【夏休みに海外旅行に行く人の疑問】 海外で入院!健康保険から給付はありますか?
配信日: 2018.07.21 更新日: 2019.05.17
日本国外では健康保険証は使えませんが、海外療養費申請をして一部医療費の払い戻しが受けられることがあります。
Text:林智慮(はやし ちりよ)
CFP(R)認定者
確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。
どんな場合に給付を受けられるの?
海外療養費制度は、海外旅行や海外赴任中に『急な病気やケガなどでやむを得ず現地の医療機関で診療を受けた場合』に申請することで、一部医療費の払い戻しが受けられる制度です。
支給対象には範囲があり、日本国内で保険診療として認められている医療行為に限られます。
よって、その治療が日本で保険適用外の治療(美容整形、インプラントなど)や、適用外の薬が出された場合は、給付の対象になりません。また、治療目的で海外へ行き診療を受けた場合も、支給対象となりません。日本でできない診療を受けた場合も、保険給付の対象にはなりません。
例えば、日本で受けられる手術でもできる医師が少なく、順番を待っていられないため海外で手術を受けることや、日本で受けられない最新の治療を海外で受けるなどは、給付の対象にはなりません。
あくまでも、急な病気やケガが対象で、やむを得ず現地の医療機関に掛からなければならなくなった場合です。
該当すれば、支払った分全部返ってくるの?
申請の診療に対し、協会けんぽが治療の詳細を調査し、同じ診療を日本の医療機関でした場合いくら掛かるのか計算し、治療費を決定します。実際に支払った額が低いときはその金額を治療費とします。
そこから、自己負担相当額を差し引いた額を療養費として支給します。
ただし、日本と海外では医療体制や治療方法が違うため、実際に海外で支払った金額が多くなることもあり、実際に払った金額から自己負担額を引いた金額より、支給金額がかなり少なくなることがあります。
例えば、現地で50万円払いましたが、同じ診療を日本で受けたら30万円で受けられるとすると、治療費は30万円となり、そのうちの自己負担3割(原則)を引いた7割分の21万円が支給されます。
また、現地では15万円を支払ったけれど、日本で同じ内容の治療を受けると20万かかる場合、治療費は15万円となり、そのうちの7割分の10.5万円が支給されます。
外貨で支払いされた医療費は、支給決定日の為替レートを用いて円に換算します。
どんな手続きをすれば良いの?
協会けんぽのHPに申請に必要な申請書、添付書類が記されていますし、各書類は印刷できます。
例えば医科の場合、次の書類を用意します。
・海外療養費支給申請書
・診療内容明細書・領収明細書・現地で支払った領収書の原本(以上の3点は、現地の医師の記入・署名が必要)
・各添付書類の翻訳文(翻訳文には翻訳者が署名、住所、電話番号を明記)
・受診者の海外渡航期間がわかる書類(パスポートや航空チケットなどのコピー)
・同意書(現地の医療機関に具体的な診療内容を照会するため、療養を受けた人の同意書が必要)
歯科の場合、ケガや第3者によるケガや病気の場合、臓器移植による場合等、必要な書類がそれぞれ違います。どれも、協会けんぽのHPで印刷できます。
どこに提出すればいいの?
海外療養費支給申請書は、協会けんぽ各支部ではなく、協会けんぽ 神奈川支部 海外療養費グループに提出します。神奈川支部が審査を行います。
(※通常の立て替え払いや、治療用装具作成などの「療養費」は各支部に提出します)
海外療養費を各支部に提出した場合、神奈川支部に回送されます。
海外療養費の審査には数カ月間掛かります。その後支給額が決定します。
受給時に、海外への直接送金はできません。例えば海外赴任の人が療養費の請求をした場合、給付金は海外への直接送金ができませんので、日本にいる家族か事業主に受け取りを委任することになります。
そして、申請には時効があります。海外で治療費の支払いをした日から2年を過ぎると。時効により申請ができなくなってしまいます。ご注意ください。
国民健康保険、組合健保でも同様の制度があります。
詳細は、加入の健康保険へお問い合わせいただくか、HPをご覧ください。
Text:林 智慮(はやし ちりよ)
CFP(R)認定者
相続診断士
終活カウンセラー
確定拠出年金相談ねっと認定FP