相続対策で子どもに贈与しようと考えています。贈与にはさまざまな特例があると友人から聞いたのですが、有利な特例制度があれば教えてください

配信日: 2024.12.11

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相続対策で子どもに贈与しようと考えています。贈与にはさまざまな特例があると友人から聞いたのですが、有利な特例制度があれば教えてください
贈与には、さまざまな特例制度があります。うまく利用すれば、相続対策として効果的です。本記事で、主な特例制度のポイントを解説します。
新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

贈与と贈与税

贈与は、単独行為ではなく契約です。一方が金銭などを無償で相手方に与える意思を示し、相手方が受諾することによって成立します(民法549条)。
 
贈与税の課税方法には、「暦年贈与課税」と「相続時精算課税」の2つがあります。
 
暦年贈与課税は、1年間(1月1日~12月31日)に贈与を受けた財産の価額を合計した額(課税価格)から基礎控除額110万円を差し引いた残額(基礎控除後の課税価格)に税率を乗じて、税額を計算します。税率には、一般税率と特例税率があります。なお、相続開始前3~7年以内の贈与分は相続財産に加算する必要があります。
 
相続時精算課税の制度とは、原則60歳以上の父母もしくは祖父母などから、18歳以上の子もしくは孫などに対し、財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度です。
 
相続時精算課税を選んだ受贈者は、特定贈与者ごとに、1年間に贈与によって取得した財産の価額を合計した金額から、基礎控除額(110万円)を控除し、特別控除(最高2500万円)の適用がある場合は、その金額を控除した残額に20%の税率を乗じて、贈与税額を算出します。
 
相続の際は、相続時精算課税制度で贈与を受けた財産を相続財産に加算して、相続税の計算をします。
 
なお、この制度を選択するとその選択をした年分以降すべてこの制度が適用され、「暦年課税」へ変更できません。また、相続時精算課税制度で贈与を受けた宅地については小規模宅地等の特例を適用できません。
 

住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税

令和6年1月1日から令和8年12月31日までの間に、18歳以上の子や孫などが父母や祖父母など直系尊属からの贈与により、マイホームの取得等に充てるための金銭の贈与を受けて翌年3月31日までに新築等を行い、居住した場合には贈与を受けた金銭について一定金額(省エネ等住宅は1000万円、それ以外は500万円)まで非課税になる制度です。
 
この特例は、暦年課税や相続時精算課税制度との併用が可能です。暦年課税では、相続開始前3~7年以内の贈与分は相続財産に加算する必要がありますが、この特例を利用した部分は加算が不要です。
 

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贈与税の配偶者控除(おしどり贈与)

婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、マイホームやそれを購入するための金銭の贈与が行われた場合、基礎控除110万円のほかに最高2000万円(相続時評価額)まで控除(配偶者控除)できるという特例です。つまり、最大で2110万円まで贈与税がかかりません。ただし、不動産を取得する際の不動産取得税とは負担しなければなりません。
 
また、暦年課税では、相続開始前3~7年以内の贈与分は相続財産に加算する必要がありますが、おしどり贈与は加算が不要です。
 

祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度

令和8年3月31日までの間に、30歳未満の子や孫に教育資金を一括で贈与する場合、最大1500万円(学校等以外の塾や習い事への支払いは500万円)まで贈与税が非課税となる制度です。この制度を利用するには信託銀行などに専用の口座を作る必要があります。
 
なお、子や孫が30歳になったときに使い残しがあった場合、その残額に対し贈与税が課税されます。子や孫に思わぬ税負担をかけることになりますので、贈与する金額は慎重に決めましょう。また、契約期間中に贈与者が死亡した場合には、残額が相続財産に加算される場合があります。
 

直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税制度

令和7年3月31日までの間に18歳以上50歳未満の子や孫に、結婚・子育て資金に充てるための資金を一括贈与する場合、最大1000万円(結婚関係は300万円)まで贈与税が非課税になる制度です。この制度を利用するには、信託銀行などに専用の口座を作る必要があります。
 
なお、子や孫が50歳になったときに使い残しがあれば、その残額に対し贈与税が課税されます。子や孫に思わぬ税負担をかけることになりますので、贈与する金額は慎重に決めましょう。また、契約期間中に贈与者が死亡した場合には、残額が相続財産に加算される場合があります。
 

まとめ

ここまで、贈与税の主な特例の概要についてみてきました。贈与の実行にあたっては、適用要件を満たしているか税務署や税理士に確認しましょう。
 
本記事では紹介していませんが、このほかに特定障がい者の方に対する贈与の非課税制度もあります。特定障がい者のお子さんなどいる方は、利用を検討してみてはいかがでしょうか。
 

出典

デジタル庁 e-GOV 法令検索 民法 (贈与) 第五百四十九条
国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
国税庁 No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)
国税庁 No.4103 相続時精算課税の選択
国税庁 「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税」等のあらまし
国税庁 No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除
国税庁 祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし
国税庁 No.4511 直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税
 
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー

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