夫の死後「1000万円」の借金が発覚! それでも「相続放棄」できない理由とは? 知っておきたい注意点を解説
配信日: 2025.01.12
本記事では、相続の方法や相続放棄の流れ、相続放棄ができないケースやできない場合の対処法など、相続放棄の制度について解説します。
執筆者:梅井沙也香(うめい さやか)
FP2級
相続放棄とは
相続放棄とは、相続の発生時に亡くなった人の資産や負債などの遺産を一切引き継がずに放棄することです。
相続人が選べる相続方法には次の3つがあります。
●相続放棄
●限定承認
●単純承認
限定承認とは、相続によって得たプラスの財産を限度にマイナスの財産を受け継ぐ方法で、単純承認は無条件に全ての遺産を受け継ぐ方法です。
亡くなった夫の借金が1000万円あった場合、遺産を合計し差し引きした額がマイナスになるのであれば、相続放棄または限定承認が効果的でしょう。
ただし、相続放棄をする場合は被相続人である夫の財産の全てを相続できなくなるため注意してください。
相続放棄をする際は、「相続の開始を知ってから3ヶ月以内」に「被相続人の最後の住所地の家庭裁判所」へ申述書と必要書類を提出します。
相続の際にマイナスの財産を受け継ぐことになったら、相続放棄も手段の1つとして検討してみましょう。
相続放棄ができないケース
相続放棄はマイナスの財産が多い場合に有効な手段ですが、ケースによっては相続放棄が認められないことがあります。
相続放棄が認められない可能性があるケースは次の3つです。
●遺産分割協議書に印鑑を押した場合
●遺産に手をつけている場合
●期限を過ぎている場合
遺産分割協議書に署名や捺印をすると、遺産分割協議に参加し自身が相続人であることを認めたことになるため、相続放棄は原則できません。
同じく、遺産を使ってしまったり債務の返済を始めてしまったりと、遺産に手をつけている場合も法定単純承認が成立するため、全ての遺産を無条件に受け継ぐことになります。
また、相続手続きには3ヶ月間の「熟慮期間」があり、財産を整理したり相続の方法を考えたりと、相続の方法を選択するまでの期間が設けられています。
この熟慮期間を過ぎてしまうと相続放棄ができなくなってしまうため、「相続開始から3ヶ月以内」に相続の方法を決められない場合は、家庭裁判所に期間の伸長の申立てをすることで期間を伸ばすことが可能です。
万一相続放棄が認められなかった場合は、不服を申立てる「即時抗告」や返済計画を立てる「債務整理」などを検討してみましょう。
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相続放棄をすると自宅も手放すことに
ただし相続放棄をすると、自宅を含む被相続人の財産を全て手放すことになります。相続放棄をした場合、放棄した本人は全ての相続財産に手をつけられなくなるため、たとえ自宅でも住み続けることや所有することはできません。
負の遺産が大きく、遺産の中に自宅など今後も利用の継続が必要な財産も含まれている場合は、相続放棄はせずに限定承認で先買権の行使を検討してみましょう。
先買権を行使して他の人よりも先に財産を取得すれば、家庭裁判所が選任した鑑定人による評価額を支払うことで、不動産などの財産を確実に取得できます。
ただし、財産の取得には権利や税金など専門的な知識や手続きが発生するため、弁護士などの専門家に相談しながら進めるのがおすすめです。
相続する財産に多額の負債などがある場合でも、自宅など相続しなければならない財産がある場合は、相続放棄だけでなくそのほかの方法も視野に入れて考えてみましょう。
まとめ
相続放棄とは、相続の発生時に亡くなった人の資産や負債などの遺産を一切引き継がずに放棄する相続方法です。亡くなった夫の借金1000万円により遺産がマイナスになるのであれば、相続放棄も手段の1つとして検討しましょう。
ただし、相続放棄を選択できる期限をすぎたり遺産に手をつけてしまったりすると、相続放棄が認められないこともあるため注意してください。
また、自宅など今後も利用の継続が必要な財産も遺産に含まれている場合は、相続放棄をすることで財産の全てを手放すことになってしまうため、限定承認をして先買権を行使することも視野に入れてみましょう。
相続人となる残された家族にとって遺産問題は切っても切り離せないため、家族が亡くなってからではなく、なるべく早い段階で話し合っておくことが大切です。
出典
裁判所 相続の相続放棄の申述
e-Gov法令検索 民法
執筆者:梅井沙也香
FP2級