ただし、生活費や教育費として贈与を受けた場合であっても、預貯金として預け入れたり、不動産や金融資産の購入に充てたりする場合には、贈与税の対象となります。
まとめ
贈与税の「暦年課税」には110万円の基礎控除額があり、その年に受けた贈与額の合計額が110万円を超えなければ課税されません。また、親子などの扶養義務者から生活費や教育費として譲与された財産は、その目的どおりに使用される場合であれば非課税となり、たとえ110万円を超えたとしても課税されません。
出典
(※1)e-Gov法令検索 相続税法
(※2)国税庁 パンフレット「暮らしの税情報」(令和5年版) 財産をもらったとき
(※3)国税庁 タックスアンサー No.4410 複数の人から贈与を受けたとき(暦年課税)
(※4)国税庁タックスアンサー No.4405 贈与税がかからない場合
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士