更新日: 2020.12.10 相続税

相続のキホン! マイホームの評価額が80%減になる「小規模宅地の特例」とは?

相続のキホン! マイホームの評価額が80%減になる「小規模宅地の特例」とは?
一定の要件を満たした宅地には「小規模宅地の特例」が適用され、宅地の相続税評価額が最大80%割引になります。親世代の持ち家率は高いので、子世代にとってこの特例の知識は必須です。節税効果絶大のこの特例についてポイントをざっくり押さえておきましょう。
新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

建物・宅地の評価方法の基本

自ら使用する居住用や事業用の建物の相続税評価額は、購入金額や時価ではなく固定資産税評価となります。固定資産税評価額の目安は公示地価の70%程度です。正確な金額は、市区町村の固定資産台帳や納税通知書で確認できます。
 
宅地(住居や事務所の敷地)の相続税評価額も購入金額ではなく、路線価評価額です(路線価方式)。路線価は1平方メートル当たりの路線価(道路ごとの価格)に地面積を掛けて求め、その土地の形や奥行きの長狭、間口の広さなどを考慮して補正を行います。目安は時価の80%程度の水準です。
 
なお、路線価が定められていない土地は、倍率方式(土地の固定資産税評価額×倍率)になります。一般的には市街地は路線価方式、それ以外は倍率方式で評価されます。
 

小規模宅地の特例とは

小規模宅地の特例とは、亡くなった方(被相続人)が居住していた土地や事業をしていた土地を、一定の要件を満たした生計を一にする親族が相続した場合に、申請により土地の評価額を50%または80%減してもらえる制度です。
 
このような優遇策がとられている背景には、生活の基盤である土地を納税のために売却せずに済むようにするためです。
 
この特例を受けるためには一定の要件があります。対象となる宅地の限度面積と減額割合、適用要件の概要は以下のとおりです。なお、限度面積を超えた場合、限度面積を超えた分のみ特例の対象となりません。
 
(1)特定事業用宅地等
主に被相続人が商売のために使っていた土地で、400平方メートルまで土地の評価額が80%減になります。相続した人が事業を引き継いで、申告期限までその土地を所有することなどが必要です。
 
(2)特定同族会社事業用宅地等
同族会社の事業用に貸し付けていた宅地(オーナー社長が自分の土地を自分の会社に貸し付けている場合)は、400平方メートルまで土地の評価額が80%減になります。相続税の申告期限においてその法人の役員であること、その宅地等を相続税の申告期限まで所有していることが必要です。
 
(3)特定居住用宅地等
主に被相続人が居住していた宅地で、330平方メートルまで土地の評価額が80%減になります。
 
配偶者が相続する場合には条件がありません。同居していた親族が相続する場合は引き続き相続税の申告期限までその建物に居住し、かつ、その宅地等を申告期限まで所有する必要があります。
 
被相続人に配偶者もなく、同居していた親族もない場合は、相続開始3年以内に持ち家のない一定の別居親族が取得し、申告期限まで所有する必要があります。
 
(4)貸付事業用宅地等
主に被相続人が経営していた賃貸アパートなどの宅地で、200平方メートルまで土地の評価額が50%減になります。相続人が事業を引き継いで申告期限まで貸付事業を継続することなどが必要です。
 
なお、貸付事業用宅地等の特例を受けない場合に限り、特定居住用宅地等と特定事業用宅地等両方の限度面積の合計730平方メートルまで80%減額の適用が可能です。
 

【PR】「相続の手続き何にからやれば...」それならプロにおまかせ!年間7万件突破まずは無料診断

小規模宅地の絶大な節税効果

例えば、マイホームの土地の評価額(200平方メートル)が4800万円、建物の評価額が2400万円のケースを考えてみましょう。
 
小規模宅地の特例を使わない場合、マイホームの相続税評価額は7200万円ですが、特例を利用すると3360万円と大幅に減額になります。なぜなら、土地の評価額が80%減の960万円になるからです。
 
相続税の基礎控除額は、相続人がいれば最低でも3600万円(3000万円+法定相続人の数×600万円)ありますので、このケースでは相続税はゼロになります(他に相続財産がない場合)。
 
また、亡くなった方(被相続人)が経営していた賃貸アパートの事業を引き継いだ場合、敷地(200平方メートル)の評価額が1億円のケースでは、小規模宅地の特例の利用で、50%減の5000万円で済みます。このように小規模宅地の特例は節税効果絶大です。
 

手続きを忘れずに

この特例の適用を受けるためには、相続税の申告書に、特例を受けようとする旨を記載し、小規模宅地等に関わる計算の明細書や遺産分割協議書の写しなど一定の書類を添付する必要があります。
 
相続税は、相続財産から基礎控除額(3000万円+法定相続人の数×600万円)を引いた分にかかります。地価の高い都市の宅地を相続する人は、多くの場合、この特例により相続税を払わずに済みます。忘れずに申告しましょう。
 
(注)小規模宅地の特例はよく改正されます。適用条件も細かいので、適用に当たっては税務署等に必ずご確認ください。
 
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。


 

PR
FF_お金にまつわる悩み・疑問 ライターさん募集