“隣家の知人”の死後、奥さんから「銀行には黙ってて」と口止めが…「口座凍結で生活費が下ろせなくなる」とのことですが、本当にバレないのでしょうか? 銀行が「死亡を知る」意外なルート
そもそも銀行は、遺族が連絡をしなくても名義人の死亡を把握できるものなのでしょうか。本記事で、銀行が預金者の口座を凍結するまでの経緯や対策を解説します。
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なぜ「銀行には黙っていて」と言いたくなるのか?
お隣の奥さまが言うには、「銀行に知られると口座が凍結されてしまい、葬儀代もこれからの生活費も一切下ろせなくなって生活が行き詰まる」とのこと。
確かに、残された家族にとって、日々の買い物や当面の支払いに使う現金が手元になくなるのは死活問題です。
しかし、いくらお隣さんの困りごととはいえ、銀行に対して「黙秘」を貫くことは正しい対処法なのでしょうか。凍結を恐れるあまり、隠蔽(いんぺい)しようとしてしまう遺族の心理は理解できますが、そこには大きなリスクが潜んでいます。
口座凍結のメカニズムと、銀行が「死亡を知る」意外なルート
人が亡くなったとき、役所に死亡届を出したからといって、その情報が自動的に各金融機関に通知されるシステムは2026年時点の日本にはありません。それでは、なぜ「銀行に黙っていても口座が凍結された」という事態が起こるのでしょうか。
銀行が名義人の死亡を把握するルートは、主に次のような独自の網の目によるものです。
(1)遺族や関係者からの問い合わせ・手続き
最も多いのは、家族が相続の手続きについて相談に訪れたり、電話で問い合わせたりするケースです。
(2)地域のネットワークや営業活動
地方銀行や信用金庫など、地域密着型の金融機関の場合、渉外担当者が地域のうわさ話や葬儀の看板、お悔やみ欄などを確認して把握することがあります。
(3)口座の不自然な動き
急にATMから限度額いっぱいの引き出しが連日行われたり、長年続いていた定期的な取引がストップしたりすると、銀行のシステムが異常を検知し、確認のために口座を一時制限することがあります。
そもそも、銀行が口座を凍結するのは、「遺族を困らせるため」ではありません。民法上、人が死亡した瞬間にその人の財産はすべての「相続人の共有財産(遺産)」となります。
遺産分割協議が調う前に、一部の遺族が勝手にお金を引き出して使い込んでしまうと、ほかの相続人の権利を侵害し、大きな親族間トラブルに発展しかねません。銀行は、「遺産という大切な権利を守るため」のセーフティネットとして、口座を凍結する義務を負っているのです。
「凍結後でもお金を下ろす」2つのルート
口座が凍結されたら、本当に1円も下ろせなくなるのでしょうか。結論から言えば、それは過去の話です。法務省や金融庁の主導により、2019年7月から「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」が施行されており、凍結後であっても一定の枠内であれば、当面の生活費や葬儀費用を正当に引き出すことが可能になっています。
この制度には、大きく分けて2つのルートが用意されています。
(1)家庭裁判所の判断を経ずに、直接銀行の窓口で引き出す方法
ほかの相続人の同意がなくても、単独で金融機関の窓口に請求できる最も手軽な方法です。引き出せる金額には以下の計算式による上限があります。
【計算式】死亡時の預金残高×3分の1×請求する相続人の法定相続分
ただし、利用者の利便性と金融機関の負担のバランスを考慮し、「同一の金融機関ごとに150万円まで」という上限が法務省令によって定められています。例えば、亡くなった人の預金残高が800万円で、配偶者(法定相続分2分の1)が請求する場合「800万円×3分の1×2分の1=約130万円」となり、150万円以下なので130万円まで引き出せます。
(2)家庭裁判所に申し立てをして引き出す方法
すでに遺産分割の調停や審判が家庭裁判所に申し立てられている場合、家事事件手続法に基づき、裁判所の許可を得て引き出す方法です。こちらは「150万円」という一律の上限はなく、裁判所が「生活費の支払いのために必要」と認めた額について、ほかの相続人の利益を害さない範囲で引き出しが認められます。
これらの制度を利用するには、亡くなった人の出生から死亡までの戸籍謄本や、請求する人の戸籍謄本、家庭裁判所の審判書謄本など、相続人であることを証明する書類の提出が必要ですが、堂々とお金を確保することができます。
事前の備えが重要
もし銀行に黙ったまま、他人のキャッシュカードを使ってATMからお金を引き出すと、のちにほかの相続人から「不当利得」として返還を求められたり、最悪の場合は窃盗罪や詐欺罪といった法的トラブルに発展したりするリスクがあります。
こうしたトラブルを未然に防ぐためにも、元気なうちから夫婦間で「万一のときの当面の現金」を各自の名義の口座に分散して保有しておく、あるいは遺言書や家族信託などの生前対策を立てておくことが重要です。
まとめ
人が死亡すると銀行口座が凍結されて、葬儀代や生活費に困るということもあるでしょう。銀行はさまざまな方法で名義人の死亡を把握し、相続人が正式に決まって相続手続きが始まるまで、財産を守る目的で口座を凍結します。
銀行への口止めを頼まれた場合は、「今は法改正されて、銀行口座が凍結されても葬儀代や生活費として上限150万円までなら正当に引き出せる制度(遺産分割前の仮払い制度)があるから大丈夫ですよ」と、正しい情報を教えて安心させてあげることが望ましいでしょう。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
