更新日: 2024.07.16 贈与
孫、父母、祖父母みんなが喜ぶ! 「教育資金の一括贈与の非課税制度」を知っておこう!
なお、今回は、「直系尊属である祖父が贈与者、その孫が受贈者」という事例を想定して記載します。
執筆者:高橋庸夫(たかはし つねお)
ファイナンシャル・プランナー
住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。
教育資金の一括贈与制度の概要
この制度は、令和8年3月31日まで(令和5年税制改正により3年間期間が延長)の間に、孫(受贈者)の教育資金として金融機関に教育資金口座を開設し、その口座に祖父(贈与者)から金銭等の一括贈与を受けた場合、1500万円を限度として贈与税が非課税となる制度です。なお、金融機関を経由して教育資金非課税申告書を受贈者の納税地の税務署長に提出する必要があります。
その他の制度適用の主なポイントは、以下のとおりです。
(1)贈与者は直系尊属(父母、祖父母)
(2)受贈者は30歳未満の子や孫(30歳以上に在学の場合は最長40歳まで)
(3)受贈者の前年の合計所得金額が1000万円以下
(4)限度額は1500万円(うち、学校等以外への支払いは500万円まで)
教育資金とは?
「教育資金」は、学校等に支払う金銭と、学校等以外に支払う金銭の2つに大きく分かれます。
「学校等」には、学校教育法に定められた幼稚園、小・中学校、高等学校、大学、大学院、専修学校、一定の認定こども園、保育所などが含まれます。そのため、孫が幼稚園に入園する前に1500万円を一括贈与して、その孫が大学を卒業するまでの一貫した教育資金として使ってもらうことも想定されます。
また、対象となる費用の範囲は非常に広く、入学金、授業料、施設設備費などの必要費用とともに、学用品代、修学旅行費、学校給食費なども対象となります。さらに、通学定期券代や留学のための渡航費も対象とすることができます。
学校等以外(学習塾や習い事など)につては、ピアノや書道、サッカー、水泳などのスポーツ等の活動対価や必要な物品の購入にも使用することができます。
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教育資金口座からの払い出し
教育資金の支払いを行った場合、その支払いに関する領収書などの書類を金融機関に提出して、払い出しを受けることになります。払い出し方法には、教育資金の支払いの都度、払い出し請求する方法(支払日から1年以内に領収書等を提出)と、まとめて請求する方法(支払日の翌年3月15日までに領収書等を提出)の2つがあります。
祖父(贈与者)が亡くなるとどうなる?
祖父(贈与者)が死亡した場合、原則として、その死亡日時点の非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額のうち、一定の計算をした金額(管理残額)が、「その贈与者からの相続等による取得」とみなされます。ただし、孫(受贈者)が23歳未満の場合や平成31年4月1日以後の教育資金支出がないなど一定の場合には相続等による取得とはみなされません。
また、令和5年4月1日以後に支出し、同日以後に祖父が死亡した場合、祖父の死亡に係る相続税の課税価格の合計額が5億円超のときは、その教育資金支出分は「相続等による取得」とみなされます。
さらに、孫(受贈者)の管理残額に関する相続税額につては、「相続税額の2割加算」の対象となる場合があるので、注意が必要です。
贈与税が非課税となる額
孫(受贈者)が4歳のときに、祖父(贈与者)から教育資金として1500万円の一括贈与を受けた場合を仮定してみましょう。
直系尊属から18歳以上の子や孫が贈与を受けた場合には、特例贈与財産として特例税率が適用できますが、今回は受贈者が4歳であるため、一般税率の適用となります。仮に、暦年課税で基礎控除額110万円を控除した後の課税所得1390万円として計算した贈与税額は、450万5000円(1390万円×45%-175万円)となります。
教育資金の一括贈与制度を利用することにより、この贈与税額が非課税となるわけです。
まとめ
教育資金の一括贈与制度を利用することにより、孫(受贈者)にとっては学べる機会や選択肢の可能性の幅が広がることや、贈与税が非課税となることなどのメリットがあります。
父母にとっても、教育資金の準備に対する心配が軽減されることで、状況によってはその分のお金を他の資金の準備に回すことができる、などのメリットがあります。
祖父(贈与者)にとっては、「かわいい孫」の成長や将来に対して、直接的かつ積極的に貢献できることや、自分の財産を非課税で次世代・次々世代に移転することができるなどのメリットがあるでしょう。
ただし、制度を利用するためには金融機関等での手続きが必要となることが少々煩わしく、それが唯一のデメリットといえるのかもしれません。
出典
国税庁 祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし
一般社団法人信託協会 信託の受託概況
国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー