相続から財産管理まで、オールマイティに活躍する家族信託について
配信日: 2020.06.07
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
家族信託って何?
信託とは、一言でいえば財産を託すことです。信託のなかでも、特に家族や近しい親族などに財産を託すことは、俗に家族信託と呼ばれています。
●家族信託の仕組み
信託と聞くと小難しく思われるかもしれませんが、その仕組み自体は非常に単純です。登場人物は、以下のように大きく3者に分けることができます。
・委託者(財産の管理をお願いする人)
・受託者(財産の管理をする人)
・受益者(財産の管理によって発生する利益を受ける人)
例えば、高齢の父親が息子の将来のために、信頼できる親戚の叔父さんに財産を託すパターンを想定してみましょう。
この場合、父親が委託者であり、親戚の叔父さんが受託者、息子が受益者となります。
家族信託によって形式上、財産は受託者へ所有権が移転しますが、受託者はその財産を自由に使えるわけではありません。あくまでも家族信託の内容に基づく目的に沿って、受益者のために財産を管理します。
家族信託はどのような場面で利用されているの?
家族信託が利用される理由に「信用できる家族や親戚に自らの意思で財産の管理をお願いできるから」というものがあります。また、財産管理と似ている制度に後見制度がありますが、こちらは厳格な運用がなされており、家族信託のような柔軟性に欠けるという欠点があります。
こうしたことから、信用できる人に財産管理を委託したいという場面で、家族信託が利用され始めているのです。
では、具体的に利用されているパターンを3つご紹介します。
(1)認知症対策
人は加齢により判断能力が低下したり、認知症を発症したりして、自分の財産を管理できなくなってしまうことがあります。そうしたことを防ぐため、意思や判断能力がしっかりしているうちに家族信託を行い、信頼できる家族や親戚に財産の管理を任せる方が増えています。
(2)障がいのある子の生活保障
自分が亡くなったあと、障害のある子が生活していけるか心配というような場合、親戚の叔父や叔母に財産の管理をお願いし、子の将来を守ろうという事例もあります。
(3)孫への生前贈与
相続税を節税するため、生前から少しずつ孫に財産を贈与したいが浪費が心配、という場合にも家族信託が利用されることがあります。
この場合、財産をもっている本人を委託者兼受益者とし、信頼できる親戚の方を受託者と設定します。そして、毎年贈与税が発生しない範囲で受益者としての権利を孫に渡していくことで、浪費を防ぎながら生前贈与していくことができます。
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家族信託に注意点はあるの?
家族信託で一番の注意点は、誰を受託者とするかです。家族信託は、10年以上の長きにわたって行われることも少なくありません。そのため、本当に信頼できる身内を受託者としなければ、家族信託としての目的を果たせない可能性があります。
また、家族信託はあくまでも財産管理の手法であり、受益者の身の回りの身上監護については範囲外になるのが基本です。その他にも注意点がいくつかあるため、できれば専門家のサポートを受けながら行いたいところです。
まとめ
家族信託は、大切な財産を信頼できる家族や近しい親戚に任せることができる、今注目の財産管理の手法です。家族信託は、内容を柔軟に決められる反面、受託者について慎重に検討する必要があります。家族信託については、専門家と相談しながら決めていくことをおすすめします。
[出典]一般社団法人信託協会「信託について」
執筆者:柘植輝
行政書士