更新日: 2021.06.25 その他保険

65歳以上の介護保険料改定で6000円を超え! 住む場所によっても異なる?

執筆者 : 新美昌也

65歳以上の介護保険料改定で6000円を超え! 住む場所によっても異なる?
介護保険料のうち65歳以上の人が支払う「第1号保険料」は、市区町村ごとに3年に1度見直されます。2021年4月に全国で改定されました。厚生労働省の資料(5月14日公表)(※)によると、全国の月額の平均は6014円で、前回(第7期)の保険料5869円を145円上回りました。
新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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介護保険料の仕組み

介護保険制度の財源は、公費が50%、保険料が50%となっています。保険料は、40~64歳の被保険者が27%、65歳以上の被保険者が23%負担します。
 
65歳以上の被保険者の介護保険料基準額は、その市区町村で必要となる介護サービス費の見込み総額の23%を、その市区町村における65歳以上の被保険者の人数で割って求めます。そして、ここに所得段階に応じた率を掛けて、各人が実際に支払う保険料が決まります。
 
3年ごとに見直される65歳以上の人が支払う「第1号保険料」(全国平均)は、年々増加しており、介護保険制度がスタートした2000年(第1期)は2911円でしたが、2021年(第8期)には、6014円と初めて6000円を超えました。今後も保険料は増え続け、団塊の世代が75歳以上になる2025年度には約8200円、2040年度にはおよそ9000円に達すると推計されています。
 
保険料の支払いは、年金が18万円以上の方は、原則として年金から天引きされます。18万円未満の方は、納付書または口座振替により納付します。
 
(出典:厚生労働省「第8期介護保険事業計画期間における介護保険の第1号保険料及びサービス見込み量等について」(※))
 

住む場所で6500円の差

「第1号保険料」は住む場所の高齢化率や要介護認定率、利用する介護サービスの内容などにより異なります。介護サービスを利用する方が多ければ負担額も増えるため、当然、介護保険料も高くなります。
 
第8期介護保険事業計画期間(令和3年度~5年度)における介護保険の第1号保険料を見ると、最も高かったのは、東京都青ヶ島村で9800円、次いで、秋田県五城目町が8300円、福島県葛尾村が8200円、岩手県西和賀町が8100円、大阪府大阪市が8094円、福島県三島町が8000円でした。
 
一方、最も低かったのは、北海道音威子府村と群馬県草津町で3300円、東京都小笠原村が3374円、宮城県大河原町と埼玉県鳩山町が3800円となっています。最も高いところと低いところでは6500円の差があります。
 
今回、保険料を引き上げたのは全国1571市区町村の半数(48.6%)で、残りは保険料を据え置く(36.2%)か引き下げた(15.2%)ため、前回(355円増)に比べ145円しか保険料は上がっていません。おそらく、コロナ禍の家計に配慮したためでしょう。
 
(出典:厚生労働省「第8期介護保険事業計画期間における介護保険の第1号保険料及びサービス見込み量等について」(※))
 

保険料が安い市区町村に引っ越す?

これだけ市区町村によって保険料の差があると、介護保険料が安い市区町村に引っ越したほうが良いのか気になる方もいると思います。
 
介護保険料の安い市区町村の中には、そもそも介護保険サービスを提供する事業者が少なく、介護サービスが使われていない場合もあります。単に、介護保険料の安さだけではなく、医療や介護サービスの充実度や、介護施設に入所する場合は家族が通いやすい場所かなども考慮して住む場所を検討しましょう。
 

保険料を安くする方法

介護保険料の額は、本人および世帯の市区町村民税の課税状況や合計食所得額等により決まります。つまり、本人が市区町村民税非課税であっても、世帯の中に市区町村民税課税の方がいると介護保険料は高くなります。
 
そこで、検討したいのが、「世帯分離」です。世帯分離とは、同居しているが別生計なので住民票の世帯を分けることです。同じ住所の同じ家の中に、世帯主が2人いるという形になります。
 
例えば、現役で働いている子世代と、65歳以上の親が一緒に暮らしている場合、世帯分離をすることで親の所得が下がり、市区町村民税非課税世帯になれば、親の介護保険料が安くなる可能性があります。
 
一方、国民健康保険料などの負担が増える場合や、介護サービス費の合算ができないなどのデメリットがありますので、事前にシミュレーションすることが大切です。なお、世帯分離するには、役所の住民課または戸籍課へ行き「住民異動届」を提出します。
 
(※)厚生労働省「第8期介護保険事業計画期間における介護保険の第1号保険料及びサービス見込み量等について」
 
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。

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