喪主である叔父から200万円の葬儀費用の一部を出してほしいと言われています。法律的に支払う必要はあるのでしょうか?

配信日: 2025.10.25
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喪主である叔父から200万円の葬儀費用の一部を出してほしいと言われています。法律的に支払う必要はあるのでしょうか?
葬儀の際、喪主を務める親族から「費用の一部を負担してほしい」と求められるケースは少なくありません。今回は、亡くなったのが自分の親で、喪主を叔父が務めているケースです。金額が大きいと感情だけでは判断できず、「法律的に支払う必要があるのか」と疑問を抱く人も多いでしょう。
 
本記事では、葬儀費用の法的な位置づけと実務上の考え方を整理し、請求を受けた際の冷静な対応方法を解説します。
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葬儀費用は誰が負担すべきなのか

民法などの法律には、「葬儀費用を誰が支払うか」という明確な規定は存在しません。法的に“必ず負担しなければならない人”が決められているわけではなく、状況や相続人間の合意によって判断されるのが実情です。
 
一般的には葬儀を取り仕切るのは喪主であり、葬儀社との契約や支払いの手続きも喪主が行うため、実務上は喪主が葬儀費用の支払い義務を負うとされるケースが多いです。
 
一方で、相続人の立場にある親族間で話し合って費用を分担する場合もあります。葬儀の規模や費用などによっては、喪主だけに大きな負担が生じることもあるため、相続人間でよく話し合い、調整するのが望ましいでしょう。
 

裁判例が示す考え方

過去の裁判例では、葬儀を主宰した者が費用を負担すると判断が多数示されています。これは、喪主が葬儀の内容・規模・費用を決定し、葬儀社との契約主体となる場合が多いためです。そのため、喪主以外の親族や相続人に対して一方的に費用を請求しても、法的な支払い義務が認められない場合があります。
 
ただし、例外的に相続人間で「葬儀費用は遺産から支払う」「親族で分担する」といった合意がある場合は、その取り決めに従って費用が分担されることもあります。
 
また、故人が生前に葬儀社と契約していた場合や、遺言書で費用負担について定めている場合には、それらの内容が優先されます。
 

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相続・契約との関係に注意

葬儀費用は、民法上は被相続人の相続債務には含まれません。ただし、通夜や告別式、火葬、納骨など社会通念上相当とされる葬儀費用は、相続税の計算上、必要経費(債務控除)として遺産総額から差し引くことが認められています。
 
銀行借入などの被相続人の生前債務は、法定相続分に応じて相続人に承継されますが、葬儀費用はこれに含まれません。あくまで葬儀を実際に行った者(通常は喪主や代表相続人)が一時的に費用を負担し、後に相続人間で話し合い負担割合を決めるのが一般的です。
 
相続人全員の合意があれば、遺産から葬儀費用を支出して調整することは可能ですが、合意がない場合でも葬儀は執り行えます。
 
まずは喪主などが立て替えて支払い、後に必要に応じて他の相続人と費用負担のあり方を協議するのが現実的な対応といえます。ただし、契約に関与していない親族については、法的には直接の支払い義務は原則ありません。
 
また、葬儀社との契約関係に注目すると、誰が契約当事者であるかが重要となります。契約当事者本人(多くの場合、喪主)が法的な債務者となるため、契約に関与していない親族には支払い義務が生じることは一般的にはありません。
 
さらに、相続放棄をした場合には、相続人とはみなされず、遺産や債務に関わる法的責任は免れます。ただし、葬儀費用は家族としての社会的・道義的な支出と位置づけられることもあり、放棄によって完全に切り離されるとはかぎりません。
 

請求されたときの冷静な対応方法

まず確認すべきは、「誰が葬儀社と契約し、どのような根拠で請求しているのか」という点です。契約当事者が喪主(叔父)であれば、葬儀費用の支払い義務は基本的に喪主にあります。相続人が契約に関与していない場合、法的に直接支払う義務はありません。
 
請求を受けたときは感情的に反応せず、「どのような名目で」「どの範囲の費用を」負担してほしいのかを確認しましょう。明細書を求めるというよりも、費用の総額と分担の根拠を説明してもらうことが大切です。
 
次に、他の相続人がいる場合は、費用分担について合意があったのかを確認しましょう。ここでいう「他の相続人」とは、法的な相続権を持つ親族を指します。明確な合意がなく、喪主が一方的に請求しているだけであれば、支払い義務はありません。
 
感情的な対立を避けるためには、「請求金額の妥当性」や「契約者の責任範囲」を冷静かつ客観的に話し合うことが大切です。支払いを拒む場合も、強い言葉で断るのではなく、「法的な根拠に基づいて判断したい」と伝えるなど冷静な対応を心掛けましょう。
 
将来的なトラブルを防ぐためには、相続人や葬儀を取り仕切る親族同士で葬儀費用に関する考え方を共有し、遺言書などで費用負担を明記しておくことも有効です。
 

感情ではなく、法的根拠に基づいて判断しよう

葬儀費用をめぐるトラブルは、感情のもつれから深刻な問題に発展しがちです。しかし、葬儀費用の支払いは法律で明確に義務づけられていないため、「親族だから」「相続人だから」という理由だけで一方的に負担を求められることはありません。
 
まずは、「契約主体が誰であったか」「費用分担の合意があったか」「費用の妥当性」の3つの観点を整理し、支払いの是非を冷静に判断することが大切です。
 
お金に関わる問題だからこそ感情的にならず、事実関係を確認しながら冷静に対応する姿勢が、トラブルを避ける最良の方法といえるでしょう。
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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