相続のキホン(2)相続財産と財産リスト作り

配信日: 2019.04.10 更新日: 2019.06.18

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相続のキホン(2)相続財産と財産リスト作り
前回、「相続対策」と「相続税対策」の違いについてお伝えしました。今回からは円満な相続を実現するために必要な「相続対策の基本的な考え方」を順に説明していきます。
 
今回は「相続財産とは何か」と「財産リストの作成」についてです。
 
西山広高

執筆者:西山広高(にしやま ひろたか)

ファイナンシャル・プランナー(CFP®)、上級相続診断士、宅地建物取引士、宅建マイスター、西山ライフデザイン代表取締役
 
http://www.nishiyama-ld.com/

「円満な相続のための対策」「家計の見直し」「資産形成・運用アドバイス」のほか、不動産・お金の知識と大手建設会社での勤務経験を活かし、「マイホーム取得などの不動産仲介」「不動産活用」について、ご相談者の立場に立ったアドバイスを行っている。

西山ライフデザイン株式会社 HP
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相続財産とは

相続について考えるとき、まず初めに「相続財産を把握すること」が重要になります。
 
相続財産とは、被相続人(亡くなられた方)が遺す「金銭的な価値があるもの」すべて。以下のようなものが含まれます。
 

<プラスの財産>

不動産(土地、建物、借地権、借家権など)
現金、有価証券、債権(有価証券、売掛金、小切手、貸付金、預貯金、株券など)
動産(自動車、家財、宝石、貴金属、美術品、骨董品など)
その他(ゴルフ会員権、著作権、特許権など)
 

<マイナスの財産>

負債(借金などの債務、住宅ローン、自動車ローン、カードローンなど)
未払いの税金等(所得税、住民税、固定資産税など)
その他(家賃、地代、その他未払いの医療費など)
 
見落としがちなものもありますので注意が必要です。相続財産は、遺産分割協議の前提です。何がどこにどのくらいあるのかもわからなければ、残された相続人は遺産分割協議を始めることすらできません。
 

財産リストを作成しましょう

何が相続財産に当たるかがわかりましたら、財産を目録(リスト)作りを始めましょう。
 
ここで、ひとつアドバイスがあります。生前から相続対策を行う場合、最初にすべきことは財産の全容を把握することです。初めのリストアップは、あまり詳細である必要はありません。「どこに」「何が」「だいたいどのくらいあるのか」を大まかに把握するようにしましょう。
 
几帳面な人ほど、日々変動する資産価値を正確に把握できないことにストレスを感じ、リスト作りをあきらめてしまいがちです。
 
しかし、資産価値は変動するのが当たり前。生活していれば現預金は変動します。株や投資信託なども毎日価格が変わります。不動産も価値が変動します。むしろ価値が変わらないもののほうが少ないといえます。
 
リストアップすることをご自身が「面倒くさい」と思うならば、遺された人が行うのはもっと大変です。
 
最終的には、より詳しい情報があるに越したことはありません。遺言書を書いて細かく「どの財産を誰に相続させるか」を指定する場合に、もっと細かく正確なものにブラッシュアップしていけばよいのです。
 
最近はパソコンも普及し、使える人も多いでしょう。リストアップはパソコンで行っても構いません。
 

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リスト作りのポイント

前述したように「だいたい」で良いとはいえ、いくつかの資産についてはあまりおおざっぱすぎると後々の遺言書作成の時に役に立たないものがあります。
以下に、押さえておきたいポイントを整理します。
 
●預貯金
普通に生活していれば増減するのは当たり前の預貯金。リスト作りに正確な金額は必要ありません。「金融機関名」「支店名」「口座種別」「口座番号」と「およその残高」を記録しておきましょう。
 
●有価証券等
有価証券も評価額が変動します。売買などによって保有している銘柄や数量が変わることもあるでしょう。ここでは「証券会社などの金融機関名」「支店名」「口座番号」「作成時点での保有銘柄と株数など」を記載しておきます。
 
パソコンで作成するメリットは、見直しの際に書き直しが容易にできることです。
 
●不動産
不動産に関しては、預貯金や有価証券よりも詳しく把握しておく必要があります。遺言書に記載する際にも「○○にある不動産は△△に相続させる」と書いただけでは、相続登記ができません。記載しておきたいのは下記の内容です。
 
土地の場合:「所在」「地番」「地目」「地積」
建物の場合:「所在」「家屋番号」「種類」「構造」「床面積」
 
所有権の場合は以上で大丈夫ですが、借地権などの権利の場合はそのことも記載します。
 
これらの情報は「法務局」で「登記事項証明書」などの交付を受けることで調べることが可能です。最近は、全国の法務局がオンラインでつながっており、遠方の不動産の登記事項証明書も最寄りの法務局で発行してもらうことができます。
 
●生命保険
死亡した際に支払われる保険に加入しており、受取人が指定されている場合、保険金は「受取人固有の財産」として扱われるため、相続財産とは分けて考えるべきかもしれません。
 
銀行や証券会社の口座は原則として、口座の名義人が亡くなると凍結され、引き出すことができなくなります。一方、生命保険はお亡くなった連絡を受けるとすぐに手続きが取られ、受取人の口座に入金されます。葬儀費用などにも使えます。
 
速やかに手続きができるよう、「生命保険会社名」「証書番号」「受取人」について記録しておきましょう。
 
●債務
事業をされている方などの場合、借入金などの債務がある場合があります。
 
借金が多い場合などは相続人が「相続放棄」あるいは「限定承認」(相続財産を責任の限度として相続すること)を検討される場合もあります。これらの手続きは原則として、「お亡くなりになられたことを知った後3か月以内」に行わなければなりません。
 
ところが借金の有無や、額がわからない場合、「相続放棄」「限定承認」などの選択をすべきか否かについてすぐに判断することができません。
 
また、本人の借り入れではなくても、誰かの債務について連帯債務者になっている場合もあります。相続が発生した場合、原則として相続人が連帯債務も相続することになります。
 
被相続人が会社経営者の場合など、社長個人が会社の債務の連帯保証人になっているケースもあると思います。
 
●その他
毎月支払う費用(電気代、ガス代、水道代、電話代など)、年会費を支払っているクレジットカードの情報、自身が会費を支払っている会社や団体、年金を受け取っている場合の連絡先などもリストアップしておくほうが良いでしょう。
 
金額は決して大きくはないかもしれませんが、クレジットカードの年会費や携帯電話の利用料金などは、使わなくなっても連絡しない限り請求されます。多くの方が自動引き落としになっていると思いますので、支払いをストップする手続きが必要です。
 
年金はお亡くなりになった月の分まで支払われます。それ以降の分が振り込まれてしまった場合には、返金する手続きが必要になります。
 

まとめ

お亡くなりになった後、遺された人がやらなければいけないことはいろいろあります。期限が決められていることも少なくありません。少しでも遺される人たちの負担を少なくしておくことも重要です。
 
財産のリストアップは、人によっては結構大変な作業かも知れません。しかし、ご自身が大変だと思うことを遺された人たちで行うことは、ご本人以上に大変です。できるところからで構いません。ご自身で現状を把握するためにも準備をしておきましょう。
 
次回は「法定相続人の範囲」についてお伝えしたいと思います。
 
執筆者:西山広高(にしやま ひろたか)
ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引士、西山ライフデザイン代表取締役
 

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