更新日: 2024.05.23 その他相続
夫を亡くした後も、義理の母を「5年間」介護していました。その義母も亡くなったのですが、私に「相続の権利」は何もないのでしょうか? 介護はずっと私1人で大変だったのですが…
遺言書で妻にも相続をさせる旨が書いてあれば別ですが、遺言書がない場合、介護をしていたにもかかわらず妻に何の財産も相続できません。不公平に感じるのも当然といえるでしょう。
実はこのようなケースでも活用できる「特別の寄与」という制度があります。詳しく見ていきましょう。
執筆者:沢渡こーじ(さわたり こーじ)
公認会計士
特別の寄与という制度があります
亡くなった人の親族で相続人ではない人の内、亡くなった人の財産の維持または増加に特別の寄与をした人(特別寄与者)は、相続人に対して寄与に応じた金銭(特別寄与料)の請求ができます。
例えば、亡くなった人の療養看護を無償で行っていた場合に請求できます。療養看護を無償で提供したことによって、ヘルパーを依頼せずに済み、その分の料金がかからずに済んだことになるからです。
請求できる人
請求できるのは、(1)親族であること、(2)相続人でないこと、(3)相続放棄などによって相続権を失った人でないこと、の要件を満たす人です。親族とは6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族です。
義母は3親等内の姻族になるため、特別寄与料の請求ができます。
請求できる要件
請求できる要件は、(1)請求権者が被相続人に対して療養看護などの労務提供をしたこと、(2)無償で労務提供をしたこと、の2つです。
この内、(1)に関して療養看護などの労務提供と亡くなった人の財産の維持・増加との間に因果関係があることが必要になります。
例えば、亡くなった人を看護したためでヘルパーを依頼した場合の支出がなかった、というような関係が必要であり、単に精神的な支えとなっていただけの場合は該当しません。
特別の寄与には療養看護だけでなく、亡くなった人の事業を手伝った場合も該当します。
また、(2)の無償に関して、もし利益を得ていたとしても労務に対して著しく少ないときは「無償」になると考えられています。
計算方法や相場はどれくらい?
特別寄与料に関して、民法1050条により「家庭裁判所は、寄与の時期、方法および程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、特別寄与料の額を定める」とされています。
事情はケース・バイ・ケースのため明確な相場はないものの、看護・介護や事業への従事に基づく計算方法が目安として使われています。
療養・介護を行っていた場合、「日当額×療養看護の日数×裁量割合」という式で計算されます。
日当額はおおむね1人5000円~8000円程度、裁量割合は0.5~0.7の範囲が多いようです。
日当額は介護保険制度を参考にされています。裁量割合は、親族にはもともと扶養義務があるため、職業介護者よりも費用を控えめに計算するためのものです。
亡くなった夫の母を5年間介護していた場合、日当額を5000円、裁量割合を0.7とすると、「5000円×365日×5年×0.7」で638万7500円請求できます。
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請求方法は?
特別寄与料の請求は、まず相続人との協議によって行い、協議がまとまらない場合は家庭裁判所への調停申し立てとなります。
ただし、申立期間は特別寄与者が相続の開始および相続人を知ったときから6ヶ月、または相続開始から1年間です。
まとめ
義母を1人で介護しており、ヘルパー代を支払わずに済んでいたのであれば、特別寄与料を請求できます。請求期間が限られているため、早めに請求をしましょう。
出典
裁判所 特別の寄与に関する処分調停
e-Gov法令検索 民法
国税庁 No.4132 相続人の範囲と法定相続分
執筆者:沢渡こーじ
公認会計士