更新日: 2021.01.20 遺言書
死後の遺言書の紛失や破棄を防ぎたい!法務局で遺言を保管してくれる制度って?
これまで自筆証書遺言は自宅で保管されている方が多かったのですが、遺言書が見つからない、破棄されてしまうなどの問題が起きていました。こういった事態を防ぐためにも、また最期の思いを遺すためにも、この遺言書の保管制度は有効的です。
どのような仕組みなのか確認していきましょう。
執筆者:藤井亜也(ふじい あや)
株式会社COCO PLAN (ココプラン) 代表取締役社長
教育カウンセラー、派遣コーディネーター、秘書等、様々な職種を経験した後、マネーセンスを磨きたいと思い、ファイナンシャルプランナーの資格を取得。
「お金の不安を解決するサポートがしたい」、「夢の実現を応援したい」という想いからCOCO PLANを設立。
独立系FPとして個別相談、マネーセミナー、執筆業など幅広く活動中。
<保有資格>
2級ファイナンシャル・プランニング技能士、ファイナンシャルプランナー(AFP) 、住宅ローンアドバイザー、プライベートバンカー、相続診断士、日本心理学会認定心理士、生理人類学士、秘書技能検定、日商簿記検定、(産業カウンセラー、心理相談員)
<著書>
「今からはじめる 理想のセカンドライフを叶えるお金の作り方 (女性FPが作ったやさしい教科書)」※2019年1月15日発売予定
遺言書の保管制度とは
これまで、自筆証書遺言は自身が所有する資産等を誰に相続させるかを記し、自宅等で保管していました。しかし、遺言書の保管場所を忘れてしまったり、故意に破棄されてしまったりとトラブルは多かったのです。
こういったトラブルを受け、確実に遺言書を遺すために、法務局で保管をしてくれる制度が開始されました。
亡くなられた後は相続人が法務局に対して交付・閲覧の請求を行うと、相続人に法務局から「遺言書情報証明書」が送られ、遺言書を閲覧できます。通常の自筆証書遺言の場合、家庭裁判所での検認が必要なのですが、法務局で保管されていた遺言書の場合、この検認も不要です。
また相続税は、相続があったことを知った日の翌日から10カ月以内に納付を行わなければなりません。検認がないことで、時間が短縮でき、遺言の手続きも円滑に行うことができます。
保管申請の流れ
遺言書の保管申請は、以下の流れとなります。
(1)遺言書を作成する
(2)保管所を決める
遺言者の住所地、遺言者の本籍地、遺言者が所有する不動産の所在地、のいずれかを管轄する遺言書保管所
(3)申請書を作成する(法務局のホームページに様式があります)
(4)保管の申請予約をする
(5)保管の申請をする
遺言書(とじたり封をしていない物)、申請書、添付書類(住民票の写し)、本人確認書類(マイナンバーカードや運転免許証などの顔写真付きの身分証明書)、手数料(3900円)
(6)保管証を受け取る
いくつかの作業はあるものの、遺言書を用意して必要書類を役所に取りに行き、保管申請の予約をして申請をするだけです。費用も低額で済みますし、申請期間も短くて済みます。申請様式はホームページからダウンロードもできますし、法務局でも受け取ることができます。
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公正証書遺言と比べると
最も安全な遺言書として公正証書遺言があります。公正証書遺言はご自身が書くのではなく、遺言の内容を公証人に伝えて、それをもとに文書が作成されます。公正証書遺言は公正証書として公証役場に保管されます。こちらも家庭裁判所での検認は不要です。
自筆証書遺言との違いとして、証人が必要なこと、費用がかかることがあげられます。
まず、証人です。公正証書を作成するには、証人2人以上の立ち会いが必要です。知人であれば無料でお願いすることもできますが、公証役場で証人の紹介を受ける場合は1人6000円程度の報酬を支払います(公証役場により異なります)。
また、作成手数料や必要書類の交付手数料、専門家報酬などの費用がかかるため、自筆証書遺言と比べて費用が高くなります。しかし、遺言の内容は無効になる可能性が低いという点で、より安全な遺言書であることに変わりはありません。
これまで、自筆証書遺言には保管制度がなかったため、より確実で安全な遺言として公正証書遺言があげられましたが、自筆証書遺言が保管され検認も不要となったことで選択肢が広がったのではないでしょうか。
世の中がこのような状況だからこそ
これまで、遺言書はご高齢になってから、病気などが心配になってから準備する方が多かったかと思います。しかし、新型コロナウイルスの感染が拡大する中、さまざまな状況を想定して備えておくことは、今の時期に必要なことかもしれません。
自筆証書遺言の保管制度が開始されたことにより、多くの方が自身の遺言書を安全に保管できるようになりました。この制度が、大切な資産、自身の思いを遺せることにつながればと思います。
執筆者:藤井亜也
株式会社COCO PLAN (ココプラン) 代表取締役社長