父から「認知症になる前に」と“毎月10万円”を手渡しで受け取ることに…税務署から「贈与税逃れ」のペナルティ対象と疑われないか心配ですが“手渡し”なら大丈夫ですか? 注意点を解説
結論からお伝えすると、年間120万円の手渡しは基礎控除を超えるため、原則として贈与税の申告・納税が必要になります。さらに、あらかじめ毎月または毎年一定額を贈与する約束があったと見られると、定期贈与として扱われる可能性もあるため注意が必要です。
本記事では、贈与税の基礎控除の仕組みから、定期贈与と判断される条件、そして税務署に疑われないための具体的な対策までを解説します。
FP1級、CFP、DCプランナー2級
贈与には年間110万円の基礎控除がある
贈与税には、1年間に受け取る財産の合計額が110万円以下なら課税されない「基礎控除」が設けられています。
毎月10万円ずつ手渡しで受け取ると、年間の合計額は120万円となり、基礎控除の110万円をわずかに超える計算になります。超過分の10万円に対して贈与税が発生し、受け取った側が翌年2月1日から3月15日までの申告期間に申告・納税しなければいけません。
基礎控除は「あげる側」ではなく「もらう側」1人につき年間110万円という枠です。父と母の両方から受け取る場合でも、合算して110万円を超えれば課税対象となります。父親からの毎月10万円は、年120万円のペースで続けると基礎控除の枠を超える点をまず押さえておきましょう。
金額を減らして基礎控除内に収めても「定期贈与」のリスクがある
年120万円では贈与税がかかるため、毎月9万円などに減らして基礎控除の枠内に収めようと考える方もいるかもしれません。しかし、年間110万円以下の贈与であっても、「定期贈与」とみなされると合計額に対して贈与税が課される可能性があります。
定期贈与とは、あらかじめ「10年間にわたり毎年一定額を贈る」といった取り決めがある贈与を指します。この場合、毎年その都度独立して贈与があったのではなく、一定期間にわたって給付を受ける権利をまとめて取得したものとして、贈与税の課税対象になる可能性があります。
定期贈与と見られやすい要素としては、毎年同じ時期に同じ金額を贈与しているケース、贈与契約書を作成していないケース、そして手渡しで証拠が残らないケースです。父親が「認知症になる前に」と毎月決まった額を手渡しで渡す状況は、前述の条件に該当しやすい典型例と言えます。
また、相続が発生した際には、過去の預金移動や家族名義の財産が確認されることがあります。
税務署から贈与税逃れを疑われないための注意点
定期贈与と判断されないためには、贈与の都度「贈与契約書」を作成するのが有効な対策です。
毎年の贈与について個別の契約書を残せば、各回が独立した合意に基づく贈与だと客観的に示せるため、税務署から一括贈与と認定されにくくなります。契約書には贈与日、贈与者と受贈者の氏名、贈与する金額、振込方法などを明記し、双方が署名押印した書面を各自で保管しましょう。
銀行振込なら通帳に「いつ・誰から・いくら」の記録が残り、贈与の事実を客観的に証明しやすくなります。加えて、毎年必ず同じ時期・同じ金額にするのではなく、贈与の有無や金額をその都度決めることも、定期贈与と見られにくくするうえで重要です。
もらった側が通帳や印鑑を自分で管理しなければ「名義預金」と判断されて相続税の課税対象になる恐れがあるため、管理権の移転も忘れずに意識しておきましょう。
まとめ
贈与税には年間110万円の基礎控除がありますが、毎月10万円の手渡しは年120万円となり、超過分に課税が生じます。
さらに、基礎控除内であっても定期贈与と判断されれば、複数年分の贈与について課税関係が問題になる可能性があります。定期贈与と見られやすいのは、毎年同額・同時期の贈与、契約書や振込記録がないこと、そして証拠が残りにくい手渡しといった要素が重なるケースです。
父親のお気持ちを尊重しつつ、贈与の都度の契約書作成、銀行振込への切り替え、贈与の有無や金額をその都度決めるといった対策を取り入れていきましょう。
出典
国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
執筆者 : 高柳政道
FP1級、CFP、DCプランナー2級
