父が亡くなった後、実家の引き出しから「遺言書」と書かれた封筒が見つかりました。家族は中身を確認しようとしていますが、勝手に開封してもよいのでしょうか?
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
自己判断は危険
一般的に、故人の自宅などで行う遺品整理によって見つかる遺言書は、いわゆる自筆証書遺言といわれるものです。そのため、本記事内における遺言書は特段の記述のない限り、この自筆証書遺言であるものとして話を進めます。
この自筆証書遺言は、その名のとおり、原則として全文、日付、氏名を遺言者本人が自書した遺言書になります。自筆証書遺言はその場で開封してはいけません。未開封のまま家庭裁判所へ提出し、検認を受ける必要があります。
裁判所によると、「検認」とは、「相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに,遺言書の形状,加除訂正の状態,日付,署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして,遺言書の偽造・変造を防止するための手続」です。
そのため、実家の引き出しから見つかったのが、「遺言書」と書かれた封筒であれば、開封前にまずは検認の手続きが必要となります。
勝手に開封するとどうなる?
検認が必要と聞いても、中には「家族で話し合いはすでに済んでいるから」と自己判断で検認を待たず、その場で開封してしまうこともあるかもしれません。
しかし、自筆証書遺言は民法1005条の規定によって、家庭裁判所で検認を受けずに開封したり遺言書に沿った手続きをしたりすると、5万円以下の過料に処されます。
遺言書の検認を受ける際は、家庭裁判所にて印紙代800円と検認済証明書の交付150円、合計で950円の手数料がかかります。また、これ以外にも戸籍謄本の取得や連絡用の郵便切手も必要となります。大きな負担ではなくても、お金がかかることに納得がいかない方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、過料で最大5万円もの支払いが生じるリスクを考えると、この手数料を避けるために検認の手続きを受けないという選択はすべきではないでしょう。そもそも、検認手続きを経ないと相続手続きが進められません。
また、勝手に開封したことで他の相続人から遺言書の偽造や変造などあらぬ疑いをかけられ、いたずらに相続トラブルを発生させるおそれもあります。
自筆証書遺言書保管制度を用いた遺言書は検認不要
2020年7月より、遺言書を自宅などで保管せず法務局にて保管する自筆証書遺言書保管制度が開始され、自筆証書遺言書が法務局に長期保管されている場合があります。この自筆証書遺言書保管制度によって法務局で保管されている遺言書は、自筆証書遺言であっても検認が不要です。
なぜなら、自筆証書遺言書保管制度は法務局が管理する関係上、偽造変造のおそれがなく、保管にあたり形式的な要件を満たしているかどうかも確認されるためです。また参考までに、公正証書という形式で作成されている公正証書遺言も検認が不要となる点も併せて覚えておくと、相続において役に立つかもしれません。
まとめ
もし、実家などから遺品整理中に「遺言書」と書かれた封筒が見つかった場合は、勝手に開封しないようにしましょう。相続手続きを進めるため、急ぎ家庭裁判所の検認を受けることが必要になるからです。
検認くらい……と思われるかもしれませんが、検認を怠ると5万円以下の過料に処されるおそれもあるため注意してください。相続トラブルを避け、遺産分割の手続きを円滑に進めるためにも、これを機に遺言書の扱い方や相続の手続きについて確認しておくとよいかもしれません。
出典
裁判所 遺言書の検認
デジタル庁e-GOV法令検索 民法(明治二十九年法律第八十九号) 第七章 遺言 第四節 遺言の執行 (過料)第千五条
法務省 自筆証書遺言書保管制度 03 遺言書の様式等についての注意事項
執筆者 : 柘植輝
行政書士
