30代会社員、マイホーム購入時に購入資金として「500万円」の贈与を親に相談しようと考えています。どのように贈与を受ければいいですか?
配信日: 2025.04.07


執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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暦年贈与とは
親から子どもがマイホームの購入資金を無償でもらった場合、子どもに贈与税が課される場合があります。贈与税の課税方式には、(1) 暦年課税、(2) 相続時精算課税の2種があり、それぞれに非課税枠が設けられています。
暦年贈与の贈与税は、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額から基礎控除額110万円を差し引いた残りの額に対してかかります。したがって、1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額が110万円以下なら、贈与を受けた人には贈与税はかかりませんし、贈与税の申告も不要です。
110万円を超えた場合は、超過分に贈与税がかかります。たとえば、親から500万円の贈与を受けた場合の子どもに課される贈与税は48.5万円です。
基礎控除後の課税価格 : 500万円 - 110万円 = 390万円
贈与税額(特例贈与財産用の速算表より) : 390万円 × 15% - 10万円 = 48.5万円
マイホーム取得資金の贈与税の特例
父母や祖父母など直系尊属からマイホームの取得資金として贈与を受ける場合、「受贈者(贈与を受ける人)に関する要件」と「住宅に関する要件」を満たすときは、110万円の基礎控除額に上乗せして、省エネ等住宅の場合には1000万円まで、それ以外の住宅の場合には500万円までのマイホームの取得資金の贈与が非課税となります。
この特例は、暦年贈与や相続時精算課税との併用が可能です。なお、特例は、令和6年1月1日から令和8年12月31日までの贈与が対象です。配偶者の父母や祖父母から贈与を受けても、自分の直系尊属ではないため、特例を利用できませんので留意しましょう。
夫婦がそれぞれ自分の父母から贈与を受ける場合は、「共有名義」でマイホームを購入すれば、夫婦ともにマイホームの贈与税の特例が利用できます。夫婦でペアローンを組めば、住宅ローン控除も夫婦がそれぞれ受けられます。
マイホーム購入金額が3000万円で、この特例により親からそれぞれ500万円の贈与を受け全額を購入金額に充当した場合、住宅ローン控除の対象になるのは2000万円ですので留意しましょう。
暦年贈与では、相続開始3年~7年前に行われた贈与は相続財産に加算しなければなりませんが、この特例を利用した分は加算が不要です。
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相続時精算課税とは
相続時精算課税は原則として60歳以上の父母もしくは祖父母などから、18歳以上の子または孫などに対し財産を贈与した場合、1年間に贈与を受けた相続時精算課税適用財産の価額の合計額から、相続時精算課税に係る基礎控除額の110万円を控除して、特別控除額(累計2500万円)まで贈与税が課税されません。
これを越えた場合には、超えた金額に一律20%の税率を乗じた贈与税が課されます。
つまり、相続時精算課税における贈与税額は、「(課税価格-基礎控除110万円−特別控除2500万円)×20%」で求めます。
相続時精算課税を選択する場合は、贈与税の申告書の提出期間内に、相続時精算課税選択届出書および一定の書類を贈与税の申告書に添付して納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。
この制度を一度選択すると、その贈与者から贈与を受ける財産は、選択した年分以降すべてにおいてこの制度が適用され、「暦年課税」へ変更はできませんので留意が必要です。
なお、相続時精算課税適用財産の価額は、贈与者の相続の際に贈与時の価額から基礎控除額を控除した残額で、相続税の課税価格に加算されます。
マイホーム取得資金の相続時精算課税の特例
相続時精算課税制度にも、マイホーム取得資金の贈与を受けた場合の特例があります。令和8年12月31日までの贈与財産がマイホームの取得資金であれば、贈与者が贈与の年の1月1日において60歳未満であったとしても相続時精算課税の適用を受けられます。
この特例の適用を受けるには、贈与税の申告書の提出期間内に、特例を受ける旨を記載した贈与税の申告書に、受贈者の戸籍謄本、相続時精算課税選択届出書など書類を付けて、納税する地域の所轄税務署に提出する必要があります。
親から贈与を受ける際は以上の点に注意しましょう。
出典
国税庁 No.4402 贈与税がかかる場合
国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
国税庁 No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
国税庁 No.4103 相続時精算課税の選択
国税庁 No.4503 住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税選択の特例
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。