更新日: 2020.08.29 遺言書

エンディングノートにはどんな役割があるの?その活用事例とは

エンディングノートにはどんな役割があるの?その活用事例とは
「終活」という言葉がメディアで発信されるようになってから10年ほど経ちます。当初は、亡き後のための準備とあおられた印象もありますが、最近では、残された人生をどう生きるかという点にフォーカスされ、意味合いも取り組み方も変わってきました。
 
エンディングノートについても、伝えるべき親世代と知るべき子世代のコミュニケーションツールとして、上手に活用されている事例が多くあります。購入したまま、記入せずに眠っているエンディングノートはありませんか。
大竹麻佐子

執筆者:大竹麻佐子(おおたけまさこ)

CFP🄬認定者・相続診断士

 
ゆめプランニング笑顔相続・FP事務所 代表
証券会社、銀行、保険会社など金融機関での業務を経て現在に至る。家計管理に役立つのでは、との思いからAFP取得(2000年)、日本FP協会東京支部主催地域イベントへの参加をきっかけにFP活動開始(2011年)、日本FP協会 「くらしとお金のFP相談室」相談員(2016年)。
 
「目の前にいるその人が、より豊かに、よりよくなるために、今できること」を考え、サポートし続ける。
 
従業員向け「50代からのライフデザイン」セミナーや個人相談、生活するの観点から学ぶ「お金の基礎知識」講座など開催。
 
2人の男子(高3と小6)の母。品川区在住
ゆめプランニング笑顔相続・FP事務所 代表 https://fp-yumeplan.com/

終活って何?

「終活」は、言葉としては広く浸透し、映画や流行語大賞など話題になることもしばしばです。ただ、意味をきちんと理解されている方は、少ないかもしれません。また、時代とともに変化しつつあることも事実です。
 
以前は、「人生の終わりのための活動」として、葬儀をどうするかとか、お墓の事前購入といったことが主なテーマだったように思います。海洋散骨や樹木葬など、これまでにない葬送のあり方が広く知られるようになったことは、よい結果の一つかもしれません。
 
最近では、「人生の終わりに向けた活動」と考える方が増えてきました。人生100年時代、最期まで「自分らしく生きる」ことを大切に考え、活動している方が増えています。
 

エンディングノートの効能

終活のツールとして話題になった「エンディングノート」。発行する出版社や団体により名称(タイトル)はさまざまですが、いずれも数万から数百万部突破というベストセラーとなり、「自宅に数冊あります」といった声も頻繁に耳にします。
 
エンディングノートとは、これまでの人生を振り返り、今を見つめ、今後の希望や伝えたいことを書き記すものです。遺言のように、法的効力はありませんが、想いを伝える、遺すという点で、お勧めしています。エンディングノートには、以下のような効能があります。

これまでの人生を振り返る

どこで生まれ、どんな環境で育ち、どんな人との出会いがあったのか……そうしたことを思い出すことで、これまでの人生に感謝し、やりたかったことに再チャレンジする、もう一度会いたい人と連絡をとってみるなど、今だからできることが発見できる。
 

現在の状況を書き記す

かかりつけ医の名称、取引銀行、お世話になっている人や団体を記載することで、もしものときに家族が慌てないで済む。
 

想いと財産を引き継ぐ

財産についての想いや承継方法の希望を記載することで、「争族」を避けることができる場合もある。遺言の形式や遺言の作成費用を気にせず相続対策ができる。
 

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気になる親のこと、エンディングノートは子世代にとっても大切

親子でも、親子だからこそ、なかなか伝えにくい、聞きにくいことがあります。
 
「相続対策」「認知症になったときのこと」「介護状態になったときのこと」「お金のこと」「葬儀の希望」など、十分にコミュニケーションがとれていれば問題ないのですが、現実は気になりつつも、先延ばしにしてしまうケースが多く見受けられます。
 

エンディングノートの活用事例

認知症の症状がみられる女性

年齢とともにもの忘れや気分にムラが出てくることは、受け入れざるを得ないでしょう。ただ、「会話をすること」「楽しいと思える心の状態をつくること」により、進行を遅らせることは可能といわれています。
 
この女性の場合、エンディングノートの記入はほんの数ページですが、数十年前の家族写真を貼っています。すでに他界したご主人と離れて住む長男、長女が笑顔で並んでいます。朝食のメニューは忘れても、楽しかった家族の思い出話は冗舌です。
 

家族のコミュニケーションのツール

高齢になると、書くことがおっくうになります。
 
エンディングノートを書きたいと思っていても、実際にはなかなか書き進められないものです。お母さまが話したことを書くのは長女です。記入することが目的ではなく、コミュニケーションの手段として活用しているようです。
 
事実だけでなく、背景や経緯を聞くことで、今だから話せることや理解できることもあるとのことです。
 

お世話になった方(連絡したい方)の名前と連絡先

先日、知らない方から電話に留守番メッセージが入っていたそうです。聞くと、同じ趣味の会で活動していた方が亡くなり、その息子さんからでした。エンディングノートに名前と連絡先が書いてあったからとのこと。
 
息子さんにとっては、お母さまが楽しい時間を仲間と一緒に過ごしていたことを知る機会となり、連絡を受けた方も、大切に思ってくれていたことが分かり、お互いに感謝の言葉が尽きなかったという話を聞きました。
 

気になる親のこと、子に伝えたいことの実現と気をつけたいこと

このほかにも、元気なときだからこそできることがたくさんあります。理想的なのは、家族で十分にコミュニケーションがとれる状態をつくることです。
 
認知症や介護状態になった場合の「お金」は、誰がどのように工面するのか、準備はあるのか、保険での備えはあるのか、などを知ることで準備することも可能です。
 
気にしつつも先送りにすることで、選択肢がなくなり、トラブルに発展するケースも多くみられます。一つの手段として、エンディングノートは有効ではないでしょうか。
 
なお、複雑な事情や特別な想いをエンディングノートに書くのは難しく、法的効力がないために想いが届けられないこともあるでしょう。形式を整えた遺言の作成が必要な場合や、税理士による相続税の準備などが必要な場合もありますので、気になることがあれば専門家に相談してみましょう。
 
執筆者:大竹麻佐子
CFP🄬認定者・相続診断士


 

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