タンスの奥から半年前に亡くなった祖母の通帳が見つかり、預金残高は500万円! 遺産分割が済んでしまった今、どうしたらいいですか?
また、意図的に隠していたわけではないことを、きちんと理解してもらえるのか心配になる方も多いでしょう。
本記事では、預金が後から見つかった場合に、どのように整理し、どのように対応すればよいのかを解説します。
1級ファイナンシャルプランニング技能士・CFP®認定者/中小企業診断士
新卒で警察官としてキャリアをスタート。その後、都内税理士法人で勤務し、多くの企業の経理業務を手がけた経験を活かして独立しました。現在は、「会社のお金」と「家庭のお金」をワンストップで相談できるパートナーとして活動しています。
小学生の子どもを育てるママでもあり、ライフプラン作成やキャッシュフロー分析など、個人やご家庭向けの具体的で実用的なアドバイスを提供しています。
企業経理相談や経営分析にも精通しており、これまでの経験を基に、経営者が抱えるお金の悩みに幅広く対応。さらに、執筆やセミナー活動も行い、「知って得するお金の知識」を届けています。お金の管理や経営に関するお悩みがある方は、ぜひお気軽にご相談ください。
まずやるべきこと
通帳が見つかったとき、「口座が凍結される前に、取りあえず引き出しておこう」と考えてしまう方もいるかもしれません。しかし、ここは少し待ってください。
亡くなった方の預金は、死亡した時点で相続人全員の共有財産となります。よかれと思ってやったことであっても、特定の相続人が単独で引き出してしまうと、後から経緯の説明が難しくなり、思わぬトラブルにつながる可能性があります。
まずは金額の大小にかかわらず、「新たに相続財産が見つかった」という事実を、他の相続人に共有しましょう。これが、最初に行うべき対応です。
なぜ共有が必要かというと、後から見つかった財産によって相続割合に影響が出る場合がありますし、相続税の税額が変わる可能性もあるためです。また、金額にかかわらず、相続人それぞれの心理的な公平感にも影響することがあります。最初に情報を共有しておくことが、結果的にトラブルを防ぐことにつながります。
後から見つかった財産の取り扱い
相続が発生すると、一般的には(1)誰が相続人になるかを確認し、(2)財産を誰が受け取るかを決める遺産分割協議を行い、(3)必要な場合には相続税の申告を行う、という流れで手続きが進みます。
今回のケースは遺産分割協議が終わっているということですが、「手続きをやり直しになってしまうのでは」と心配される方もいますが、通常はそうではありません。
後から見つかった預金は、「まだ分けていなかった財産」として扱われます。遺産分割協議書に後日発見財産の取り扱いが書かれていればその内容に従い、記載がなければ相続人全員で新たに取得者を決めれば大丈夫です。
最初の協議を作り直す必要はなく、実務上は追加の合意書を1枚作成して対応するケースがほとんどです。
相続税の申告はどうなる?
遺産分割については、前述のとおり追加の協議で対応できます。では、相続税の申告はどうなるのでしょうか。
相続税の申告期限は、原則として被相続人が亡くなった日の翌日から10ヶ月以内です。まずは、この期限を過ぎているかどうかを確認しましょう。
相続税は、「誰が財産を取得したか」ではなく、「死亡時にその財産が存在していたか」によって判断されます。そのため、申告期限前に通帳が見つかった場合は、新たに見つかった預金を相続財産に追加して申告すれば問題ありません。
一方、すでに相続税の申告を終えている場合は、修正申告という手続きで対応します。新たに見つかった財産を追加した結果、税額が増える場合には、追加で税金を納める必要があります。
その際、申告期限を過ぎている場合には、本来納めるべき税額の納付が遅れた期間に応じて延滞税がかかることがあります。
また、税務署から指摘を受ける前に自主的に修正申告を行えば加算税はかからないケースが多いですが、指摘を受けてから修正する場合には過少申告加算税がかかる場合もあります。
もっとも、後から財産が見つかること自体は珍しいことではありません。大切なのは、見つかった時点で放置せず、速やかに修正申告を行うことです。
実際の対応としては、まず金融機関に連絡し、死亡日時点の残高を確認します。そのうえで誰が取得するかを相続人同士で決定し、必要に応じて合意書を作成します。そして、修正申告が必要な場合には財産一覧を見直し、追加で申告・納税を行うという流れです。
相続手続きというと大がかりなやり直しが必要なのではと想像してしまいますが、多くの場合はすべてをやり直す必要はなく、「後から見つかった財産を追加する」という形で手続きは完結します。
終わりに
相続手続きの後から通帳が見つかって、「隠していたと疑われないかな」と不安に思われることもあると思われます。
しかし実際には、家の中の整理が進むにつれて、新しい事実が見つかることは決して珍しいことではありません。後から財産が見つかること自体が問題になるわけではなく、見つかった後に正しく追加処理を行えば、ほとんどの場合は大きな問題にはなりません。
相続とは、単に財産を分ける作業ではなく、家族の間で財産や気持ちを整理し、それぞれが納得しながら次の世代へ引き継いでいく過程でもあります。今回のようなケースでも、一つずつ誠実に整理していくことが、結果として円満な相続につながっていきます。
もし相続手続き後に通帳が見つかった場合には、慌てず、本記事を参考にしながら手続きを進めてみてください。
出典
国税庁 相続税の申告のしかた(令和7年分用)
国税庁 No.4205 相続税の申告と納税
国税庁 No.9205 延滞税について
国税庁 No.2026 確定申告を間違えたとき
執筆者 : 富澤佳代子
1級ファイナンシャルプランニング技能士・CFP®認定者/中小企業診断士
