更新日: 2021.03.26 遺言書
遺言書を書き変える際の注意点とは?
しかし、遺言はその方式などが法律により厳格に定められています。遺言書の書き換えや訂正となればなおさら厳格に判断されます。遺言の書き換えや訂正をしたいと思ったらまずは注意すべき点について把握しておきましょう。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
◆お問い合わせはこちら
https://www.secure-cloud.jp/sf/1611279407LKVRaLQD/
2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
訂正の方法に気を付ける
遺言書は直接訂正することができます。例えば、「預金の1000万円は息子のAへ相続させる」を「預金のうち500万円を長男Aに、500万円を次男Bへ相続させる」と訂正するようなものだと思ってください。
ただ、遺言の訂正は遺言の方式によって様式が厳密に定められています。例えば、全文を自署した自筆少々遺言であれば、「訂正場所を示し、変更した旨を付記して署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ効力を生じない」とされています。(民法968条など)
遺言の種類によって有効な訂正方法が異なり、修正液や修正テープで書き換えただけでは意味がないということを覚えておいてください。
書き方に注意
遺言の内容一つとっても些細な言い回しの違いによって相続が大荒れになってしまうということも少なくありません。記載する内容はもちろんのこと曖昧な記述は厳禁です。
また、数字の間違いなどがあっても一度遺言が成立してしまうと、基本的にその間違った内容で記載された遺言が有効となってしまいます。遺言の書き換えや訂正をする際は数字など些細な記載にも注意してください。
【PR】「相続の手続き何にからやれば...」それならプロにおまかせ!年間7万件突破まずは無料診断
遺言間の優劣に注意
よく使われる遺言には全文を自筆で自書する「自筆証書遺言」と、公証人の関与する「公正証書遺言」「秘密証書遺言」があります。すると、複数で遺言を作成してしまい、遺言同士の優劣が問題になることがあります。
たとえば、8月1日に「Aには畑と山を、Bには財産を相続させる」という内容で公正証書遺言が作成されたとしましょう。その後12月1日に「Aには家を相続させる」といった自筆証書遺言が作成されていた場合どちらが有効となるでしょうか。
答えは後者である12月1日付で作成された自筆証書遺言が有効となります。なぜなら、遺言の優劣は種類が違ったとしても、単純に日付の前後のみによって決定されるからです。
また、日付の異なる遺言が複数発見され、それぞれに矛盾する部分があれば、その点については後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなされます。(民法1023条)
上記の例でいうならば、12月1日に作成された自筆証書遺言が8月1日に作成された公正証書遺言よりも優先され、この遺言間において矛盾するAさんの相続財産については自筆証書遺言が優先されます。
それにより、Aさんは畑と山ではなく、家を相続することとなるのです。
なお、遺言中の記載、その他特段の意思表示のない限り、遺言間で矛盾のない部分(今回の例でいえば、後の遺言で特に触れられていないBさんの相続分)においては、前の遺言の効力は有効なままとなります。
ただ、法律上の効果と相続人の感情問題とは別問題です。作成に公証人が関わり、原本が役場に保存されている公正証書遺言を本人がいつでもどこでも作成することのできる自筆証書遺言によって撤回してしまうと、納得のいかない相続人の間で新たな争いが発生するおそれもあるため、注意が必要です。
内容に注意
遺言に何を書くかは基本的に自由です。しかしそれが遺言書の記載内容として法的効力を生じるかは別問題です。法的効力が認められる事項(遺言事項)は、民法やその他の法律によって定められています。(民法902条など)
例えば、全財産を長男に相続させ次男には一切相続させないと書いたとしても、遺留分という仕組みによって次男は最低でも4分の1を相続する権利が存在するため、次男が遺留分を主張した場合遺言書の記載内容がそのまま実現されることはありません。(民法1042条)
遺言によって実現させようとした内容が実現できないという事態を防ぐためにも、遺言を書き直す際は遺言事項についての確認も必要です。
遺言には最大限の注意を
遺言はその作成方法から執行まで運用が法によって厳格に定められています。書き直しや訂正の方法ひとつとってもそれは同様です。遺言の効力をしっかり維持させるためにも、書き直しの際は、専門家やその他の相談機関に相談してアドバイスを受けながら行うとよいでしょう。
執筆者:柘植輝
行政書士