更新日: 2024.07.20 贈与
父から毎年「100万円」を相続税対策として受け取っています。来年は子どもの大学費用として「400万円」援助してくれるそうなのですが、非課税の制度を利用すれば、100万円も受け取って大丈夫ですよね…?
本記事では教育資金に関する贈与について、贈与税の決まり方や特例制度を解説します。
執筆者:浜崎遥翔(はまさき はると)
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
目次
何も考えずに贈与を受けてしまうと贈与税が発生する
先に結論を言ってしまうと、毎年もらう100万円と父から見て孫にあたる子どもの学費として400万円をもらった年には、500万円の贈与があったとして贈与税がかかります。
理由は2つあります。「贈与税の基礎控除は110万円であり、年間110万円を超える贈与には贈与税がかかるから」と、「教育資金だからといって無条件で贈与税が非課税になるわけではないから」です。
直系の尊属に当たる父(配偶者の父は対象外)からの贈与であれば、48万5000円の贈与税がかかります。
ただし、100万円の贈与は本人、400万円の贈与は子どもに対するものと考えることもできます。額が大きいので子ども用の口座に入れる、契約書を書くなど、子どもに贈与があったことを明確にすべきですが、この場合の贈与税は本人0円、子どもに33万5000円となり、子どもが確定申告をした上で贈与税を支払う必要があります。
贈与税を非課税とする2つの方法は?
教育費を非課税とする方法は2つあります。「都度贈与を使い基礎控除の範囲内で抑える方法」と「教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税制度を使う方法」です。
都度贈与と基礎控除を活用する
国税庁によると、「扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの」には贈与税がかからないとされています。例えば、祖父からもらった大学の初年度の学費100万円、教科書代10万円、下宿費用60万円など、その都度充てたお金には贈与税がかからないのです。
ただし、「生活費や教育費の名目で贈与を受けた場合であっても、それを預金したり株式や不動産などの買入資金に充てている場合には贈与税がかかることになります」とされているので、400万円のうち少なくとも年内に使い切らなかった分には贈与税がかかります。
基礎控除額が110万円であることを考えると、贈与の金額は「その年のうちに使う学費や生活費+110万円」を超えないようにするべきです。1年間に400万円の贈与を受けるのではなく、何年かに分けたほうが良いかもしれません。
税務署などから尋ねられた際、贈与を受けたお金を学費や生活費に充てたことを後から証明できるように、領収書や振り込みの明細書は残しておきましょう。
教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税制度を使う
教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税制度(以下教育資金の非課税制度)を使えば、最大1500万円の贈与にかかる贈与税を非課税にできます。教育資金の非課税制度の主な流れは以下の通りです。
1.金融機関で一定の契約に基づき口座を開設し、祖父母から一括で贈与を受ける
2.贈与を受けた孫が教育資金として支払ったことを示す書類(領収書など)を金融機関に提出
3.金融機関から払出し
4.契約終了時に残っていた金額や教育資金以外で払い出した金額に対しては贈与税を支払う
※2→3以外の払い出し方法もあり。契約中に贈与者が死亡した場合は、管理残額について相続があったとみなされる
制度を使うためには、金融機関との契約が必要であるため、手続きが煩雑であることは否めません。しかし、今回の400万円のように数年分の教育資金を一気に贈与できるメリットはあります。
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毎年100万円もらうことに対しても対策が必要かも
別の問題ですが、毎年100万円の贈与で贈与税がかかる可能性にも注意が必要です。毎年100万円ずつの場合、毎年基礎控除110万円が使えるので贈与税はかからないように思えます。
ただし、毎年同じ金額の贈与をしていると「定期金給付契約に基づく定期金に関する権利の贈与」とみなされ、贈与税がかかることがあります。
100万円×10年間の贈与の場合、「100万円を毎年贈与した」ではなく、「1000万円分を10年かけて渡す権利を贈与した」とされ、1年間で1000万円の贈与をしたのと同じ扱いになるのです。この場合、直系尊属からの贈与であれば177万円の贈与税がかかります。
税務署が個別に判断するため一概には言えませんが、毎年の金額や時期を変える、毎年贈与があったことを契約書として残すことが有効だと言われています。
多額の贈与を受ける場合はあらかじめ贈与税を確認しよう
教育資金の贈与は贈与税の優遇が受けやすいものではありますが、「教育資金だから無条件で非課税」ではないことに注意が必要です。対策なしに贈与をし贈与税を支払わないでいると、後日税務署から指摘を受け、ペナルティを受ける可能性も出てきます。
ただし、贈与税を払わずに済ませられる方法はあるので、しっかり対策することで後悔を防ぎましょう。
出典
国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
国税庁 No.4405 贈与税がかからない場合
国税庁 祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし
国税庁 No.4402 贈与税がかかる場合
執筆者:浜崎遥翔
2級ファイナンシャル・プランニング技能士