更新日: 2024.07.25 贈与
実家に帰省したら、父から「生前贈与」の話が!「年110万円」までなら非課税らしいけど、相続税がかかる場合もあるって本当? 注意が必要な“ポイント”を解説
しかし、贈与を実施する前に知っておくべき注意点が存在します。「年110万円までは非課税」ということを知っている人も、贈与実施後に思わぬ事態に陥らないよう、参考にしてください。
執筆者:小林裕(こばやし ゆう)
FP1級技能士、宅地建物取引士、プライマリー・プライベートバンカー、事業承継・M&Aエキスパート
暦年贈与を行っても後に相続税がかかる可能性がある
暦年贈与は、1年間(1月1日~12月31日)の贈与合計額が基礎控除額の110万円以下の場合、贈与税が非課税となる贈与方法です。
110万円以下なら非課税で贈与が行える暦年贈与は、魅力的な贈与方法ですが、注意点もあります。それは贈与をした側の人が亡くなり相続を開始するタイミングで、一定期間分の贈与金額の「持ち戻し」が発生する点です。
「持ち戻し」が発生すると、亡くなる前の持ち戻し期間中の贈与額が相続財産に加算されてしまいます。そのため、贈与した側の人が亡くなったタイミングで結局相続税の課税対象になる可能性があるということです。
2023年まではこの「持ち戻し」の期間は3年間でした。しかし2024年1月1日以降は段階的に7年間に引き伸ばされることが決定しています。
例をあげると、暦年贈与を行っていた人が2031年1月1日に亡くなった場合には、2024年1月1日以降に行った暦年贈与の金額が全て「持ち戻し」となり、相続税の課税対象となってしまいます。
この「持ち戻し」制度を念頭においた場合、高齢になってからの暦年贈与では、当初思い描いていた通りの金額を贈与できない可能性があります。
法定相続人以外への贈与であれば「持ち戻し」の対象外
前項で暦年贈与の制度と注意点について解説しました。「持ち戻し」は生前贈与の効果を弱めてしまう可能性のある制度ですが、「持ち戻し」対象外の贈与を行う方法も存在します。それが「孫などの法定相続人以外へ暦年贈与を行う」という方法です。
「持ち戻し」制度の対象は、子や配偶者をはじめとした法定相続人への贈与であるため、「子どもより孫に渡す方が、将来の課税リスクを低減することができる」といえるでしょう。
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非課税枠を利用し早めの贈与を
暦年贈与は非常に有効な生前贈与の方法である一方で、税制改正により「持ち戻し」期間が7年まで延びることが決定したため、贈与を実施する前により注意を払う必要が出てきました。贈与者の年齢や孫の存在などを考慮した上で、暦年贈与を実施するか否か判断しましょう。
特に贈与者の年齢という観点において、非常に重要となるのが贈与者の意思判断能力です。自身での判断ができなくなってしまっている場合には、贈与が認められない危険性があります。総合的に判断する場合、贈与は無理のない範囲で早めに実施するのが望ましいでしょう。
出典
国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
執筆者:小林裕
FP1級技能士、宅地建物取引士、プライマリー・プライベートバンカー、事業承継・M&Aエキスパート