母に「死んだらすぐ引き出して」と言われ、死後“200万円”を引き出し! 夫は違法と言いますが、銀行にバレたら「口座凍結される」ので仕方ないですよね? 口座凍結のタイミングを確認
しかし後から「それは違法だ」と指摘されて、不安になってしまったという人もいるかもしれません。では、引き出してしまったお金は、相続上どのように扱われるのでしょうか。また、使ってしまった場合に問題は生じないのでしょうか。
本記事では、名義人が亡くなったあと、凍結される前に引き出しをすると法的にどう扱われるのか、何がリスクになりうるのかを説明します。また凍結後でも引き出せる制度についても解説するので、参考にしてください。
FP2級、日商簿記2級、宅地建物取引士、証券外務員1種
銀行にて12年勤務し、法人および富裕層向けのコンサルティング営業に従事。特に相続対策や遊休地の有効活用に関する提案を多数手がけ、資産管理・税務・不動産戦略に精通。銀行で培った知識と経験を活かし、収益最大化やリスク管理を考慮した土地活用のアドバイスを得意とする。
現在は、2社の経理を担当しながら、これまでの経験をもとに複数の金融メディアでお金に関する情報を発信。実践的かつ分かりやすい情報提供を心がけている。
死後の引き出しは直ちに「違法」ではないが、リスクがある
亡くなった人の預貯金は、死亡と同時に相続人全員の共有財産になります。一方で、配偶者、直系血族又は同居の親族との間で行われた財産犯については、刑法第244条1項により「その刑を免除する」と定められています。
ただし、死後にキャッシュカードなどで預金を引き出す行為は、銀行との関係や具体的な事情によって評価が変わる可能性もあるため、「親族間だから全く問題ない」とはいえません。
問題になりやすいのは民事上のリスクです。ほかの相続人が「使い込みではないか」と疑えば、返還を求められるトラブルに発展することがあります。
口座はどのタイミングで凍結されるのか
死亡したらすぐに口座が凍結されると考え、慌ててATMに走るケースは珍しいことではありません。確かに、銀行は名義人が死亡したら口座を凍結します。しかし誤解されがちですが、役所に死亡届を提出しても、その情報が銀行へ通知される仕組みにはなっていません。
つまり、役所への届け出をしたからといって口座が凍結されるわけではないのです。
実際に口座が凍結されるのは、銀行が名義人の死亡を知ったタイミングです。通常、主なきっかけは親族からの連絡ですが、営業担当が外回りをしている際に葬儀の看板を見つけたり、新聞の訃報欄で知ったりする場合もあります。
その場合でも、急に凍結するのではなく、まず家族に連絡を取り死亡の事実を確認してから凍結するのが一般的です。
凍結後でも引き出せる「払戻し制度」がある
口座が凍結されると、遺産分割協議が終わり、銀行が凍結解除の手続きをするまで預貯金の払戻し等ができなくなります。
しかし口座が凍結されていたとしても、遺産分割協議が終わる前に引き出せる正規の方法があります。2018年の民法改正により新設され、2019年7月に施行された「相続預貯金の払戻し制度」です。
金融機関の窓口で所定の書類を提出することで、遺産分割協議の成立前でも、1金融機関あたり上限150万円まで単独で払い戻しを受けることができます。計算式は「相続開始時の預金残高×3分の1×法定相続分」で、この金額と150万円のうち低いほうが上限となります。
なお、払戻し制度はあくまで遺産分割前に自分の相続分を先払いで受け取れる制度です。葬儀費用や医療費などに充てた場合でも、後から使途を説明できるよう領収書を残しておくことが重要です。最終的には、遺産分割の中で精算されることになります。
まとめ
死後すぐの引き出しが「即違法」というわけではありませんが、ほかの相続人とのトラブルに発展する可能性もあります。すでに引き出した場合は、領収書をそろえて使途を明確にしておきましょう。
亡くなった人が近しい人であればあるほど、直後は気持ちが動揺し、冷静な判断が難しくなるものです。
しかしながら、口座凍結を恐れるより、落ち着いて正規の手続きを踏む選択が、結果として全ての相続人にとって適切な対応といえるでしょう。
出典
e-Gov法令検索 民法
e-Gov法令検索 刑法
一般社団法人全国銀行協会 ご存知ですか?遺産分割前の相続預金の払戻し制度
執筆者 : 竹下ひとみ
FP2級、日商簿記2級、宅地建物取引士、証券外務員1種

