父が急死し、母が「お葬式代だから」と父の口座から“200万円”を引き出し! 口座凍結前だと「違法・脱税」になりませんか? 急いで現金を引き出すリスクを確認
一方で、「口座凍結の前に引き出して大丈夫?」「脱税や違法にならない?」と不安にもなるのではないでしょうか。結論から言うと、口座凍結前の引き出しはただちに違法や脱税にはあたりませんが、使い道しだいで相続放棄や税金、親族間の関係に影響しかねない点には注意が必要です。
本記事では、口座が凍結されるタイミングや凍結前に引き出すリスク、遺産分割の前でも使える「預貯金の仮払い制度」までを分かりやすく整理します。
FP1級、CFP、DCプランナー2級
【PR】うちの価格いくら?「今」が自宅の売り時かも
【PR】イエウール
契約者が死亡した後に口座は凍結される
まず押さえておきたいのは、銀行口座が凍結されるのは金融機関が名義人の死亡を把握したタイミングだという点です。役所に死亡届を出しただけでは凍結されず、遺族の連絡などで銀行が死亡を把握した段階で初めて手続きが進みます。
つまり、その前であれば、キャッシュカードや暗証番号を使って預金を引き出せる状態のままだということです。ただし、いったん凍結されると入出金も引き落としも全て止まり、解除には相続人全員での相続手続きが必要になります。
凍結を解除して払い戻しを受けるまでには、書類の提出から2~3週間ほどかかるのが一般的です。
口座凍結の前に現金を引き出すことのリスクとは
口座凍結の前に現金を引き出してしまうと、3つのリスクが発生します。
単純承認したとみなされるリスク
まず注意したいのは、預金を引き出して使うと「単純承認」と判断され、相続放棄ができなくなる場合がある点です。
単純承認とは、預金などのプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も含めて全てを引き継ぐ相続の方法を指します。亡くなった人の預金を相続人が私的な用途で使うと、法定単純承認にあたり、あとから相続放棄をすることはできません。
一方、社会通念上で常識的な範囲の葬儀費用に充てた場合は、相続放棄が認められた判例もあります。とは言え、判断は使い道や状況しだいで分かれるため、父に多額の借金が残る可能性があるなら、預金を引き出す前に専門家へ相談すると安心です。
ほかの相続人とのトラブル
亡くなった父の預金は相続人全員で共有する遺産になるため、母が単独で引き出す行為は、使い込みを疑われる原因になりやすいです。
ほかの相続人は、預金を引き出した相続人に対して不当利得返還請求や損害賠償請求を行えると民法で定められています。たとえ葬儀代に充てたつもりでも、使い道を客観的に示せなければ、私的な流用ではないかと疑われかねません。なお、返還を求められる金額は、ほかの相続人の法定相続分が上限となる点も押さえておきたいところです。
トラブルを防ぐために、引き出す前から次の3点を意識しておくと安心です。
・いつ・いくら引き出したかが分かる通帳や明細を残す
・何に使ったかが分かる領収書や請求書を保管する
・引き出す理由と使い道を相続人へ早めに共有する
記録と共有がそろっているだけで、後の説明がぐっと楽になります。
税務署の指摘
税務面については、引き出すタイミングによって扱いが変わることを理解しておくと安心です。
相続税は死亡時点の財産へ課税されるため、死亡後に引き出した200万円はすでに残高に含まれており、引き出し自体が税務上の問題になるわけではありません。一方、死亡前に引き出した現金は「手許現金」として相続財産に計上し、申告に含める必要があります。
亡くなる直前の引き出しであっても相続財産から除外できず、預金の入出金履歴は税務署に把握されています。仮に意図的に申告から外すと、財産隠しと認定されて重いペナルティが科されるおそれがあるため、正直な申告を心がけましょう。
【PR】我が家は今いくら?最新の相場を無料で簡単チェック!
【PR】イエウール
遺産分割前に利用できる「預貯金の仮払い」とは
葬儀費用や当面の生活費に困ったときは、「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」を活用すると安心です。
この制度は令和元年7月から始まり、遺産分割の協議が終わる前でも、相続人が単独で、亡くなった人の預金を一定額まで払い戻せる仕組みです。単独で引き出せる上限は、死亡時の残高の3分の1に自身の法定相続分を掛けた額で、同一金融機関からの払い戻しは150万円が上限です。
例えば、残高1200万円の口座で妻の法定相続分が2分の1なら、引き出せる金額は計算上200万円となり、同一金融機関では上限の150万円まで払い戻しを受けられます。ほかの相続人の同意は不要なので、葬儀代を正攻法の手続きで確保でき、私的な流用を疑われる心配も避けられます。
ただし、受け取った預金を相続人自身の生活費に充てたりすると、単純承認に当たる場合があるため、使い道には引き続き気を配る必要があります。
まとめ
父の死亡後、口座凍結の前に現金を引き出しても、ただちに違法や脱税になるとは考えにくいです。死亡後に引き出した200万円は死亡時点の残高にすでに含まれており、相続税の計算上で新たな問題が生じるわけではないからです。
ただし、引き出した預金を私的に使うと単純承認とみなされて相続放棄ができなくなるほか、ほかの相続人との対立や税務署からの指摘を招くおそれもあります。安全に進めるには、いつ・いくら引き出したかの記録と領収書を残し、使い道を相続人へ共有しておく対応が欠かせません。
葬儀代など差し迫った資金が必要なら、「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」を使い、金融機関ごとに最大150万円まで正攻法の手続きで受け取る方法が安心です。判断に迷うときは、税理士など専門家へ早めに相談しておくと心強いでしょう。
執筆者 : 高柳政道
FP1級、CFP、DCプランナー2級

