更新日: 2021.09.08 その他保険
健康保険が「3割負担」ではないのはどんなとき? 意外と知らない社会保障
意外と知らない健康保険の自己負担ルールについて解説します。
執筆者:馬場愛梨(ばばえり)
ばばえりFP事務所 代表
自身が過去に「貧困女子」状態でつらい思いをしたことから、お金について猛勉強。銀行・保険・不動産などお金にまつわる業界での勤務を経て、独立。
過去の自分のような、お金や仕事で悩みを抱えつつ毎日がんばる人の良き相談相手となれるよう日々邁進中。むずかしいと思われて避けられがち、でも大切なお金の話を、ゆるくほぐしてお伝えする仕事をしています。平成元年生まれの大阪人。
基本の負担割合は年齢や年収によって違う
多くの方の自己負担割合は「3割」ですが、小学校に入る前のお子さんや70歳以上の方については、負担が少なくなるように設定されています。
(出典:厚生労働保険局 患者負担について(平成27年11月20日) 「医療費の一部負担(自己負担)割合について」(※1))
お子さんの医療費については、自治体の助成制度で「0円~上限500円」程度に設定されている場合も多いので、お住まいの自治体などに確認をしてみてください。
70歳以上の方の負担割合は1割~2割ですが、現役並みの所得がある人(目安:年収370万円)の人は、それまでどおり3割負担のままです。
ちなみに2021年に法改正があり、2022年度中には75歳以上で一定の所得(単身:年収200万円、複数人世帯:合計320万円以上)がある人の負担割合が2割にアップする予定です(※2)。
健康保険には、医療費の負担額が一定以上になった場合に、超えた分を国から支給してもらえる「高額療養費」という制度もあります。
特別に負担割合が下がるケース
通常は3割負担の方でも、特別な場合に負担が軽減されることがあります。
例えば「自立支援医療」という制度では、うつ病や統合失調症など精神疾患で継続的に通院が必要な人が申請して認められれば、その通院にかかる医療費が「1割」負担になります(※3)。
自立支援医療の対象になると、通常の高額療養費制度よりもさらに自己負担の上限が低く設定された軽減措置を受けることもできます(※4)。ちなみに、生活保護を受けている場合は自己負担「0割」=負担なしで医療を受けられます。
全額負担になるケース
健康保険が使えず全額自己負担になるケースもあります。例えば以下のような医療を受けたときです。
・美容目的の整形手術
・研究中の先進医療
・正常な妊娠や出産
・経済的理由による人工妊娠中絶
など
正常な妊娠や出産は「病気ではない」という扱いなので健康保険は適用できませんが、健診チケットや出産育児一時金など経済的な負担を抑えるための支援が受けられます。
健康保険の対象になる医療を受けたときでも、全額自己負担になる場合もあります。全国健康保険協会では、以下のような条件にあてはまると「療養の給付が受けられなかったり、一部を制限されたりすることがある」と明示しています。
・犯罪行為や故意に事故(病気・けが・死亡など)を起こした
・ケンカ、酒酔いなどで病気やけがをした
・正当な理由もないのに医師(病院)の指示に従わなかった
・詐欺、その他不正に保険給付を受けた、もしくは受けようとした
本人が悪質な行為で原因を作って医療を受けたような場合は、保障の対象にならないということです。
まとめ:健康保険は意外と役に立つ
病気やけがに見舞われない限り、健康保険について考える機会はあまりないかもしれません。しかし、こうした知識があると実際に病院にかかることになったときはもちろん、民間の医療保険への加入を検討するときにも役立ちます。
自立支援医療や高額療養費など、負担を軽減できる仕組みがあることを知っていれば、医療費の負担に悩んだり苦しんだりせずに済むかもしれません。法改正で変わってしまうことも多いですが、情報を取り逃さないようにしたいですね。
(※1)
厚生労働保険局 患者負担について(平成27年11月20日) 「医療費の一部負担(自己負担)割合について」P4/41
(※2)
日本経済新聞「75歳以上医療費2割負担、関連法成立 年収200万円から」(2021年6月4日付)
(※3)
厚生労働省「自立支援医療(精神通院医療)の概要」
大阪市「自立支援医療(精神通院)」
堺市「自立支援医療(精神通院)制度について」
(※4)
厚生労働省「自立支援医療における利用者負担の基本的な枠組み」
(出典)
厚生労働省「自立支援医療」
全国健康保険協会 ホームページ
執筆者:馬場愛梨
ばばえりFP事務所 代表