【相談】負債が大きいから放棄したいけれど、家だけは残したい

配信日: 2019.01.25 更新日: 2019.07.03

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【相談】負債が大きいから放棄したいけれど、家だけは残したい
相続が発生した際に、負債があると悩むところです。“負債が大きいから放棄したいけれど、家だけは残したい”というような場合、「限定承認」という方法があります。
 
林智慮

執筆者:林智慮(はやし ちりよ)

CFP(R)認定者

確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。

限定承認の流れ

限定承認は、相続によって得た財産を限度に、負の相続財産を受け継ぐものです。限度を超える負債は、引き継がなくて良いのです。
 
よって、後から負債が出てきても心配はありませんし、どうしても手元に戻したい資産は先買権により買い取ることができます(担保が付いてない場合)。何とも都合の良い制度ですが、手間が掛かりますし、プラスの財産が多い場合は費用もかさみます。
 
「限定承認」は、自分に相続が発生したことを知った日から3ヶ月以内に、被相続人の最後の住所の家庭裁判所に限定承認の申述をしなければなりません。そのまま何もせず3ヶ月過ぎてしまうと、「単純承認」をしたとみなされ、資産も負債も全て受け継ぐことになります。
 
もし、3ヶ月以内では相続を承認するか放棄するかを判断するための資料を手に入れられないときは、3ヶ月以内に相続の承認または放棄期間の延長の申し立てをして、期間を延ばすことができます。
 
限定承認の申し立ては、相続人全員が共同して行わなければなりません。行方が分からない相続人がいる場合、不在者財産管理人選任の申し立てをします。放棄をした者はもとから相続人で無かったとされるので除外します。
 
申述書には、申し立ての趣旨、理由を書き入れ、遺産目録を添付します。相続人が複数の場合は、相続財産管理人が選任されます。
 
申述が受理されたら5日以内(相続財産管理人の場合は10日以内)に、限定承認したこと、債権者は請求をしてくださいという旨の公告の手続きをします。その後、法律に従い、弁済や換価などの精算手続きをしていきます。
 
資産を競売で売却して負債の返済に充てます。ただし、限定承認には先買権があります。家庭裁判所が選任した鑑定人に評価をしてもらい、その評価以上の金額を払うことで買い戻すことができます。抵当権が付いている場合は、競売を止めることはできません。
 
土地建物などの資産は、一旦相続人に譲渡してから売却することになるため、「みなし譲渡所得税」が発生する場合が有ります。単純承認ならば使える小規模宅地の特例や、自宅を売却したときの3,000万円の控除などは使えず、「時価」で計算します。負債が多い場合、譲渡所得税が掛からない可能性が高いです。
 

限定承認の申述に必要な書類は?

限定承認の申し立ては、
1)申述書
2)添付書類
が必要です。
 
添付書類は、
1.被相続人の出生から死亡時までの全ての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
2.被相続人の住民票除票又は戸籍附票
3.申述人全員の戸籍謄本
4.被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している場合、その出生から死亡時までの全ての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本のほか、
申述人が、相続人の配偶者と父母・祖父母の場合、以下の書類を加えます。
・被相続人の直系尊属に死亡している方がいる場合、その直系尊属の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
 
また、申述人が、被相続人の配偶者のみ、又は被相続人の(配偶者と)兄弟姉妹の場合(甥姪の代襲含む)、上記1から4の他に、以下の書類を加えます。
・被相続人の父母の出生から死亡時までの全ての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
・被相続人の直系尊属の死亡の記載がある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
・被相続人の兄弟姉妹で死亡している方がいる場合、その兄弟の出生時から死亡時までの戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
・代襲者としての甥・姪で死亡している方がいる場合、その甥・姪の死亡の記載がある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
 
相続放棄の場合と違い、被相続人の出生時から死亡時までの戸籍を取り寄せなければなりません。期間内に戸籍が入手できなければ、申述後に追加提出することもできます。
 

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手間がかかるけれど、メリットもある

限定承認は、相続放棄のように相続人の一人が申し立てして終わりではありません。相続人全員で行わなければなりません。
 
また、官報でお知らせした債権者に申し出てもらい、精算をしなくてはなりませんが、限定承認を行った場合は、清算後に債権者がでても、支払った残りがなければ払わなくて良いのです。
 
競売により換金しますが、担保の付いてない資産なら先買権が使えます。相続財産は清算されてしまいますが、生命保険を活用することで、買い戻し用の資金を相続人に渡すことができます。死亡保険金は受取人固有の財産になるため、相続放棄しても、限定承認しても受け取れますし、限定承認の場合は非課税の適用があります。
 
自分の資産を投じて弁済することもありません。限定承認することで他に迷惑を掛けなくてすむ場合もあります。相続するものや放棄することでの周りへの影響を考え、関係者にとってより良い相続を考えたいですね。
 
詳しくは、裁判所のHP、国税庁のHPをご覧ください。
 
執筆者:林智慮(はやし ちりよ)
CFP(R)認定者
 

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