更新日: 2019.03.01 自動車保険
自転車保険には焦って加入すべきでないワケ
ただ、自転車保険は改めて加入しなくても問題ないというケースも多く、あわてて加入すると保険料をムダにするおそれがあります。
そこで、今回は自転車保険の加入を考えている人にとって役立つ知識を提供します。
執筆者:横山琢哉(よこやま たくや)
ファイナンシャルプランナー(日本FP協会 AFP認定者)
フリーランスライター
保険を得意ジャンルとするFP・フリーライター。
代理店時代、医療保険不要論に悩まされた結果、1本も保険を売らずに1年で辞めた経験を持つ。
FPとして、中立公正な立場から保険選びをサポートしています。
義務化されているのは賠償責任保険のみ
一般に自転車(向け)保険と呼ばれている商品は、以下の4種類の補償の組み合わせで構成されています。
・他人を死亡またはケガをさせてしまったときの賠償責任保険
・自身がケガをしたときの治療費や死亡・後遺障害の補償
・盗難の補償(一部の商品のみ)
・ロードサービス(一部の商品のみ)
自治体が義務化しているのは、これらのうち他人への賠償責任保険です。自身のケガや盗難に備える補償は対象としていません。
一例を挙げると、兵庫県で2015年4月から施行された「自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」では、第13条で次のように定めています。
「自転車利用者は、自転車損害賠償保険等(その自転車の利用に係る事故により生じた他人の生命又は身体の損害を填補することができる保険又は共済をいう。以下同じ)に加入しなければならない。(以下省略)」
この条文にある「他人の生命又は身体の損害を填補」というところがポイントです。
もともと自転車保険の加入が義務化されたのは、自転車事故が増加したことや賠償金額が高額化したことが主な理由です。9000万円を超える賠償金の支払い命令が出たこともありますので、被害者を救済することが目的と考えて良いでしょう。
賠償責任は未成年者が起こした事故であっても生じるので、お子さんがいる家庭は特にしっかり備えておく必要があります。
必要な補償にはすでに加入している可能性が高い
自転車保険として販売されている商品に組み込まれている他人への賠償責任保険は「個人賠償責任保険」(商品によって名称は異なります)と言います。
個人賠償責任保険は日常生活において他人にケガをさせたり、他人のものを壊したりして賠償責任を負ったときに役立つ保険です。そのため、自転車を利用していて生じた賠償責任も補償の対象となります。
この保険は、他の保険に特約として付加するのが基本です。火災保険や自動車保険の特約として用意されていることが多いので、すでに加入済みである可能性があります。
賃貸住宅に住んでいるなら、家財に対する火災保険とセットで契約していることが一般的です。契約書などを確認してみましょう。クレジットカードの付帯保険として加入していることもあります。
また、個人賠償責任保険は補償される人の範囲が広くなっています。一般的には以下の人が対象になります。
・本人
・本人の配偶者
・本人または配偶者の同居の親族
・生計を一にする別居の未婚(婚姻歴がない)の子
そのため、自身の加入している保険には個人賠償責任保険が付加されていなかったとしても、家族の誰かが加入していれば補償の対象になります。そのようなときは、改めて自転車保険に加入する必要はありません。
もちろん、自身がケガをしたときの補償や盗難の補償がほしいという場合は加入を検討してください。
補償が不十分な自転車保険に注意!
自転車向け保険として販売されている商品の中には、補償が不十分な商品があるので注意してください。被害者に対する補償について「死亡」と「重度の後遺障害」を中心に補償している商品もあります。
そのため、相手に大ケガを負わせてしまったとしても、重度の後遺障害が残っていない場合はわずかな見舞金しか支払われません。これでは保険に加入している価値が薄いですよね。
自転車保険を選ぶときは、他人への賠償責任補償の内容を重視してください。
被害者になったときに役立つかも
この記事を読んでくださっている人であれば、加害者になることよりも、被害者になるかもしれない不安のほうが大きいのではないでしょうか。
筆者も東京都内を歩いているときに、歩道を走行してきた自転車にぶつかりそうになってヒヤリとした経験があります。
仮に被害者となったとき、加害者が高額な賠償金を払えないと言ってきたとします。でも、加害者が個人賠償責任保険に加入していれば、その存在を加害者に教えてあげることで、そこから賠償金を支払わせることができるかもしれません。
加害者が個人賠償責任保険のことを知っても知らなくても、賠償責任が消えるわけではないので、個人賠償責任保険について教えてあげることは加害者を助ける結果にもつながります。加害者にもメリットのあることを教えるのは気がすすまないかもしれませんが、賠償金を支払ってもらえないよりはマシではないでしょうか。
万が一のときのために、このような使い方も覚えておきましょう。
出典:兵庫県公式ウェブサイト 「自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」について
執筆者:横山琢哉(よこやま たくや)
ファイナンシャルプランナー(日本FP協会 AFP認定者)
フリーランスライター