「一括贈与」vs「分割贈与」祖父から孫へ教育資金「500万円」を渡すならどちらが良い?
配信日: 2025.03.08

渡し方の違いやメリットを理解しておくと、孫へ税金の負担を軽減しつつ経済的支援が可能です。今回は、一括贈与と分割贈与の違いや、500万円を一度に渡したときの贈与税額などについてご紹介します。

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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500万円をそのまま一度に贈与すると数十万円の贈与税がかかる
今回は、500万円をそのまま全額贈与したとして税額を計算しましょう。条件は以下の通りです。
●受け取った孫は成人している
●祖父から孫へ1年で500万円を送金した
●同じ年にほかの贈与はない
まず、110万円(基礎控除)を引いた390万円に税金が課されます。国税庁によると、今回の条件だと税率は15%で、控除額は10万円です。計算をすると、贈与税額は48万5000円になります。
一括贈与と分割贈与の違い
贈与税を少しでもおさえる方法として、「制度を利用した一括贈与」「基礎控除額内での分割贈与」の2つがあります。
「制度を利用した一括贈与」とは、非課税制度を活用して特定の目的のための費用をまとめて渡せる方法です。それぞれ条件が定められており、目的外での使用もできません。
対して、「基礎控除額内での分割贈与」とは通常の贈与です。暦年課税とも言われ、毎年決められた金額(110万円)以内であれば、非課税のまま自由にお金を渡せます。
今回は、贈与の仕方によるメリットやデメリットを比較しましょう。
制度を利用した一括贈与とは
教育資金をまとめて渡したいときは、一括贈与により一定金額まで非課税になる制度があります。国税庁によれば、令和8年3月31日までであれば、30歳未満の方の、直系尊属からの財産の受け取りが非課税のまま最大1500万円まで可能です。
一括贈与の贈与税非課税制度の利用により、多額のお金をまとめて渡せるメリットがあります。例えば、孫が教育資金としていくら必要か具体的に分からないとしましょう。
分割贈与では、1年で500万円を送金すると贈与税の課税対象ですが、一括贈与の非課税制度利用であればまとめて500万円を贈っても課税されません。孫は教育資金として学費や教材の購入費など、自分で自由に内訳を決められます。
ただし、教育資金一括贈与の贈与税非課税制度では教育資金目的以外での利用は認められません。もし教育資金以外で使用すると、その分は通常の贈与として扱われ、課税対象です。また、教育資金として使用した証明として領収書などを保管し、定期的に金融機関へ提出する必要があります。
基礎控除額内での分割贈与とは
分割贈与は通常の贈与なので、1年間で110万円までなら非課税で渡せます。もし500万円を渡したいなら、5年間に分けて渡すと非課税となり、孫に税金の負担がかからないでしょう。
分割贈与は、渡したお金の使用用途が決められていない点がメリットです。前述の一括贈与の贈与税非課税制度とは異なり、分割贈与は目的に決まりがないので、渡したお金を趣味に使用しても教育費に使用しても問題ありません。
また、分割贈与なら非課税額が毎年110万円です。非課税範囲におさえて5~6年に分ければ一括贈与よりも多くの金額を非課税で送金できます。
一方、分割贈与は110万円以上のお金をまとめて渡すと、超過分は贈与税がかかる点がデメリットです。さらに、毎年同じ金額を数年に分けて送金した際に、「定期贈与」とみなされ課税対象になる可能性もあるため注意しましょう。
一括贈与にするか分割贈与にするかは、まとめてお金を送りたいのか、またお金の使用目的は決まっているのかで判断するとよいでしょう。
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教育資金目的でまとめて渡したいなら制度を利用した一括贈与の方がよい
もし教育資金目的と決まっており、500万円を孫にまとめて渡したいなら教育資金の一括贈与非課税制度を利用した方がよいでしょう。制度を利用することで、最大1500万円までまとめて渡しても課税されません。一方、分割贈与でまとめて渡すと、税額が48万5000円かかる可能性があります。
しかし、お金の使用目的が決まっていなかったり分割して送りたかったりするときは分割贈与が向いています。孫の状況なども考慮して、税金負担が少なく利用しやすい方を選ぶとよいでしょう。
出典
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
国税庁 祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー