更新日: 2024.07.16 贈与
息子家族が「外食代が高くて2ヶ月外食していない」と言うので、毎月1~2万円ほど渡したいです。息子は税金を払うことになりますか?
そんななか、生活を少しでも豊かにするために、少しでも子どもに援助をしたいと思うのは親心です。今回の相談者が心配しているのは、援助をしたことで贈与税が発生すること。今回は贈与について考えてみます。
執筆者:當舎緑(とうしゃ みどり)
社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。
阪神淡路大震災の経験から、法律やお金の大切さを実感し、開業後は、顧問先の会社の労働保険関係や社会保険関係の手続き、相談にのる傍ら、一般消費者向けのセミナーや執筆活動も精力的に行っている。著書は、「3級FP過去問題集」(金融ブックス)。「子どもにかけるお金の本」(主婦の友社)「もらい忘れ年金の受け取り方」(近代セールス社)など。女2人男1人の3児の母でもある。
贈与税のきほんの“き”
個人から財産をもらった時には、贈与税という税金が課税されます。この贈与税は「受け取った人」が支払います。ただ、必ず支払わないといけないわけではなく、贈与された金額によって課税されるケースと非課税となるケースがあります。
贈与税の課税方法には、「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあり、贈与を受けた方は、贈与した方ごとにそれぞれの課税方法が選択できます。暦年課税は、1年間(1月1日から12月31日)に贈与を受けた合計額に110万円を差し引いた残額に課税する方法です。
相続時精算課税は、贈与する人が60歳以上の父母や祖父母、贈与される人は18歳以上で子や孫など、推定相続人と対象者が限られていることが特徴です。そして、同じく1年間に贈与を受けた合計額から特別控除額2500万円を控除した残額に対して20%の税率が一律に課税される方法です。
なお、一度相続時精算課税を選択すると、やっぱり暦年課税にしたいと思っても変更できません。つまり、どちらの課税方法を選択するかによって、課税されるかどうか、いくら贈与税を支払うかが決定されるというわけです。
贈与税を支払いたくないときは
前段では、贈与税の課税方法は2つの方法があると説明しました。贈与税を支払いたくないということであれば、暦年贈与なら110万円までにしておくと贈与税を支払わなくて済みます。相続時精算課税なら2500万円を超えないようにすると贈与税がかかりません。
今回のように、外食費などを少額に不定期に渡しているケースで、月々2万円程度渡したいという場合は、年間で24万円。であれば、当然110万円以内に収まりますから、税金を支払う必要はありません。
今回は外食費ということで現金を渡していますが、その他、現金を支払わないにしても、祖父母が孫のために通帳を作るケースについても説明しておきます。
月々貯めるために、手元に通帳をおいて、「将来渡そう」というケースもあるかもしれません。これはいわゆる「名義預金」ですが、通帳の名義が孫でも、祖父母が通帳を手元に置いており、結局孫が自由に出し入れできないという状態であれば、孫の預金とはいえません。
こういった預金に対しても贈与税はかかりませんが、祖父母の資産となりますから相続の際に問題となることはありえます。
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親から子への贈与にはいろいろなパターンが考えられる
食事などの日常生活費、旅行の費用、孫の習い事費用など、親と同居していなくても、何らかの費用を支援してもらっていることはよくあることです。ただ、扶養親族の場合には、非課税か課税かを考えずに、110万円という基準を考えずにすむケースがあります。国税庁のホームページから、要点を抜粋してご紹介しましょう。
扶養義務者相互間において生活費または教育費に充てるために贈与を受けた財産のうち「通常必要と認められるもの」については、贈与税の課税対象となりません。
(注)
1.「扶養義務者」とは、次の者をいいます。 (1) 配偶者、(2) 直系血族および兄弟姉妹、(3) 家庭裁判所の審判を受けて扶養義務者となった三親等内の親族 、(4) 三親等内の親族で生計を一にする者。なお、扶養義務者に該当するかどうかは、贈与の時の状況により判断します。
2. 「生活費」とは、その者の通常の日常生活を営むのに必要な費用(教育費を除きます)をいいます。また、治療費や養育費その他これらに準ずるもの(保険金または損害賠償金により補てんされる部分の金額を除きます)を含みます。
3. 「教育費」とは、被扶養者(子や孫)の教育上通常必要と認められる学資、教材費、文具費等をいい、義務教育費に限られません。
(出典:国税庁「「扶養義務者(父母や祖父母)から「生活費」または「教育費」の贈与を受けた場合の贈与税に関するQ&A」について(情報)」)
この文面から考えると、扶養義務者の場合、贈与税はかからないということです。
配偶者間で「扶養」かどうかを考えるケースはありますが、親族同士では、前述したように、直系血族や兄弟姉妹などでも、扶養の義務がありますから、「課税されるかも」という心配はしなくてもいいでしょう。
出典
総務省 家計調査報告(家計収支編)2024年(令和6年)3月分及び1〜3月期平均
国税庁 「扶養義務者(父母や祖父母)から「生活費」又は「教育費」の贈与を受けた場合の贈与税に関するQ&A」について(情報)
執筆者:當舎緑
社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。