父の“葬儀費用200万円”のため銀行に行くと「口座は凍結されています」と言われ、自腹で“全額立て替え”! 後日「口座凍結中も150万円まで引き出せる」と聞いたけどナゼ? 相続預金の払戻し制度とは

配信日: 2026.04.05
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父の“葬儀費用200万円”のため銀行に行くと「口座は凍結されています」と言われ、自腹で“全額立て替え”! 後日「口座凍結中も150万円まで引き出せる」と聞いたけどナゼ? 相続預金の払戻し制度とは
父親が急逝し、葬儀社から請求された金額は約200万円でした。長男が父の口座からお金を出そうと銀行へ行くと、窓口で「お父さまの口座は凍結されています」と告げられました。結局、200万円を自分の貯金から全額立て替えました。
 
ところが後日、職場の同僚から「凍結中でも引き出せる制度があるらしい」と聞いて調べてみると、150万円は父親の口座から引き出せたことが分かりました。
 
本記事では、口座凍結中でも預金を引き出せる「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」の仕組みと、利用時に知っておきたい注意点を解説します。
小熊晋平

1級ファイナンシャル・プランニング技能士

亡くなった人の口座はなぜ凍結されるのか?

金融機関は、口座名義人の死亡を把握した時点で口座を凍結します。目的は、相続財産を守るためです。凍結せずに放置すると、一部の家族が勝手にお金を引き出し、ほかの相続人とのトラブルに発展しかねない可能性があるからです。凍結後は、遺産の分け方を話し合う遺産分割協議がまとまるまで、原則として引き出しができません。
 
この協議には、相続人全員の合意が必要です。スムーズに進まなければ、数ヶ月から、長ければ1年以上かかることもあります。その間に必要となる葬儀費用や入院費の精算、残された家族の生活費は、全て自分たちで用意しなければなりません。
 

知っていれば使えた相続預金の払戻し制度

こうした問題を解消するために、「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」があります。この制度の主なポイントは次のとおりです。
 

・遺産分割の話し合いが終わっていなくても利用できる
・ほかの相続人の同意がなくても単独で手続きできる
・金融機関の窓口で一定額を引き出せる

 
引き出せる金額は、以下の式で計算します。
 
預金残高×1/3×法定相続分(上限150万円/金融機関ごと)
 

長男のケースではいくら引き出せたのか

今回のケースでは、父親の預金はA銀行に1800万円ありました。相続人は母・長男・次男の3人です。法定相続分(民法で定められた相続の取り分)は、配偶者である母が2分の1、残りを長男と次男で均等に分けるため、それぞれ4分の1となります。
 
長男の法定相続分(4分の1)で計算すると、次のようになります。
 

・預金残高が1800万円
・1/3を掛けると600万円
・長男の相続分(1/4)を掛けると150万円

 
つまり、この制度を使えば葬儀費用200万円のうち150万円は、父親の口座から引き出せたことになります。長男が自腹で負担する金額は50万円で済んだわけです。
 

葬儀費用だけでなく生活費の確保にも使える

この制度は、葬儀費用支払いのためだけのものではありません。残された家族が当面の生活費を確保する目的などにも活用できます。例えば、母親が父親の年金収入に頼って生活していたような場合、遺産分割を待つ間の生活資金として引き出すことが可能です。
 
母親の法定相続分は2分の1なので、計算上は300万円になります。ただし、上限は150万円のため、引き出せる金額は150万円です。また、亡くなった父親が複数の金融機関に口座を持っていた場合、それぞれの金融機関から150万円ずつ引き出すことも認められています。
 

勝手に引き出すと家族間のトラブルにつながる

この制度を使わなくても、「凍結される前にこっそり引き出してしまえばいい」と考える人もいるかもしれません。
 
しかし、銀行に知らせず勝手に出金すると、ほかの家族から「遺産を独り占めしようとしているのでは?」と疑われかねません。この制度を使えば、金融機関の窓口で正式な手続きを経るため、記録が残り、ほかの家族への説明もしやすくなるでしょう。
 
また、亡くなった人に多額の借金があった場合には、財産も負債も全部引き継がないという相続放棄を選ぶこともできます。しかし、勝手に預金を引き出していると、放棄が認められなくなるおそれもあります。いずれにしても、お金が必要なときは自己判断で動く前に、この制度の利用や専門家への相談を検討することが大切です。
 
人が亡くなった直後は、どれだけ悲しくてもお金の問題は待ってくれません。相続預金の払戻し制度を知っているかどうかで、いざというときの経済的な負担は大きく変わります。もしものときのために、頭の片隅に入れておくと安心です。
 

出典

法務省 相続された預貯金債権の払戻しを認める制度について
一般社団法人全国銀行協会 遺産分割前の相続預金の払戻し制度のご案内チラシ
e-Gov法令検索 民法
 
執筆者 : 小熊晋平
1級ファイナンシャル・プランニング技能士

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