更新日: 2021.08.31 その他保険

給与が下がった場合、社会保険料に反映されるのいつ?

執筆者 : 新井智美

給与が下がった場合、社会保険料に反映されるのいつ?
通常、実際の報酬と標準報酬月額との間に大きな差が生じないように社会保険料は毎年4月から6月の3ヶ月間の報酬月額を基として計算されます。しかし、その後給与が下がったなどの理由で社会保険料が変わることもあります。
 
4月から6月の報酬月額を基に算出される保険料を「定時決定」といい、それ以外に保険料が変わることを「随時改定」といいますが、それによって変わった保険料はいつから反映されるのでしょうか。随時改定が行われる要件と併せて解説します。
新井智美

執筆者:新井智美(あらい ともみ)

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
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社会保険料の決まり方

社会保険料には、会社に入ったとき、年度が替わるとき、給与が下がったときなど、それぞれの条件に応じて算出方法が決まっています。
 

■入社時

入社時の社会保険料は、その会社の就業規則や勤務形態に基づいた「資格取得時の決定」にしたがって標準報酬月額を決定し、保険料が決まります。その内容については、報酬の決定方法によって以下のとおり異なります。
 

1.報酬が一定期間によって定められる場合
入社時点の報酬額をその期間の総日数で割り、その額に30を乗じた額
 
2.報酬が日給や時給、その他出来高などで決まる場合
入社する前1ヶ月の間に同様の業務を行った人の報酬を参考にし、それらの報酬の平均額にて決定します。ちなみに、この方法で決定した標準報酬月額は、その年の8月までの各月に適用されます。
 
(出典:日本年金機構「資格取得時の決定」(※1))

 

■定時決定

事業主は、7月1日時点で在籍している従業員の標準報酬月額を、その前の4月から6月の3ヶ月間に支払った報酬に基づいて計算します。これを定時決定といい、この算定によって決まった標準報酬月額に基づいて社会保険料が決定します。
 
決定した保険料は、その年の9月から翌年の8月まで適用されます。また、短時間労働者については、4月から6月の間の報酬支払日数によって以下の方法で計算されます。
 

1.4月から6月の3ヶ月間に報酬支払日数が17日以上ある月がひと月以上ある場合
その該当する月の報酬総額の平均を報酬月額とし、標準報酬月額を決定します。
 
2.4月から6月の間の報酬支払日数がいずれの月も17日未満の場合
3ヶ月間における報酬支払日が15日以上17日未満の月の報酬総額の平均を報酬月額とし、標準報酬月額を決定します。
 
3.4月から6月の間の報酬支払日数がいずれの月も15日未満の場合
従前の標準報酬月額がそのまま適用されます。
 
(出典:日本年金機構「定時決定」(※2))

 

■随時改定

従業員に支払う報酬が定時決定時と比べて大きく変動した場合は、次の定時決定を待たずに変更を行います。このことを随時改定といいます。随時改定の対象となるには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
 

1.昇給もしくは降給などによって、固定給に大きな変動があったこと
2.変動があった月から3ヶ月間の報酬(残業手当等の非固定的賃金を含む)の平均月額と、それまでの標準報酬月額に2等級以上の差が生じていること
3.変動があった月から3ヶ月間のそれぞれの月の報酬支払基礎日数が17日以上あること

 
(出典:日本年金機構「随時改定」(※3))

 

給与が下がってから社会保険料に反映されるまで

給与が下がったなどで随時改定の要件を満たす場合においては、給与の変動があった月から数えて4ヶ月目から反映されます。
 
ただし、産前産後休業終了時や育児休業等終了時においては、随時改定の要件を満たさなくても、復帰した月以後3ヶ月間の報酬平均額に基づき、4ヶ月目から反映されることとなっています。
 

社会保険料の料率

2021年7月時点の社会保険料の料率は、厚生年金保険料、子ども・子育て拠出金、健康保険料それぞれによって異なります。ちなみに厚生年金保険料率は18.3%で事業主との折半となっていますが、子ども・子育て拠出金はすべて事業主が負担することとなっており、その料率は0.36%です。
 
健康保険料の料率については、加入している団体が全国健康保険協会管掌健康保険なのか、健康保険組合なのかによって異なりますので、全国健康保険協会管掌健康保険の場合は自治体の窓口に、健康保険組合の場合は健康保険組合の窓口に確認してみてください。
 
(出典:日本年金機構「保険料額表」(※4))
 

まとめ

何らかの理由で給与が下がった場合には、その変更月から4ヶ月後に新しい保険料が適用されます。また、これらの手続きは事業主が日本年金機構に届け出を提出することで反映されますので、事業主側も随時改定が発生する場合は、その発生した月から3ヶ月後に速やかに提出する必要があります。
 
また、算定根拠となる標準報酬月額は固定的賃金で計算されます。したがって、残業が減ったことで収入が下がったなどの場合は給与が下がったことにはなりませんので、随時改定の対象とはならない点も覚えておきましょう。
 
出典
(※1)日本年金機構「資格取得時の決定」
(※2)日本年金機構「定時決定」
(※3)日本年金機構「随時改定」
(※4)日本年金機構「令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和2年度版)」
 
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

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