親が「1000万円の借金」を残して亡くなりました。私が返済しなければなりませんか?
配信日: 2024.07.23
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
原則はプラスの財産もマイナスの財産も引き継ぐ
相続時は原則として、亡くなった方の有している権利・義務の一切を承継します。額の大小にかかわらず、プラスの財産(例えば現金や預貯金)とマイナスの財産(例えば1000万円の借金)の全部を、相続人は承継するのです。これを「単純承認」といいます。
もし、相続人が自分1人の場合は、その全てを1人で承継します。つまり、親が生前返しきれなかった借金を抱えながら亡くなり、相続財産の中に1000万円の借金がある状況であれば、相続人は自身1人で、その1000万円の借金を返済しなければなりません。
仮に「プラスの相続財産が現金800万円だけしかない」という状況であっても、単純承認をしたら、マイナスの財産1000万円全額を相続し、親に代わり返済していかなければならないのです。
相続放棄が有効なこともある
先の事例のように、プラスの財産800万円、マイナスの財産1000万円という状況では、相続しても額面上は負債が増えるだけで、損失が生じてしまいます。そういった状況で、負債まで相続するのはつらい面があるでしょう。
そういったときに利用できるのが「相続放棄」という制度です。相続放棄とは、相続人が「初めから相続人ではなかった」と見なされる制度です。要はプラスの財産を一切受け取ることができなくなる代わりに、マイナスの財産も一切受け取らなくてもよくなるのです。
プラスの財産よりマイナスの財産が大きい場合や、マイナスの財産がどれくらいあるのか分からないような場合には、相続放棄が有効になります。
なお、相続放棄を行う場合は、「相続があったことを知った日から3ヶ月以内」という限られた期間に、亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所にて、申述の手続きをしなければなりません。相続財産を受け取らなければ自動で相続放棄となる、などの要件はありません。
その他詳細については、該当の住所地を管轄する家庭裁判所へ相談してみてください。
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「限定承認」という手もある
制度としては、相続放棄のほか、「限定承認」というものもあります。限定承認とは、プラスの財産の範囲内において、マイナスの財産を承継するものです。例えばプラスの財産が800万円の場合、引き継ぐ借金の額は800万円の範囲内となる、という具合です。
ただし、限定承認はプラスの範囲でマイナスの財産を引き継ぐため、清算手続きや財産の換価手続きなどで時間と手間が多くかかり、一般的にハードルがかなり高い手続きです。
特に相続人が複数人いる場合は、全員でそろって手続きをする必要があり、なおのことハードルは高くなります。こちらも詳細については家庭裁判所へ相談してみてください。
まとめ
親が1000万円の借金を残して亡くなった場合でも、相続放棄をすることで、返済義務から免れることができます。しかし、3ヶ月以内に手続きすることが必要であるなど、注意事項もあるため、早急に対応していかなければなりません。
もし相続において、親の借金をはじめマイナスの財産の存在に悩んでいるのであれば、相続放棄について一度検討をしてみてください。
出典
裁判所 相続の放棄の申述
執筆者:柘植輝
行政書士