父からの相続が兄弟で「1000万円」ありました。母に「老後資金」として全額を渡すことにしましたが、贈与税の対象になりますか?
しかし、事情によっては、父親から兄弟が相続するはずだった財産を母親に渡したい、というケースもあるかもしれません。この場合は「贈与」にあたるのか、疑問に思う人もいるでしょう。
本記事では、遺産分割協議の意味合いや、贈与とみなされないための方法を解説します。
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目次
法定相続分や遺言書の内容と異なる割合で相続することは可能?
民法第907条には「共同相続人は、被相続人が遺言で禁じた場合または同条第2項の規定により分割をしない旨の契約をした場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部または一部の分割をすることができる」と記載されています。
つまり、相続人が複数いる場合、被相続人が遺言で分割を禁じていない限り、相続人はいつでも話し合いにより遺産を分割できます。
今回は「父からの相続財産が兄弟で1000万円あったが、母に老後資金として全額渡したい」ということです。
遺言書はなく兄弟の法定相続分が1000万円である場合も、父親の遺言書にその旨が記載されていた場合も、相続人全員が合意していれば、母親が全額を相続可能と考えられます。
贈与税がかかるのはどのようなとき?
そもそも「贈与」とは、個人から財産をもらうことです。
今回の事例で、父親が遺した財産を兄弟が相続した後で母親に老後資金として渡す場合は贈与になると考えられます。
受け取った財産の額が年間110万円を超える場合は贈与税が課せられ、受け取った側が負担しなければなりません。
贈与税がかからないようにするためには、相続人同士の話し合いにより相続の割合を変え、最初から母親が全額を相続できるようにした方がいいでしょう。
遺産分割協議とは?
相続人全員が遺産の分け方について話し合うことを「遺産分割協議」といいます。遺産分割協議では、相続人全員の合意があれば、法定相続分や遺言書の内容とは異なる方法で分割することも可能です。
遺産分割協議で必要なのは、相続人全員が話し合いに参加することです。
法定相続人になれるのは、配偶者・子ども・父母や祖父母などの直系尊属・兄弟姉妹となっています。
上記のうち配偶者は必ず相続人になりますが、それ以外には次のような優先順位が設けられており、このうち順位が最も高い人が相続人になるようです。
●第1順位:子ども
※子どもが死亡している場合は、その子どもの子ども・孫など
●第2順位:両親等の直系尊属
●第3順位:兄弟姉妹
※兄弟姉妹が死亡している場合は、その人の子ども
なお、相続人に未成年がいる場合、その代理人も遺産分割協議に参加する必要があります。
また、協議で決まったことは「遺産分割協議書」と呼ばれる書類に残さなければなりません。遺産分割協議書の作成は手書きでもパソコンでもいいため、協議をおこなった日の記載や相続人全員の署名・実印による押印があるものにしましょう。
作成した遺産分割協議書は、相続手続きの際に提出する場合があります。例えば、相続登記をおこなう際は法務局、預金を相続する際は金融機関、相続税の申告が必要な場合は税務署というように、提出先は相続の内容で異なります。
遺産分割協議により母親が全額相続することで合意を得られれば「贈与税」はかからない
相続人が複数いる場合は、法定相続分や遺言書に記載された内容に従って遺産を分割することになるでしょう。しかし、相続人による話し合いで全員の合意を得られれば、遺産分割の割合を変更可能です。
この話し合いのことを「遺産分割協議」といい、協議の結果を書類に残す必要があります。
今回の事例では、遺産分割協議により兄弟が受け取るはずだった遺産をすべて母親が相続できるよう合意が得られれば「贈与」ではなくなるため、贈与税はかかりません。
その点も含めて、慎重に話し合うとよいでしょう。
出典
デジタル庁e-GOV法令検索 民法(明治二十九年法律第八十九号)第五編 相続(遺産の分割の協議又は審判)第九百七条
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
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