父から「相続税対策」と“年100万円”生前贈与の相談が! でも「資産3600万円以下」なら意味はないって本当ですか? 日本の“9割の家庭”では相続税の発生なし!? 国税庁のデータも確認
本記事では、暦年贈与の基本や相続税がかかる基準を分かりやすく整理したうえで、たとえ非課税でも遺言書の準備が大切な理由を解説します。
1級ファイナンシャル・プランニング技能士・CFP
年100万円の生前贈与は相続税対策になるのか
暦年贈与の仕組みと年110万円の非課税枠
暦年贈与とは、1月1日から12月31日までの1年間に受け取った財産の合計額が110万円以下であれば、贈与税がかからない仕組みのことです。例えば、父から子へ年100万円ずつ贈与する場合、110万円の非課税枠に収まるため贈与税は発生しません。
この方法を使えば、毎年少しずつ財産を移すことで将来の相続財産を減らし、結果として相続税の負担を軽くできる可能性があります。
ただし、毎年同じ時期に同じ金額を贈与し続けると「定期贈与」とみなされ、まとめて課税されるリスクがある点には注意が必要です。贈与のたびに契約書を作成し、金融機関への振込で記録を残すなどの対策をしておきましょう。
2024年からの改正で持ち戻し期間が7年に延長
注意点として、2023年度の税制改正により、相続が発生した際に相続財産へ加算される生前贈与の対象期間が、従来の3年から7年に延長されました。
この改正は2024年1月1日以降の贈与から段階的に適用され、2031年以降に発生する相続では完全に7年以内が対象となります。生前贈与で相続税を減らしたい場合は、できるだけ早い時期から始めることが重要といえるでしょう。
資産3600万円以下なら相続税はかからない? 基礎控除の考え方
基礎控除額は「3000万円+600万円×法定相続人の数」
相続税には「基礎控除」という非課税枠があり、遺産の総額がこの基礎控除額を超えなければ相続税はかかりません。計算式は「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」です。
法定相続人が1人なら3600万円、2人なら4200万円、3人なら4800万円が基礎控除額となります。父親の資産が3600万円以下で、相続人が子ども2人であれば基礎控除は4200万円となるため、生前贈与による相続税対策の必要性は低いかもしれません。
約9割の家庭では相続税が発生していない
国税庁が公表した令和6年分のデータによると、相続税の課税割合は10.4%でした。言い換えれば、亡くなった人のうち約9割の家庭では相続税が発生していないことになります。
ただし、地価の高い都市部に自宅を所有している場合など、自分では気づかないうちに基礎控除を超えているケースもあるため、一度は財産の総額を把握しておくことをおすすめします。
相続税がかからなくても遺言書を準備すべき理由
遺産分割トラブルの約76%は5000万円以下の家庭で起きている
2024年の司法統計年報によると、家庭裁判所に持ち込まれた遺産分割事件のうち約76%は遺産額5000万円以下の家庭で発生しています。相続税がかからない家庭であっても、「誰が自宅を引き継ぐのか」「預貯金をどう分けるのか」といった問題は、資産の大小にかかわらず起こり得るものです。
法務局の「自筆証書遺言書保管制度」を活用しよう
遺言書の作成に踏み切れない人におすすめなのが、2020年7月に始まった法務局の「自筆証書遺言書保管制度」です。手数料3900円で法務局に遺言書の原本を預けることができ、紛失や改ざんの心配がなくなります。
さらに、この制度を利用した遺言書は家庭裁判所での検認が不要になるため、相続発生後の手続きがスムーズに進みます。公正証書遺言と比べて費用も大幅に抑えられる制度です。
まとめ
年100万円の暦年贈与は、資産が基礎控除の範囲内であれば相続税対策としての効果は限定的です。相続税の基礎控除額は法定相続人の数によって変わるため、まずは家族構成と財産の総額を確認することが大切です。
また、相続税がかからない家庭でも遺産分割を巡るトラブルは起こり得ます。家族が困らないよう、遺言書の作成や法務局の保管制度の活用など、今からできる準備を始めてみましょう。
出典
国税庁 財産を相続したとき
執筆者 : よし・こう
1級ファイナンシャル・プランニング技能士・CFP
