更新日: 2024.05.30 贈与
実家に帰省時、父から「年100万円」の生前贈与の話が出ました。孫に贈与したほうが「得」と聞きましたが、本当なのでしょうか? 節税効果はどう違いますか?
その際、生前の資産移転の選択肢として、贈与の話が出てくることもあるでしょう。その際、贈与に関する税制を知らないと、後に想定外の事態に陥ることもあり得ます。
本記事では、子ではなく孫に贈与するメリットについて解説します。せっかく贈与をするのであれば、可能な限り「お得」に贈与できるようにしましょう。ぜひ本記事を参考にしてみてください。
執筆者:小林裕(こばやし ゆう)
FP1級技能士、宅地建物取引士、プライマリー・プライベートバンカー、事業承継・M&Aエキスパート
子より孫に暦年贈与するほうが節税効果は高い
結論としては、子より孫へ贈与を行うほうが節税効果は高いといえます。
暦年贈与について勉強をしている人は「子に渡す場合でも同じく、1年間で110万円までであれば非課税で渡せるのでは?」と感じるかもしれません。たしかに「贈与時点」においては子でも孫でも1年間で110万円までの贈与は非課税です。しかし注意すべきポイントは「贈与時点」だけでなく、「贈与者が亡くなった時点」にもあります。
次項では、暦年贈与の制度や注意点について解説していきます。
暦年贈与の制度と注意点
暦年贈与は、1年間(1月1日~12月31日)の贈与額が110万円以下の場合に、贈与税が非課税となる方法です。この暦年贈与で渡されるお金については、資金使途に制限がなく、受贈者の自由に利用することができます。
一方でこの暦年贈与には「持ち戻し」制度という大きな注意点があります。「持ち戻し」制度では、贈与者が亡くなり相続が実施されるとき、一定期間分の贈与総額に「持ち戻し」が適用されます。
「持ち戻し」が生じた際には、お金を渡していた贈与者の持ち戻し期間における贈与総額が相続財産に足し戻され、相続税の課税対象となってしまいます。
2023年まではこの「持ち戻し」期間は3年間でしたが、2024年1月1日以降には段階的に7年間へ対象期間が引き延ばされています。例えば2031年1月1日に贈与者が亡くなってしまった際には、2024年1月1日以降に歴年贈与された総額が「持ち戻し」の対象となり、その金額に対して相続税が課税されます。
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法定相続人以外への贈与であれば「持ち戻し」の対象外
前項では暦年贈与の制度と注意点について解説しましたが、本項では、前項までの内容を踏まえた上で「孫に贈与したほうが得」といわれる理由について触れます。
「孫に贈与したほうが得」といわれる理由は、「孫などの法定相続人以外への贈与には原則「持ち戻し」が適用されない」からです。「持ち戻し」制度の対象となるのは、子や配偶者をはじめとした法定相続人への贈与です。
そのため、「持ち戻し」期間中に贈与者が亡くなるリスクを考慮した場合には、「子どもより孫に渡すほうが、将来の課税リスクを低減することができる」といえるのです。
なお、孫が法定相続人となるのは、被相続人の子、つまり孫の親がすでに亡くなっている場合です。
暦年贈与を有効に活用したい
本記事では、子より孫に暦年贈与するメリットについて解説しました。税制が改正され、「持ち戻し」期間が3年から7年に延びたため、孫への贈与のほうが将来の課税リスクを減らすことができます。
しかし「孫に若いうちから大金を渡したくない」という人も多いはずです。孫ではなく子へ贈与するのであれば、「持ち戻し」制度について十分に理解しておきましょう。将来、相続税で苦労しないためにも親子で十分に話し合った上で、今後の資産移転について判断したいですね。
出典
国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
国税庁 No.4405 贈与税がかからない場合
財務省 令和5年度 税制改正の大綱
執筆者:小林裕
FP1級技能士、宅地建物取引士、プライマリー・プライベートバンカー、事業承継・M&Aエキスパート