更新日: 2019.06.20 その他相続

【空き家対策】空き家譲渡の3000万円控除の特例とはどんなものか

執筆者 : 星田直太

【空き家対策】空き家譲渡の3000万円控除の特例とはどんなものか
『相続した空き家を譲渡した場合における譲渡所得の特例』について、ご存じでしょうか。平成28年に創設された税制ですので、すでに認知度が高まっているとも考えられます。本稿では、この特例についてあらためて内容を整理し、最近の動向を踏まえながらお伝えしていきます。
 

【PR】相続の悩みをLINEから気軽に無料相談!

【PR】そうぞくドットコム不動産

おすすめポイント

・10秒でわかる!相続手続きの無料診断を実施。
・相続の専門家へ電話やLINEで無料相談が可能!
・「自分で相続手続き」を行う方法も徹底解説。
・友だち追加で特典や割引も多数!!

星田直太

執筆者:星田直太(ほしだ なおた)

税理士、ファイナンシャル・プランナー(CFP(R))

一般企業勤務を経て、30代から税務会計の世界に入り、税理士とCFPの資格を取得。

税理士法人勤務時には法人税務顧問、ベンチャー支援、事業再生、相続・事業承継といった多様な業務に従事。公的機関での勤務も経験した後、2014年に独立。現在は西新宿に税理士事務所を開業している。

中小企業向けの講演多数。他の専門家とも多く提携しており、ワンストップでお客様のお悩みに対応できる体制を構築している。

趣旨

わが国で少子化や人口の減少が進んでいることは論を俟たないでしょう。このような環境のなかで、空き家が増加していることが問題視されてきました。
 
管理されず放置される空き家が増加すると、治安や景観が悪化したり、倒壊のおそれが生じたりするなど、その地域における生活環境の悪化が問題となります。このような空き家増加問題に対処するため、「空家等対策の推進に関する特別措置法」が平成27年に施行されています。
 
この「空家等対策の推進に関する特別措置法」では、国による基本指針の策定や市町村による対策計画策定、情報収集、特定空家等に対する除却等に関する措置が定められていますが、その中に必要な税制上の措置を行うことも定められました(15条2項)。
 
これを受けて、空き家の処分を税制で後押しするため、平成28年の税制改正において『相続した空き家を譲渡した場合における譲渡所得の特例』が創設されました(※)。以下、その内容を見ていきましょう。
 
※国税庁WEBサイトにおける名称は、「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」といいます。
 

制度の概要

相続または遺贈によって取得した「被相続人居住用家屋」または「被相続人居住用家屋の敷地等」を一定期間内に売却し、一定の要件に該当するときは、譲渡所得の金額から最高3千万円までを控除することができるというものです。
 
なお、親子や夫婦、同一生計親族などの特別の関係がある人に売却した場合は、この特例の適用を受けることはできません。ここで、「被相続人居住用家屋」とは、以下のようなものをいいます。
 
○相続開始直前において、被相続人の居住の用に供されていたもの。
○相続開始直前において、被相続人以外の居住者がいなかったもの(被相続人が亡くなった時点で一人暮らしであったことが求められます)。
○昭和56年5月31日以前に建築されたもの。
○マンションなどの区分所有建物登記がされていないもの。
 

【PR】相続する土地・マンションがあなたの生活を助けるかも?

主な適用要件

この税制の適用を受けるためには、主に以下のような要件が定められています。実際に適用を受ける際には、要件や必要書類について税理士や所轄税務署によく確認してください。
 
○売却した人が、相続又は遺贈により、被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等を取得したこと。
○相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること。
○売却代金が1億円以下であること。
○売却した家屋や敷地等について、相続財産を譲渡した場合の取得費の特例(いわゆる「取得費加算」の特例)や収用等の場合の特別控除など、他の特例の適用を受けていないこと。
○同一の被相続人から相続または遺贈によって取得した被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等について、この特例の適用を受けていないこと。
 
さらに、対象となる家屋を取り壊してから売却するか否かによって異なる部分もあります。
 
<被相続人居住用家屋の売却(対象となる敷地等とともに売却する場合も含む)>
○相続時から売却時までに、事業や貸付け、居住の用に供されていたことがないこと。空き家の状態が継続していることが求められます。
○売却時において、対象家屋が一定の耐震基準を満たしていること。申告時に、耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書の写しを添付する必要があります。
 
<被相続人居住用家屋の全部の取壊し等をした後に対象となる敷地等を売却>
○被相続人居住用家屋の相続時から取壊し時まで、その家屋について事業や貸付け、居住の用に供されていたことがないこと。取壊し時まで空き家の状態が継続していたことが求められます。
○対象となる敷地等については、その敷地等について相続時から売却時まで事業や貸付け、居住の用に供されていたことがなく、さらに元の家屋の取壊し時から売却時まで他の建物や構築物の敷地として使われていたことがないこと。
 

最近の動向

この税制は、平成31年度税制改正によって、適用期間の延長及び対象家屋の拡充が図られています。
 
○適用期間の延長
もともとは平成28年4月1日~令和元(2019)年12月31日までの売却が対象でした。しかしながら、税制改正によって令和5(2023)年12月31日まで延長されることになりました。
 
○対象家屋の拡充
一定の場合には、被相続人が老人ホーム等に入所していた場合でも被相続人が居住していたものとして取扱い、この特例の適用を受けることができるようになりました。
 
例えば、被相続人が介護保険法に基づく要介護認定等を受けており、相続開始直前まで老人ホーム等に入所していた場合が該当します。
 
ただし、老人ホーム等入居中に他の親族が居住した場合は、適用対象外となります。その他にも要件が定められていますので、詳しくは税理士や所轄税務署に確認してみてください。
 
これまでご覧いただいたように、『相続した空き家を譲渡した場合における譲渡所得の特例』は、空き家対策を目的とした税制です。
 
従って、相続財産のうちに本税制の対象となる家屋があっても、土地だけを相続した方は本税制の適用を受けることができなくなります。この例でもわかるように、相続に係る税務対策には慎重に取り組む必要がありますのでご注意ください。
 
執筆者:星田直太(ほしだ なおた)
税理士、ファイナンシャル・プランナー(CFP(R))
 

ライターさん募集