親族の集まりで「家は長男にやる」と宣言した父。遺言書がなくても、この“口約束”だけで有効になるのでしょうか?

配信日: 2026.04.24
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親族の集まりで「家は長男にやる」と宣言した父。遺言書がなくても、この“口約束”だけで有効になるのでしょうか?
親せきが集まったタイミングで相続の話になった際、口頭で「家は長男に相続させる」などと宣言される場合もあるでしょう。しかし、口約束のみの遺言では、正式な遺言扱いにならない可能性があります。
 
今回は、正式な遺言となる条件や遺言書の種類、口頭でも遺産を受け取れる可能性がある方法、相続した場合の税金などについてご紹介します。
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口頭での遺言は正式な遺言にならない場合がある

口約束での遺言は、原則として法的な拘束力を持ちません。
 
民法第967条では「遺言は、自筆証書、公正証書又は秘密証書によってしなければならない」と定められているためです。それぞれの遺言形式が正式なものと認められる条件は、次の通りです。
 

自筆証書

・遺言書の全文、日付、氏名を遺言を残す人がすべて自筆し、印を押している
・遺言書とともに相続内容の目録を残すときは、目録のページごとに署名と印を押している(目録自体は自筆でなくてもよい)
・遺言書に変更を加えるときは、遺言を残す本人が変更場所を指示し、変更した旨を追記したのちに署名し、変更場所に印を押している

 

公正証書

・2人以上の証人が立ち会ったうえで作成されている
・遺言を残す人が遺言の内容を公証人(法務大臣によって任命される公務員)に口頭で伝える
・公証人法に基づいて作成されている

 

秘密証書

・遺言を残す人が秘密証書に署名し、印を押している
・遺言を残す人が秘密証書を封筒などに入れて封をし、証書に用いた印を使って封印する
・遺言を残す人が、公証人1人と証人2人以上の前に封をした証書を提出し、自分の遺言書であること、また自分の氏名と住所を伝える
・公証人が、証書が提出された日付と遺言を残す人から伝えられた氏名と住所を封紙に記載し、遺言を残す人と証人2人とともにそれぞれで署名、印を押す

 
今回のように親族の集まりのときに口頭で伝える形式はこれらの条件に合致しないため、正式な遺言とは認められない可能性があります。相続時のトラブルを防ぐためにも、正式な遺言書を書いてもらいましょう。
 
ただし、病気や事故などで本人に命の危機が迫っており、自分で遺言書を作成できない場合は、3人以上の証人が立ち会っているなどの条件を満たしていれば例外的に口頭での遺言が認められるケースもあります。
 

死因贈与扱いであれば有効になる可能性がある

死因贈与とは、「その人が亡くなったときに贈与する」と贈与契約を結ぶことです。贈与契約であれば、口頭でも遺産を受け取れる可能性があります。
 
民法第549条では「贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる」と定められています。
 
さらに、民法第550条では、書面によらない贈与は当事者間で解除が可能とされていることから、お互いが贈与と認識していれば書面がない口頭のみでも死因贈与は可能なようです。
 
ただし、贈与する人とされる人がお互いに贈与であることを認識していないと認められません。その証拠を残すためにも、口頭だけでなく贈与の内容を書面に残した方がよいでしょう。
 

遺産を相続すると分かったら相続税についても知っておいた方がよい

遺産の相続内容が事前に判明している場合は、相続税の課税対象に該当するかを先に調べておくと、相続後の手続きをスムーズに進めやすくなります。相続税の課税対象になるかどうかは、法定相続人数や遺産総額などによって変わるためです。
 
相続税について試算する場合、まずは相続税の基礎控除「3000万円+600万円×法定相続人数」を遺産総額が超えていないか確認しましょう。超えている場合、自分が相続した遺産の割合に応じて、支払う相続税額が決まります。
 
法定相続人が長男と次男の2人で長男は3000万円の家、次男は2000万円の現金を相続したケースで試算してみましょう。今回は死因贈与ではなく、ほかの課税対象となる贈与もないものとします。
 
この場合、基礎控除額は4200万円です。そのため、基礎控除を差し引いた800万円に対して課税されます。兄弟の相続割合に基づいて計算すると、長男の負担する相続税額は48万円、次男の負担する相続税額は32万円です。
 

口約束のみでは無効になるケースもあるため有効な書類の作成を依頼しておく

遺言を残す場合、原則として口頭のみでは法的条件を満たさず、正式な遺言扱いにならないケースが多いです。遺言書には3種類があるため、父親にいずれかの形式で遺言書を残してもらうよう依頼しておきましょう。
 
なお、死因贈与として事前に贈与契約を結ぶ場合は口頭だけでも成立する可能性があります。ただし、口頭のみでは贈与契約があったかを客観的に判断しにくくなるため、証拠として贈与契約書などを残しておくとよいでしょう。
 

出典

デジタル庁 e-Gov法令検索 民法(明治二十九年法律第八十九号) 第三編 債権 第二章 契約 第二節 贈与 第五百四十九条(贈与)、第五百五十条(書面によらない贈与の解除)、第五編 相続 第七章 遺言 第二節 遺言の方式 第一款 普通の方式 第九百六十七条(普通の方式による遺言の種類)、第九百六十八条(自筆証書遺言)、第九百六十九条(公正証書遺言)、第九百七十条(秘密証書遺言)、第二款 特別の方式 第九百七十六条(死亡の危急に迫った者の遺言)
国税庁 パンフレット「暮らしの税情報」(令和7年度版) 財産を相続したとき
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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