母の意向で家族葬にしましたが、それでも「100万円」近い見積もりが……。この費用、相続財産から出して問題ないのでしょうか?
葬儀費用について、相続財産から出しても問題がないか、気になる方も多いのではないでしょうか。そこで本記事では、「葬儀費用を誰が負担するのか」「葬儀費用を相続財産から出しても問題ないか」について解説します。葬儀の費用負担について知る機会は少ないと思われますので、ぜひ最後までお読みください。
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー
私がFP相談を行うとき、一番優先していることは「あなたが前向きになれるかどうか」です。セミナーを行うときに、大事にしていることは「楽しいかどうか」です。
ファイナンシャル・プランニングは、数字遊びであってはなりません。そこに「幸せ」や「前向きな気持ち」があって初めて価値があるものです。私は、そういった気持ちを何よりも大切に思っています。
葬儀費用を誰が負担するのか
相続財産を葬儀費用にあてていいかという問題を考えるに前に、「葬儀費用を誰が負担するのか」を考えましょう。「葬儀費用を誰が負担するのか」について明確に規定した法律はないため、判例(裁判例)を参考にする必要があります。
判例によると、以下の2とおりの見解があります。
(1)相続人または相続財産の負担とする見解
(2)喪主の負担とする見解
(1)は、「葬儀費用は被相続人の死亡に伴って社会通念上必要とされる費用である」という考え方を採用しています。
つまり、葬儀費用は「法定相続人が法定相続分に従って負担するもの」「相続財産から負担するもの」と考えます。この考え方に立てば、誰かが葬儀費用を一括で立て替え払いをした場合であっても、その人は各相続人に対して、それぞれの負担割合に応じた費用を請求することができるということになります。
一方、(2)は、「葬儀費用は相続債務ではない」「葬儀を実施するのが相続人であるとは限らない」という考え方を採用しています。加えて、「どれくらいの費用をかけて葬儀を行うかは喪主の責任で決められる事柄である」と考えるため、費用は喪主が負担すべきとしています。
葬儀費用を相続財産から出しても問題ないか
判例では2とおりの見解があり、判断が分かれていますが、最近では、相続財産は被相続人が生前に有していた財産であること、葬儀費用は相続開始後に発生する債務である(被相続人の債務ではない)ことから、(2)のほうが有力になってきているようです。
とはいえ、必ずしも「葬儀費用を相続財産から出してはいけない」ということではありません。相続人間の話し合いによって「葬儀費用を相続財産から出しもよい」ということであれば問題はありません。
ただし、当然「葬儀費用を相続財産から出しも問題はない」とはいえないところがポイントです。葬儀費用の負担について争いがないよう、故人の葬儀への意向を含め、相続人間で話し合っておくことが大切といえます。
まとめ
本記事では、「葬儀費用を誰が負担するのか」「葬儀費用を相続財産から出しても問題ないか」について解説しました。まとめると、以下のとおりです。
・葬儀費用の負担については、(1)相続人または相続財産の負担とする見解と(2)喪主の負担とする見解がある
・相続人間で話し合ったうえで葬儀費用を相続財産から出すのであれば、問題はない
私事ではありますが、今年、義父が亡くなり、妻が喪主を務めました。葬儀について、妻は義父の意向を聞いており、家族や親族の理解も得たうえで葬儀を執り行いました。周りの方の協力のおかげで葬儀は無事に終わりましたが、正直なところ、義父の逝去から葬儀までの間、葬儀について話し合う時間はありませんでした。
葬儀について、生前に話し合うのは気が引けるかもしれません。しかし、話しにくいことは話せるうちに話し合っておくべきだと思います。本記事が、話し合いのきっかけになれば幸いです。
執筆者 : 中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー