更新日: 2024.07.17 相続税
母の死後「へそくり口座」を発見しました。残高「200万円」なのですが、下ろして使っても問題ないでしょうか? 口座凍結前に“葬儀費用”を引き出したいです
では、もし親の死後に「へそくり口座」が見つかった場合は、他の相続人に何も言わず勝手に下ろしてもよいのでしょうか。
本記事では、遺産分割前に親の「へそくり口座」が見つかり、「200万円」が入っていた事例をもとに解説します。ぜひ参考にしてみてください。
執筆者:小林裕(こばやし ゆう)
FP1級技能士、宅地建物取引士、プライマリー・プライベートバンカー、事業承継・M&Aエキスパート
目次
他の相続人に無断で勝手にお金を下ろすのは避けるべき
亡くなった人の口座から、他の相続人に相談もせずお金を下ろすのは避けるべきです。理由としては、「遺産分割時のトラブルのもと」になりやすいからです。相続財産の金額や所在を透明化するためにも、へそくり口座を発見した際には、必ず他の相続人に存在を伝えるようにしましょう。
銀行口座凍結のタイミング
金融機関が名義人の死亡を知った場合に口座は凍結されますが、一般的に銀行では「遺族からの連絡があったとき」に名義人の死亡を知ることになります。その時点から口座は凍結され、銀行での相続手続きが完了するまではお金を動かせなくなります。
しかし、「口座が凍結される前に」と故人の口座からATMで出金するといった行為は避けるべきです。まだ凍結されていない「へそくり口座」についても同様です。「遺産分割時のトラブルのもと」はできるだけ少なくしておきましょう。
なお、お葬式代の工面などでどうしてもお金の準備が必要な場合には、「預貯金の仮払い制度」を利用できます。
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遺産分割前に故人の口座のお金を使う必要があるときは
前述のとおり、原則として、遺産分割の手続きを終えるまでは金融機関から故人のお金を引き出すことはできませんが、人が亡くなる際にはお葬式代をはじめとして何かと費用がかかります。
どうしてもすぐにお金を工面する必要がある場合には、「預貯金の仮払い制度」を利用するとよいでしょう。これは2019年の相続法の改正により新設されたものであり、簡単に言えば「遺産分割前でも故人の預貯金を単独の相続人が引き出せる」制度です。
引き出せる金額の上限は「相続開始時の預貯金残高×1/3×法定相続分」かつ「金融機関ごとに150万円まで」です。引き出した金額については、その後の遺産分割において、 引き出した相続人が取得するものとして調整することになります。
制度の詳細や利用方法については、故人の預金のある金融機関に確認するようにしましょう。
へそくり口座を見つけた場合は状況に応じて申告が必要
へそくり口座が見つかり、遺産総額が「基礎控除額」を超える場合には、他の相続財産と合わせて、きちんと申告する必要があります。
「基礎控除額」は「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」の式によって計算されます。例えば、法定相続人が配偶者1人、子ども1人の計2人のケースだと、基礎控除額は4200万円になります。
そのため、上記のケースでタンス預金やへそくり口座を含めた相続財産の総額が4200万円未満の場合であれば、相続税の課税はされないことになり、申告する必要はありません。
一方、へそくり口座が見つかったことで基礎控除額を超える場合には、相続税を納める必要があるため、遺産総額の計算誤りがないように注意を払いましょう。
相続財産は勝手に手をつけてはいけない
本記事では、遺産分割前に故人の「へそくり口座」を発見した場合の注意点について解説しました。「へそくり口座」を見つけた場合には勝手に引き出さず、他の相続人にもその存在を公表し透明化を図りましょう。相続にあたっては、「相続財産総額の明確化」と「遺産分割時のトラブル回避」が重要です。
出典
一般社団法人 全国銀行協会 遺産分割前の相続預金の払戻し制度のご案内チラシ
執筆者:小林裕
FP1級技能士、宅地建物取引士、プライマリー・プライベートバンカー、事業承継・M&Aエキスパート