妻の口座に毎月「10万円」の生活費を移しているだけのつもりが、実は“贈与”とみなされることも? 共働き夫婦が注意すべきポイント
しかし、税務上は移した金額が「贈与」と判断され、贈与税の対象となる場合があります。今回の事例のように「毎月10万円を妻の口座に移しているだけ」というケースでも、実務上注意を要するのです。
本記事では、夫婦間での生活費送金が「贈与」とされるかどうかの基準、税務リスクを避けるための実務的なポイント、安心して家計を運用するために押さえておくべき事項を整理します。
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夫婦間の送金が「贈与」とみなされるのはどんなとき?
まず、贈与税の基本的な枠組みを押さえましょう。贈与税とは、個人が他の個人から財産を無償で取得した場合にかかる税金です。年間の基礎控除額110万円を超える金額を「贈与」として受け取った場合、その超えた部分に対して課税されます。
ただし、例外的に「夫婦や親子間で日常の生活費や教育費として通常必要となる範囲で取得する金銭」については、贈与税がかからないケースもあります。例えば、扶養義務者からその扶養義務者と生計を一にする者への通常の生活費・教育費にあてるための金銭は、通常必要と認められる範囲であれば課税対象外とされています。
では、夫婦間で「毎月10万円を妻の口座に移して生活費にあてている」場合はどうでしょうか。これは、通常の生活費として認められる範囲であれば贈与税の対象にはならないと考えられますが、状況によっては「夫から妻への無償の金銭移動」とみなされる可能性があります。
例えば、妻が自分自身の収入で生活できており、夫の送金を「通常の日常生活費」として使っていない、あるいは使途が明確でない場合には、税務上「贈与」と判断されるリスクが高まります。
つまり、共働きなどでそれぞれ収入がある夫婦が、一方の口座に毎月10万円を移したとしても、それが実際に家計の生活費として共同で使われている場合には、贈与税の課税対象にはならないでしょう。ただし、受け取った一方がその資金を自分の貯蓄に回すなど、生活費の範囲を超えて使用しているような場合には、「贈与」とみなされる可能性があります。
夫婦の生活費送金で税務リスクを回避するための実務チェック
それでは、実務的にはどのような対応を取るべきでしょうか。まず、送金を行う目的・使途などを明確にしておくことが大切です。
単に「月10万円を妻口座に入金し、妻が自由に使う」という形式よりも、「妻の収入が少ないために、その分を夫が補填して生活を維持している」「送金金額が家計全体の負担割合に見合っている」というような説明が可能であれば、税務上も「生活費として必要かつ通常の範囲」であると主張しやすくなるでしょう。
次に、年度ごとの送金総額が過度になっていないかを確認しましょう。また、送金が「預金として貯められている」「投資に回されている」など明らかに生活費以外に使われていると、非課税要件から外れる可能性が高まります。
最後に、税務署から指摘を受けた際に備え、送金記録・領収書・家計簿などを整備しておくことが望ましいといえます。帳簿上「生活費として支出した」と説明可能な資料があることは、税務リスクを低減するうえで有効です。
まとめ:安心して家計を運用するために覚えておくべきこと
夫婦が共働きであるにもかかわらず、片方の口座に毎月10万円を移して生活費にあてている場合、その送金が単なる家計運用としてみなされるか、税務上「贈与」と判断されるかは、収入・使途・送金目的・家計の実態などに左右されます。
税務上の基準として、「扶養義務者から通常必要な生活費にあてるために取得する財産は非課税」とされる一方で、その資金を自分の貯蓄に回すなど、生活費の範囲を超えて使用しているような場合には、「贈与」とみなされる可能性があります。
したがって、安心して家計を運用するためには、送金額が社会通念上「必要かつ通常の範囲」であるか、使途が明確であるか、帳簿・記録を残しているか、といった条件を整えることが重要です。
年ごとの送金総額や妻の収入状況、夫婦の家計の流れを見直し、必要に応じて税理士など専門家にも相談することで、家計管理の安心感も高まるでしょう。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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