更新日: 2024.11.11 その他相続
会社員の夫が亡くなりました。多額の借金があるので相続放棄をしようと思います。相続放棄すると、死亡保険金や死亡退職金、遺族年金ももらえないのでしょうか
一方、夫の死亡により、妻は死亡保険金や死亡退職金、遺族年金などをもらうことができますが、妻の相続放棄によってこれらももらうことができなくなってしまうのでしょうか。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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相続と相続放棄
人が亡くなると、相続が開始します(民法882条)。相続人は、相続開始時から、被相続人(亡くなった人)の財産に属した一切の権利義務を承継します(同896条)。遺産のなかには、預貯金や不動産などのプラスの財産だけではなく、借金のようなマイナスの財産も含まれます。
資産よりも借金のほうが多ければ、相続により相続人は莫大な借金を背負う可能性があります。そこで相続人には、相続をするか否か自由に選択をすることが認められています。
被相続人に属する一切の権利義務を承継しない(相続放棄する)場合、相続開始の時点から相続人でなかったものとみなされます(同939条)。
相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所に申述しなければなりません(同915条)。この期間に、相続人が相続放棄をしなかった場合や、相続人が相続財産を処分した場合など、単純承認したものとみなされますので注意しましょう。
相続放棄と死亡保険金、死亡退職金、遺族年金、未支給年金
相続放棄をしても受け取ることができる主な財産について見てみましょう。
【死亡保険金】
契約者(保険料負担者)・被保険者が夫、死亡保険金の受取人が妻の場合、妻が受け取った死亡保険金は、保険会社から直接、支払われるものであり、死亡した夫の財産を承継するものではなく、妻の固有の財産になります。したがって、妻は仮に相続を放棄したとしても、死亡保険金を受け取ることが可能です。
ただし死亡保険金は、税制上では「みなし相続財産」となり相続税の課税対象です。みなし相続財産とは、相続や遺言書による遺贈によって受け取る民法上の財産ではないけれども、被相続人の死亡により取得する財産なので、相続税法上は相続財産と同様に課税財産とするものをいいます。
相続を放棄した場合は相続人でなかったとみなされるため、生命保険金の非課税金額(500万円×法定相続人数)の適用を受けることはできません。
【死亡退職金】
死亡退職金は死亡保険金と同じく、みなし相続財産であり本来の相続財産ではないため、相続放棄していても受け取ることができます。また、死亡退職金を受け取る場合、非課税の適用はありません。
遺族が会社から死亡退職金を受け取る場合で、死亡後3年以内に受け取りが確定したものは、相続もしくは遺贈によって得たものとみなされ、相続税の課税対象となります。
なお、死亡日から3年経過後に受け取りが確定した場合、受取人の一時所得となり所得税の課税対象となります。
【遺族年金・未支給年金】
遺族年金(遺族基礎年金・遺族厚生年金)、未支給年金は、その遺族の固有の権利に基づき支払われるものですので、相続財産に含まれず、相続放棄をしても受け取ることができます。
なお、遺族年金は、所得税も相続税も課税されません。未支給年金は、その遺族の一時所得の収入金額に該当します。
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まとめ
相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所に申述しなければなりませんので留意しましょう。
相続放棄をしても受け取ることができる主な財産に、死亡保険金、死亡退職金、遺族年金、未支給年金があります。死亡保険金は3年、その他は5年で時効になりますので忘れずに請求しましょう。
出典
デジタル庁 e-GOV法令検索 民法
国税庁 No.1605 遺族の方に支給される公的年金等
国税庁 No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金
国税庁 No.4117 相続税の課税対象になる死亡退職金
国税庁 No.4105 相続税がかかる財産
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。