実家の「お墓」を継ぐことになりました。お墓を引き継いだらどのような「お金」がかかるのでしょうか?
配信日: 2025.04.05

一方、お墓等の財産には相続税はかかりません。また、固定資産税もかかりません。では、お墓を引き継いだ際にはどのようなお金がかかるのでしょうか。

執筆者:北山茂治(きたやま しげはる)
高度年金・将来設計コンサルタント
1級ファイナンシャルプランニング技能士、特定社会保険労務士、健康マスターエキスパート
大学卒業後、大手生命保険会社に入社し、全国各地を転々としてきました。2000年に1級ファイナンシャルプランニング技能士資格取得後は、FP知識を活用した営業手法を教育指導してきました。そして勤続40年を区切りに、「北山FP社会保険労務士事務所」を開業しました。
人生100年時代に、「気力・体力・財力3拍子揃った、元気シニアをたくさん輩出する」
そのお手伝いをすることが私のライフワークです。
ライフプランセミナーをはじめ年金・医療・介護そして相続に関するセミナー講師をしてきました。
そして元気シニア輩出のためにはその基盤となる企業が元気であることが何より大切だと考え、従業員がはつらつと働ける会社を作っていくために、労働関係の相談、就業規則や賃金退職金制度の構築、助成金の申請など、企業がますます繁栄するお手伝いをさせていただいています。
費用について
墓地の管理費については、お墓を継承する人が支払う責任を負います(※お墓を継承する人が祭祀継承者(仏教では檀家を兼ねる)になることを前提としています)。法要費用などは、必要に応じて支払います。この費用は親族が相談して配分を決めてください。
檀家としての費用(寺院墓地の場合)としてお布施や寄付などの費用が発生します。これはお寺によって費用が大きく違いますが、檀家へ手紙で依頼がきます。
墓地の名義変更の手数料は霊園・墓所の管理者に支払う手数料で、5000円〜1万円が目安です。お墓の引っ越し(改葬)費用はかなり費用がかさみます。永代使用料、墓石代、基礎工事費用、事務手数料、埋葬費用、お布施代、入檀料などがかかります。
<費用負担について>
祭祀承継者になると、基本的には祭祀承継者1人で負担することになります。祭祀承継者になることを理由に、他の相続人に対して費用を請求できるわけではありません。また、祭祀承継者であることを理由に、相続財産の取り分を多くもらえるといった決まりもありません。
<祭祀継承者とは>
祭祀承継者とは、祖先の祭祀を主宰し、祭祀財産を管理する人のことを指します。祭祀財産には、墓地や墓石、位牌、仏壇、系譜などが含まれます。
祭祀承継者の役割としては、祖先の祭祀を主宰する、祭祀財産(墓地、祭具、系譜など)を管理する、供養の責任を引き継ぐ、法要などの祭祀の主宰を行う、お墓の管理(清掃、墓参りの予約や案内など)を行う、お墓の老朽化や倒壊の防止のための対策を行うなどがあります。
祭祀承継者の決め方は下記の順番で決めます(民法第897条)。
1.被相続人の遺言等によって指定された者
2.被相続人の地域の慣習によって決められた者
3.家庭裁判所の調停又は審判によって決められた者
祭祀承継者は相続とは関係なく決まるため、遺産分割で財産を多くもらう権利が生じるわけではありません。
相続税や固定資産税の課税対象となるか
国税庁ホームページの「相続税がかからない財産」の最初に掲載されています。
1. 墓地や墓石、仏壇、仏具、神を祭る道具など日常礼拝をしている物
ただし、骨とう的価値があるなど投資の対象となるものや商品として所有しているものは相続税の対象です。
固定資産税は、固定資産(土地、家屋、償却資産など)にかかる税金です。お墓はこの固定資産には含まれません。 お墓を建てる際には、墓地の永代使用権を購入する形となります。 そのため「墓地」として登記する場合には、固定資産税はかからないのです。
【PR】「相続の手続き何にからやれば...」それならプロにおまかせ!年間7万件突破まずは無料診断
墓じまい
墓じまいとは、墓石を撤去して墓所を更地にし、使用権を墓地の管理者に返還することです。改葬とも呼ばれます。最近は地方の過疎化や少子化などの影響もあり増加傾向にあります。
墓じまいの流れは下記のとおりです。
・親族間で相談し、同意を得る
・改葬に必要な手続きや書類を確認する
・墓地管理者へ改葬の意志を伝える
・新しい納骨先を決める
・改葬許可証を取得する
・墓石の閉眼供養(魂抜き)をして、遺骨の取り出しを行う
・墓石の撤去・解体工事、使用権の返還を行う
・遺骨の受け入れ先に納骨する
墓じまいの費用は、一般的に30万円から300万円程度です。墓石の撤去費用は、1平方メートルあたり10万円がおおよその相場です。また、改葬先となる新たなお墓、そして墓じまいの工事にかかる費用が発生します。
日本では、核家族化と都市集中が進み、お墓が地方に取り残されるケースが増えています。親の相続が終わって、残ったお墓についても、相続人が話し合ってどうするか決めましょう。後の世代に問題を先送りしないことが重要です。
出典
国税庁 No.4108 相続税がかからない財産
執筆者:北山茂治
高度年金・将来設計コンサルタント