更新日: 2019.07.03 その他相続
不動産の相続登記をすぐにした方がよい理由
そのようなケースが少なくありません。
いつまでに手続きしなければいけないという期限もなく、ずっと放っておいたとしても罰則などがない相続登記。それでも、できるだけ早く手続きしたほうがよい理由をお話しします。
執筆者:井上美鈴(いのうえみすず)
ファイナンシャル・プランナー,ライフシンフォニア 代表
~シングルマザー・子育て世代にお金の話をわかりやすく伝えるFP~
家計管理・公的制度の紹介・教育費や老後資金の貯め方・奨学金・投資などすぐに役立つお金の話」を分かりやすく伝えるFP。
漠然としたお金の不安を感じる時間をなくし、「子育てという限られた貴重な時間」や「自分自身が望む豊かな時間」を大事にしてもらいたいという思いで活動している。
離婚後3年で教育資金を貯めた、自らのシングルマザー体験が強み。
金融機関(証券会社・銀行)・公立学校事務員・派遣会社コーディネーター等のさまざまな仕事を経験。現在、大学生の子どもを育てるシングルマザー。
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そもそも、登記とはどのようなものでしょうか?
登記を一言で説明すると、「不動産の権利関係を明確にするもの」ということになります。
もう少し詳しく言えば、不動産に関する権利義務について、法務局という国の機関に届け出て、登記簿に記載してもらうことを言います。
登記簿に記載するということは、不動産の権利関係を国の機関に証明してもらうということです。不動産の売買の際の安全性を守り、また自分の所有であると明言して、自分自身の権利を守ることになります。
では、相続登記とは?
相続登記とは、相続に伴って、不動産の所有者の名義を親から子どもなどの相続人へ変更する手続きのことです。
この手続きには、遺産分割協議書に相続人全員の実印を捺印し、そのほか必要な書類をそろえて法務局に提出する必要があります。
この手続きには、義務もなく期限もありません。名義を換えなかったからといってすぐには不都合を感じないことでしょう。ただ、変更しないことで将来的に大きなデメリットが発生することがあります。
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相続登記をせずにいると起こるデメリットとは
相続登記をしていないと、不動産が自分のものであると主張することができません。
そうなると、不動産の売却や抵当権の設定が行えない、または名義変更に要する手間や費用が予想外にかかってくるなどのデメリットが発生します。
また、家・土地の名義変更を長い期間しないでいると、相続人の下にさらに次の相続が生じてしまいます。結果として、遺産分割に参加しなければならない相続人が当初の人数の何倍にもなる場合があります。100人になっていたという事例も実際にあります。
このようになると、所在の分からない親族や相続人の高齢化などで、遺産分割協議がスムーズにいかなくなるケースが出てきます。中には、意見の相違から親族が決裂し、結局相続登記ができず、さらに放置されてしまうケースもみられます。
実際に起きた事例
筆者の受けた家計相談の中にも、相続登記ができていないという問題を含んでいるケースが多くみられました。
実際の事例を紹介していきます。
事例1
父と同居していた土地と家屋を引き継いだ長男。固定資産税は自分が支払い、登記変更はせずに10年以上そのままに。
変更しようとした時には、1人の親族との関係性が微妙となり、遺産分割協議書に印鑑がもらえない状況となってしまった。相続人の1人でも印鑑がもらえないと手続きはできないため、弁護士に依頼し、1年近くの期間を経てようやく登記完了。
事例2
相続した土地が、18年前に亡くなった祖母の名義のままだった。気になっていたが、諸々の事情があって手続きをしていなかった。
売却する際に、相続登記をしていなかったことですぐに売却することができなかった。相続発生時に手続きをしていれば相続人は3人だったが、18年間で相続人は倍の6人になっていた。その中には、海外居住者や高齢で入院し病院から出られない相続人もいた。結果、売却までに2年の年月がかかり、費用や手間を要してしまった。
これは、ほんの一例に過ぎません。
上記の事例では、相続登記にかかる費用も何十万円となり、家計にとっては大きな支出となりました。こうした事態を避けるためには、何をすればよいのでしょうか。
まずは、すぐに手続きすること
相続が発生してすぐに手続きを開始することです。
方法としては、専門家である司法書士に依頼するのが一般的ですが、すでに相続人同士の話し合いが済んでいる場合は、自分で手続きをすることで費用を抑えることも可能です。
いずれにしても、先延ばしにして複雑になれば、専門家の力を頼らざるを得なくなり、後々の費用は積みあがっていってしまいます。
また、現時点で長期間名義変更をしていない土地・家屋に心当たりがある場合も、なるべく早く相続登記の手続きをすることが将来のトラブルを避けるために有効と思われます。
結局のところ、状況が込み入っていないうちに手続きに取り掛かることが最善の策でしょう。
執筆者:井上美鈴(いのうえみすず)
ファイナンシャル・プランナー,ライフシンフォニア 代表