夫の遺産整理中に、借金が「500万円」あることが分かりました…。妻であっても相続放棄できますか?

配信日: 2025.09.19
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夫の遺産整理中に、借金が「500万円」あることが分かりました…。妻であっても相続放棄できますか?
夫の遺産整理を進めていたら、死後に発覚した借金が500万円。妻として「引き継ぎたくない」と思うのは当然の感情です。しかし、配偶者であっても相続放棄は法律上可能か、またそのほかの選択肢──限定承認や単純承認──との違いはどこにあるのか。
 
それに、申述期限や手続きでの落とし穴など実務的な注意点は何か。本記事では、法律の条文・裁判所の制度・具体例を交えて、配偶者の立場から最も賢い選択をする方法を解説します。
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相続放棄・限定承認・単純承認──まず知るべき制度の枠組み

日本の相続制度では、相続人には以下3つの選択肢があります。民法・裁判所の制度をベースに説明します。
 

1.単純承認

遺産のプラス・マイナスをすべて引き継ぐ。借金も返すことになる。
 

2.相続放棄

すべての遺産(プラスもマイナスも)をいっさい引き継がない。最初から相続人でなかったこととみなされる。民法938条・939条などに規定。
 

3.限定承認

プラスの財産の範囲内で借金などのマイナスを負う方式。借金が遺産より大きい部分は責任を負わない。民法923条に定められています。
 
限定承認は「すべての相続人が共同して申述する」必要があるため、手続きのハードルが高いことも制度の現実です。
 

妻(配偶者)の法的位置づけと民法上の条件

妻である配偶者は、常に相続人の一人です。民法上、配偶者には「順位」の概念がないため、子ども・両親・兄弟姉妹の有無にかかわらず相続人になります。 妻が相続放棄をすることも法律で認められていますが、以下の条件を満たす必要があります。


・相続開始を知っていること(=夫の死亡)、及び自分が相続人であることを知った時。
・その日から 3ヶ月以内 に相続放棄の申述を家庭裁判所にすること。
・未成年や成年被後見人の場合は代理人が申述を行う必要あり。

この条件を満たしていないと、相続放棄をできません。
 

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手続きの詳細と期限・法的根拠:書類・家庭裁判所申述・法律条文

制度を使う際の正式な法的根拠と具体的な手順を丁寧に解説します。
 

【法律条文】

・民法915条
相続人は「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3ヶ月以内に、単純承認、限定承認または相続放棄をしなければならない。
 
・民法923条
限定承認についての規定。「相続人全員が共同して申述すること」が必要であることなど。
 
・民法938条
相続放棄の方式。家庭裁判所に申述をすることなど。
 
・民法939条
相続放棄が成立したときの効力。放棄すると「初めから相続人でなかった」ものとみなされる。
 

【手続きの流れ】

1.遺産および負債の調査

銀行・貸金業者・自治体・税務署などから情報を得る。借金や未納税金など見落としがないようにする。
 

2.相続放棄をするか/限定承認をするかの判断

プラス資産の価値・維持したい資産・流動性・他の相続人との関係などを整理する。
 

3.申述書の作成

相続放棄または限定承認を望む旨を明記。限定承認の場合は、その理由や財産の概略を記載すること。
 

4.必要書類を集める


・被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本
・申述人(妻)の戸籍謄本
・被相続人の住民票除票又は戸籍附票(最後の住所を確認するため)
・遺産・負債の目録(利用できる範囲で)
・その他、家庭裁判所が指定する書式・登録印など

 

5.家庭裁判所への申述


・被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に申述する。
・申述期限(3ヶ月以内)を守る。
・郵送申述が可能な裁判所もあるので確認。限定承認では相続人全員の署名押印が必要。

6.申述の審査と受理通知

家庭裁判所が内容を確認し、問題なければ「受理通知書」が発行される。これで相続放棄または限定承認が正式に認められる。
 

【期限と例外】

原則として申述期限は「相続開始を知ってから3ヶ月以内」ですが、「相続財産があることを信じなかった」ないし「信じるに足りる相当な理由」があれば、財産の存在を知ったときから3ヶ月以内であれば認められることがあります。裁判所の判断次第です。
 
また、未成年者または成年被後見人である相続人については、代理人(親または後見人)がこの期限を守って手続きを行う必要があります。
 

相続放棄は妻でも可能、冷静な判断がカギ

借金500万円が見つかった場合でも、妻であっても相続放棄は可能です。ただし、死亡を知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります。
 
相続するか放棄するかは、借金だけでなく、プラスの財産や住居、家族構成などを総合的に判断することが大切です。迷う場合は、早めに専門家へ相談することで、後悔のない選択ができます。
 

出典

e-GOV法令検索 第三節 相続の放棄
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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