遺言の様式を見ると、自分には書けるのだろうかと不安になります。遺言を書く「プロ」に任せることはできるのでしょうか?

配信日: 2025.04.07

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遺言の様式を見ると、自分には書けるのだろうかと不安になります。遺言を書く「プロ」に任せることはできるのでしょうか?
家族に遺言をしようと正式な様式に沿って書く場合「正式な遺言…私に書けるだろうか」と不安になる方もいるでしょう。そのような際、遺言を書く“プロ”に任せるという選択肢があります。どのような制度なのか、詳しく見てみましょう。
大泉稔

執筆者:大泉稔(おおいずみ みのる)

株式会社fpANSWER代表取締役

専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師
明星大学卒業、放送大学大学院在学。
刑務所職員、電鉄系タクシー会社事故係、社会保険庁ねんきん電話相談員、独立系FP会社役員、保険代理店役員を経て現在に至っています。講師や執筆者として広く情報発信する機会もありますが、最近では個別にご相談を頂く機会が増えてきました。ご相談を頂く属性と内容は、65歳以上のリタイアメント層と30〜50歳代の独身女性からは、生命保険や投資、それに不動産。また20〜30歳代の若年経営者からは、生命保険や損害保険、それにリーガル関連。趣味はスポーツジム、箱根の温泉巡り、そして株式投資。最近はアメリカ株にはまっています。

遺言

遺言とは、これまでに築き上げてきた財産を、遺族や身のまわりの方に有効に生かしてもらうために残す“手紙”のようなものです。「これまで築き上げた財産」とは、現預金はもちろん、土地や自宅などの不動産、それに株式などが代表的ですが、借金などの負の遺産も含みます。
 
手紙のようなものですので義務ではありません。しかし手紙とはいっても、法律にのっとった様式がある点に留意しなくてはなりません。様式にのっとっていない遺言は無効、すなわち法律上、意味を成さないこともあり得ます。
 
様式にのっとって書くのは難しいという方の場合「遺言の作成をプロに任せる」という方法があります。それが公正証書遺言です。
 

そもそも公正証書遺言とは?

遺言を作りたい人(=以下、遺言者)が、公証人と証人2人の前で、遺族に伝えたい内容を口頭で伝えます。公証人と証人がその内容が真意であることを確認してから、公証人が文章を作成します。
 
作成した文章を公証人が遺言者と証人2人に読み聞かせるか、読ませて、内容に間違いがないことを確認してもらいます。間違いがなければ、公証人が公正証書遺言を作成します。
 

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公正証書遺言はタダ? どこで作るの?

公正証書遺言の作成の相談は無料ですが、公正証書遺言の作成には費用がかかります。その費用は見込まれる遺産の額によって異なります。例えば、1000万円を超え3000万円以下の場合は2万3000円です。
 
費用の詳細は、日本公証人連合会のホームページ「公証事務」のページをご覧ください
 
また公正証書遺言の作成は、全国に300ヶ所ある公証人役場に出向いて行います。また、公証人が、病院、自宅、老人ホーム、介護施設等に出向いて作成することも可能です。
 
なお、公証人に出向いてもらう場合には、先述の手数料に加え、公証人に日当や交通費を支払わなくてはなりません。
 

公証人とは?

公証人は裁判官や検察官、それに弁護士などの法曹経験者が多く、いわば法律のプロです。そして中立公正な立場で仕事を行うため、実質的には公務員ともいえますが、国から給与等が支給されているわけではありません。
 

証人は?

公正証書遺言の作成には先述のとおり、証人が必要です。公証人とは異なり、公正証書遺言をしたい人が手配もできますが、以下の人は証人にはなれません。

●未成年者
●推定相続人
●遺贈を受ける
●推定相続人および遺贈を受ける者の配偶者および直系血族等

要するに、将来遺族になることが見込まれる人や、遺産を受け取ることになりそうな人は証人になれない、というわけです。
 
なお公正証書遺言をしたい人が証人を手配できない場合には、公証役場で手配してくれます。
 

公正証書遺言のメリットは?

まずは何といっても法律のプロが遺言書を作成してくれる、という点です。先に述べたとおり口頭で伝えればよいので、自身で書かなくてもよいという利点があります。そして、公正証書遺言の原本は公証人役場で保管してくれますので、紛失や改ざんのリスクがありません。
 
一方、遺言書には公正証書遺言でなくても、自分自身で作成し自分で保管する「自筆証書遺言」があります。自筆証書遺言は、遺言書を書いた人が亡くなった場合、遺族が遺言書を持って家庭裁判所に出向き、遺言書が法律上の様式にのっとっているか確認してもらう、検認というプロセスが欠かせません。
 
しかし、公正証書遺言では、そもそもそれを作ったのが公証人という法律のプロですから、家庭裁判所による検認は不要なのです。
 

まとめ

公正証書遺言のデメリットは費用がかかるという点でしょう。しかし、遺言書を作って、遺族に確実に読んでほしい、という方ですと、費用を払ってでも、公正証書遺言をしたいと思うかもしれません。費用を払うことによるメリットに価値があるのか否かで判断されるとよいと思います。
 

出典

日本公証人連合会 そもそも、何のために遺言をするのですか?
日本公証人連合会 公正証書遺言の作成
日本公証人連合会 公正証書遺言の費用
日本公証人連合会 公正証書遺言の証人は、どのように手配するのですか?
日本公証人連合会 公正証書遺言のメリット
 
執筆者:大泉稔
株式会社fpANSWER代表取締役

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