更新日: 2024.10.23 葬儀
私は夫に先立たれており、子どももいません。私が亡くなった後の手続きは親戚に頼むのですが、その際にかかる経費はどのくらいですか?
配偶者や子どもが健在ならば、比較的安心して任せられるかもしれませんが、肉親が近くにいない場合は、誰にどのような形で依頼するのかを、はっきりさせておく必要があります。ご自分の意志を伝えることと、最低限の金額は準備しておきたいものです。
葬儀にかかる費用は
まず、葬儀についての費用を知っておく必要があります。コロナ禍で大勢の人が集まりにくい、参列者の高齢化が進んでいる、といった事情で葬儀の簡素化が一段と進みました。葬儀のために、多額の費用を準備することは減りつつあります。
葬儀の形としては、(1)一般葬、(2)家族葬、(3)一日葬、(4)直葬などが考えられます(下記金額はあくまで目安です)。
(1) 一般葬は、通夜と告別式を2日に分けて行う従来型の葬儀で、広く告知をして多くの方に参列してもらう葬儀です。僧侶を依頼し、葬儀会場も手配します。
費用としては、150~250万円はかかります。由緒ある寺院で実施する、参列者が100人以上になると、僧侶へのお布施や飲食代や返礼品の費用などが増え、300万円以上になることもあります。
(2) 家族葬は、ごく身近な家族だけが集まって実施するもので、一般葬を小型化した葬儀です。参列者も限定されるため、費用は、80~120万円程度で済みます。
(3) 一日葬は、通夜をなくして告別式と火葬だけにする方式で、家族中心か、ごく親しい関係者が出席する形式です。費用は、50~70万円です。
(4) 直葬は火葬式ともいわれ、死後24時間以降に火葬炉の前で僧侶の読経など宗教的儀式をした後に、火葬を行う方式です。費用も抑えられ、20~40万円で済みます。費用を安く抑えられるため、増える傾向にあります。
ただし、東京都は火葬場の多くが民営のため、近隣県の公営火葬場よりも費用がかかる傾向にあるので注意が必要です。
これらのうち、どの形式の葬儀を選んでほしいかを、親戚の方に意思表示をしておきましょう。最近では、広い会場を準備し、多くの方の参列をお願いする一般葬は減少し、親しい家族・親戚だけが集まる小規模な家族葬が主流になっていますが、費用の安い一日葬や直葬も増えています。
自分の葬儀を実施してほしいのか意思伝達がないと、依頼されたほうが対応の苦慮することになります。
埋葬(お墓)にかかる経費
次に問題となるのは、お墓に関する経費です。先祖から代々続く墓石のある一般墓に埋葬してもらう場合は、納骨費用と戒名代だけで済むかもしれません。
ただここで問題となるのは、ご本人が亡くなった後、お墓を管理する方がいなくなり、無縁墓になってしまう可能性があることです。先祖代々の墓がある場合は、「墓じまい」という面倒な作業が必要になるかもしれません。当然、経費もかかります。
一般墓以外の墓の種類としては、(1)樹木葬、(2)納骨堂、(3)永代供養墓、(4)散骨、が考えられます。いずれもお墓を継承する必要のない埋葬方式のため、子どもがいなくても問題はなく、亡くなった配偶者の埋葬形態に準ずる方式が最善です。
樹木葬などは後に埋葬することを契約しておけば、かなり費用は安くなるかもしれません。親戚の方に意思表示をしておきましょう(下記金額はあくまで目安です)。
(1) 樹木葬は、寺院や霊園の管理する場所に墓石の代わりとして、樹木・草花を植えその下に埋葬する形式です。費用は、20~80万円ほどです。
(2) 納骨堂は、専門の建物の中にあるロッカー方式で納骨され、対面できる形態となっており、多くは都会の好立地な場所にあります。立地や設備内容によって、費用にかなり差があり、30~120万円ほどです。
(3) 永代供養墓は、寺院や霊園が供養し、個別埋葬期間(一般的には33回忌)が過ぎると親族以外の方の遺骨と合葬される方式のため、安価な埋葬方式といえます。費用としては、8~25万円で済みます。
(4) 散骨は、遺骨を粉砕して海洋や森林に散布する方法で、散布地域での条件確認と散布のための船のチャーター料などがかかります。費用としては、20~60万円はかかります。
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それ以外にかかる経費
葬儀とお墓以外に、どんな経費が必要でしょうか。考えられる経費としては、生活用品の整理、デジタル遺品の整理、持ち家ならばその解体費用、といったことが考えられます。
生活用品の整理は、業者に依頼します。生前整理を進めておけば、経費を少なくできます。目安として20~30万円程度です。パソコンやスマホなど、デジタルデータの処理も結構大変です。
写真や金融情報を可能なかぎり消去することを行い、そのうえで残ったデータ処理に関しては、20万円程度の金額で業者に依頼するのが賢明です。最近では、終活ビジネスを展開する業者も増えていますが、亡くなった後の要望まで希望どおりに進めてもらえるか、業者の信頼度を消費者センターなどに確認することも大切です。
もし介護施設への入居を検討されている場合は、自宅の売却を同時に行ってもよいでしょう。マンションであれ一戸建てであれ、処分し現金化すれば、介護施設での経済的不安を解消できます。
自宅に最後まで住み続けた場合は、マンションであれば、遺品整理が済めば売却が可能になります。一戸建て住宅の場合は、築年数にもよりますが、解体・さら地化して売却することも多いため、多少手間がかかりそうです。解体費用としては、200万円前後になるでしょう。
想定される死後の経費を計算し、手続きなどを世話になる方ときちんと話をして、必要な資金を準備しておきましょう。
執筆者:黒木達也
経済ジャーナリスト
監修:中嶋正廣
行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者。