兄が病気で亡くなり、高齢の父親が「相続人」に。遺産総額は6000万円で、父に「手続きを代わりにしてほしい」と頼まれました。親の代わりに申告できるのでしょうか?
今回は、親が子どもの相続人になるケースや高齢の親が相続人となるときの注意点、相続税が課される条件などについて紹介します。
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親でも相続人になるケースとは
子どもが亡くなって親が相続人になるのは、配偶者以外で優先順位のトップにいるときです。
相続には優先順位が決められており、上の順位の人がいなければ次の人、という風に相続人が決定します。国税庁によると、相続人の優先順位は以下の通りです。なお、配偶者は常に相続人になれます。
・1位:子ども(子どもが死亡している場合は孫)
・2位:両親や祖父母(直系尊属)
・3位:兄弟や姉妹
また、遺言で指定されていなかったり遺産分割協議で分割内容が決まらなかったりしたときは、法定相続分で遺産を分けることになります。
例えば、配偶者と亡くなった人の父親が相続する場合、法定相続分は配偶者が3分の2、父親は3分の1です。
高齢の親が相続人になるときの注意点
基本的に、相続税の申告手続きは本人が行います。子どもが親の代わりに申告はできません。遺産分割協議は全員の同意が必要とされているため、親にも参加してもらったうえで、必要に応じて親とともに税理士など専門家へ相談が必要です。
さらに、親が認知症で自身の意思能力に問題がある場合も、法律行為はできません。民法第3条の2により「法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。」と定められているためです。
この場合、子どもも代理にはなれないので、成年後見人を立てなければなりません。成年後見人を事前に決めていない場合、決まるまでに時間がかかる可能性があります。できるだけ早く対応した方がいいでしょう。
金額によっては相続税の課税対象に
相続した遺産の金額によっては、相続税も課されます。今回は、以下の条件で亡くなった人の配偶者と父親が相続したときの税額を計算しましょう。
・法定相続人は妻(配偶者)と父親のみ
・遺贈や相続時精算課税などは考慮しない
・相続した遺産総額は6000万円
・法定相続分で分ける
・控除は基礎控除と配偶者控除のみ
複数人で相続するとき、各相続人の相続税額は以下の手順で求められます。
1.遺産総額から基礎控除を引いて課税総額を求める
2.課税総額を法定相続分で各相続人に分け、それぞれで税額を求める
3.求めた税額を合計して、実際に受け取った遺産の割合で分ける
4.控除や加算があるときは適用する
まず、相続税の基礎控除は「3000万円+600万円×法定相続人数」です。今回は2人なので4200万円となり、基礎控除を差し引いた課税総額は1800万円です。法定相続分で分けると、妻は1200万円、父親は600万円になります。
妻は税率が15%、控除額が50万円のため、税額は130万円です。父親は税率が10%なので、税額は60万円となり、税額の合計は190万円になります。実際の相続分も法定相続分通りで1円未満は切り捨てるため、妻は税額が126万6666円、父親は約63万3333円です。
ただし、妻は取得した遺産が法定相続分までか1億6000万円なら配偶者控除があるため、課税されません。
子どもが代理で相続手続きはできない可能性がある
亡くなった人に子どもや孫がいなければ、親が遺産を相続するケースもあり得ます。しかし、たとえ親が高齢であっても、子どもが代わりに相続手続きはできないでしょう。もし親から代わりを頼まれたときは、親と一緒に税理士などの専門家へ相談することをおすすめします。
なお、親が認知症の場合などは、意思能力の有無により法律行為ができません。成年後見人を立てないと相続関係の手続きを進められなくなるため、できるだけ早く対応しましょう。
相続した金額によっては、税金が課されることもあります。もし親が代わりを頼む理由が相続税の金額計算が難しいなどであれば、計算手順を教えて親自身が申告できるようにするといいでしょう。
出典
デジタル庁 e―Gov法令検索 民法(明治二十九年法律第八十九号)第三条の二
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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