親が認知症かも…その前に何をすべき? 相続トラブルを防ぐための準備

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親が認知症かも…その前に何をすべき? 相続トラブルを防ぐための準備
「最近、親の物忘れが増えてきた」「通帳や印鑑の管理が心配」……こうした不安は、単なる介護の問題にとどまらず、相続や財産管理に直結します。
 
特に認知症になると、法律上できなくなる手続きが増え、家族でもお金を動かせなくなるケースがあります。認知症と相続の関係について、トラブルを未然に防ぐための具体的な対策を考えてみたいと思います。
柴沼直美

CFP(R)認定者

大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
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親が認知症になったら、預金は引き出せなくなる?

本人の判断能力が低下すると、金融機関は原則として取引に慎重な対応をとります。これは、契約行為には意思能力が必要とされるためです。法務省の考え方でも、判断能力を欠く状態で行われた法律行為は無効となる可能性があります。そのため、家族であっても自由に預金を引き出したり、解約したりできなくなるケースがあります。
 
実際、金融機関は本人保護の観点から口座を凍結または制限することがあります。つまり、「家族だから大丈夫」は通用しない点に注意が必要です。
 

認知症になった後でも相続対策はできる?

認知症と診断され、意思能力がないと判断されると、遺言書の作成や生前贈与などの法的手続きは原則としてできません。遺言についても、作成時に意思能力が必要とされます。このため、対策は「元気なうち」に行うことが極めて重要です。
 
なお、判断能力が低下した後の財産管理については、最高裁判所が所管する成年後見制度の利用が検討されますが、後見人は家庭裁判所の監督下に置かれ、自由な資産運用や贈与は制限されます。
 

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トラブルを防ぐために、今すぐできることは?

現実的な対策は大きく3つあります。
 

(1) 家族での情報共有(財産・口座・不動産の把握)
(2) 遺言書の作成
(3) 任意後見契約の検討

 
特に任意後見契約は、将来判断能力が低下した場合に備え、あらかじめ信頼できる人に財産管理を任せる制度で、法務省が制度概要を公表しています。これにより、本人の意思を反映した管理が可能になります。重要なのは、「問題が起きてから」ではなく「起きる前」に準備することです。
 

相続トラブルはどんな場合に起きている?

相続トラブルは一部の富裕層の問題と思われがちですが、実際はそうではありません。最高裁判所の司法統計によると、遺産分割事件の多くは遺産総額5000万円以下のケースが占めています。つまり、一般的な家庭でも十分に起こり得る問題です。
 
特に認知症が絡むと、「生前の意思が分からない」「特定の家族だけが管理していた」といった不信感が争いの原因になりやすくなります。
 

親族の中での相続に関する話し合いの進め方と注意点

大きなトラブルになる前に、話し合いや決めておくべき事柄や進め方、注意点について、以下のポイントを参考にしてください。
 

(1) 事前準備

財産の全体像(預金口座、不動産、有価証券、保険)
負債の有無(住宅ローン、借入)
本人の意思確認(誰に何を任せたいか、介護・相続の希望)

といったことを中心に進めましょう。
 
重要なことは、本人の意思能力が低下すると契約行為が制限されるため、確認できるうちに整理することです。
 

(2) 混乱を防ぐ合意の進め方

1. 現状共有
財産の一覧を共有し、口座・不動産の所在、誰が管理状況を把握しているかを確認します。感情ではなく「事実を客観的に共有する」ことが重要です。
 
2. 本人の希望確認
「誰に管理を任せたいか」「延命・介護の考え方」「相続の基本的な希望(平等・貢献度に応じたウェイト付けなど)」を確認して必ず記録を残しましょう。
 
3. リスクの整理
口座凍結や契約不可など認知症になった場合の問題や情報格差・不公平感などの相続トラブルの可能性を洗い出しておきます。「起きる可能性のある事実」に限定して話し合い記録しておきましょう。
 
4. 対策の方向性を決めておく
遺言書の作成、任意後見契約の検討、財産管理の役割分担といったポイントで「方向性」を決めておくことが大切です。
 

(3) 役割分担の決め方

整理・確認ができたら、トラブルを防ぐため、役割分担を決めます。
 
財産管理担当(1名)、連絡・記録担当(1名)、全体確認(他の家族)を決めておくとスムーズでしょう。重要なことは、1人に権限を集中させないことです。
 

(4) 記録の残し方

話し合いのあとでは必ず記録を残すようにすることが大切です。後々のトラブル防止に役にたちます。記録事項は、日付・参加者、決定事項と未決事項、可能な範囲で本人の発言内容です。
 

(5) よく見る失敗例

避けるべき失敗例として、親抜きで決める、お金の話を避ける、一度で結論を出そうとする、特定の家族だけが情報を持つといったことが挙げられます。相続トラブルの多くは「情報の非対称」から発生します。
 

まとめ

認知症と相続は密接に関係しており、「まだ大丈夫」と思っている間に対策の機会を逃すケースが少なくありません。重要なのは、
 

・判断能力があるうちに意思を形にする
・親族で情報を共有する
・制度(遺言・任意後見)を正しく使う

という3点です。
 
相続対策は資産の多寡ではなく、「準備の有無」で結果が大きく変わります。将来のトラブルを防ぐためにも、早めの行動が何よりの対策といえるでしょう。
 
親族会議は「結論を出す場」ではなく、将来のトラブルを防ぐための情報共有の場ととらえましょう。完璧を目指す必要はありませんが、「一度も話し合っていない状態」を避けることが、相続対策にとって何より大切になります。
 

出典

法務省:成年後見制度・成年後見登記制度とは
 
執筆者 : 柴沼直美
CFP(R)認定者

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