自転車保険の義務化広がる!でも加入前に確認を

配信日: 2021.10.22

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自転車保険の義務化広がる!でも加入前に確認を
平成27年10月に、兵庫県で初めて自転車損害賠償責任保険等への加入義務化が条例で制定されました。その後も義務化を導入する地方自治体や、義務化までとはいかないが努力義務とする地方地自体が増えています。
 
今後も自転車損害賠償責任保険等への加入を義務化とする地方自治体は増える可能性がありますが、自転車保険を検討する前に確認しておきたいポイントをまとめてみました。
吉野裕一

執筆者:吉野裕一(よしの ゆういち)

夢実現プランナー

2級ファイナンシャルプランニング技能士/2級DCプランナー/住宅ローンアドバイザーなどの資格を保有し、相談される方が安心して過ごせるプランニングを行うための総括的な提案を行う
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自転車損害賠償責任保険等への加入促進

国土交通省はホームページ上で「最近では、自転車事故によって他人の生命や身体を害した場合に、加害者が数千万円もの高額の損害賠償を命じられる判決事例が出ています。」と自転車損害賠償責任保険等の必要性について記載し、加入を促進しています。
 
全国で加入を義務化しているのではなく、都道府県など地方自治体に対して自転車損害賠償責任保険等への加入義務付けの要請となっており、この要請を受けた地方自治体が状況を確認しながら義務化や努力義務を導入しているという段階です。
 
令和3年4月1日時点での制定状況は以下のとおり、加入の義務化が22都府県と2政令指定都市、努力義務が10道県となっています。
 

条例の種類 都道府県
義務化 宮城県、山形県、群馬県、埼玉県、東京都、神奈川県、
山梨県、長野県、静岡県、愛知県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、愛媛県、福岡県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県
千葉市、岡山市(政令指定都市)
努力義務 北海道、青森県、茨城県、千葉県、富山県、和歌山県、
鳥取県、徳島県、香川県、高知県

※自転車活用推進官民連携協議会 「重点的な取組」を基に筆者作成
 
義務化されている地方自治体で、自転車保険に加入していない場合に罰則などがあるかというと、現状は条例違反ではあるものの罰則などは設けられていないようです。
 
しかし、自転車事故による損害賠償額が高額化していることを考えると保険への加入は必要でしょう。
 

自転車事故での高額賠償の事例

一般社団法人日本損害保険協会のホームページでは、過去の高額賠償額となった事故の事例が挙げられています。
 

判決認容額(※) 事故の概要
9,521万円 男子小学生(11歳)が夜間、帰宅途中に自転車で走行中、歩道と車道の区別のない道路において歩行中の女性(62歳)と正面衝突。女性は頭蓋骨骨折等の傷害を負い、意識が戻らない状態となった。
( 神戸地方裁判所、平成25(2013)年7月4日判決)
9,330万円 男子高校生が夜間、イヤホンで音楽を聞きながら無灯火で自転車を運転中に、パトカーの追跡を受けて逃走し、職務質問中の警察官(25歳)と衝突。警察官は、頭蓋骨骨折等で約2か月後に死亡した。
(高松高等裁判所、令和2(2020)年7月22日判決)
9,266万円 男子高校生が昼間、自転車横断帯のかなり手前の歩道から車道を斜めに横断し、対向車線を自転車で直進してきた男性会社員(24歳)と衝突。男性会社員に重大な障害(言語機能の喪失等)が残った。
(東京地方裁判所、平成20(2008)年6月5日判決)
6,779万円 男性が夕方、ペットボトルを片手に下り坂をスピードを落とさず走行し交差点に進入、横断歩道を横断中の女性(38歳)と衝突。女性は脳挫傷等で3日後に死亡した。
(東京地方裁判所、平成15(2003)年9月30日判決)
5,438万円 男性が昼間、信号表示を無視して高速度で交差点に進入、青信号で横断歩道を横断中の女性(55歳)と衝突。女性は頭蓋内損傷等で11日後に死亡した。
(東京地方裁判所、平成19(2007)年4月11日判決)

(※)判決認容額とは、上記裁判における判決文で加害者が支払いを命じられた金額です(金額は概算額)。上記裁判後の上訴等により、加害者が実際に支払う金額とは異なる可能性があります。
(引用:一般社団法人日本損害保険協会 「自転車事故と保険」)
 
こうした事例のように自転車に乗っていて事故を起こした場合、高額な賠償責任を負う可能性もあります。また、自転車に乗っている本人に対する保険というより、被害を受けた方に対する損害賠償を考えた保険加入が必要だということが分かります。
 

自転車保険への加入

それでは、自転車損害賠償責任保険等にはどういったものがあるのでしょうか。自転車活用推進官民連携協議会のホームページでは、保険の種類に関して「個人賠償責任保険」と「TSマーク付帯保険」があります。
 
個人損害賠償責任保険は、民間の損害保険会社で自転車保険として販売されている保険の主契約の保険種類になっていることもあり、補償内容によって損害賠償責任だけではなく、契約者の家族が起こした事故なども補償対象とすることが可能です。保険料は年間4000円~2万円程度となっています。
 
一方、TSマーク付帯保険とは自転車安全整備士が点検・確認し、TSマーク(シール)が貼られた普通自転車の事故が対象となる保険で、保険に加入するというよりも整備を行うことで保険が付いてくるというものです。
 
補償には賠償責任補償と傷害補償、被害者見舞金がありますが、TSマークには青色TSマークと赤色TSマークの2種類があり、赤色マークの方が補償内容が手厚くなっています。
 

補償内容 青色TSマーク 赤色TSマーク
賠償責任補償 死亡もしくは
重度後遺障害(1~7等級)
1000万円 1億円
傷害補償 死亡もしくは
重度後遺障害(1~4等級)
30万円 100万円
入院(15日以上) 1万円 10万円
被害者見舞金 入院(15日以上) なし 10万円

※公益財団法人日本交通管理技術協会 「TSマークとは」を基に筆者作成
 
TSマークに付帯されるため保険料は発生しませんが、保険の有効期間は点検日から1年以内となっており、毎年の整備費用が必要になってきます。また、補償内容(TSマークの種類)によって整備費用が違うことや、保険金の支給要件が個人賠償責任保険に比べて厳しくなっている点にも注意しましょう。
 

自動車保険や火災保険を確認

自転車保険は損害保険の個人賠償責任保険に該当しますが、自動車保険や火災保険には特約として個人賠償責任保険特約があります。
 
自動車保険や火災保険の特約では同居している親族だけでなく、別居している未婚の子まで補償の対象となっていますので、自転車保険への加入を検討する際には加入中の自動車保険や火災保険の内容のほか、特約を付加した場合の保険料を確認してみるのもいいでしょう。
 

まとめ

今後、自転車損害賠償責任保険等への加入を義務化、または努力義務とする地方自治体は増える可能性があります。また、現在は保険に加入しなくても罰則はありませんが、条例違反として罰則を設ける地方自治体が出てくることも考えられます。
 
家族が多い家庭ではおのおのが自転車保険に加入したり、新たに保険に加入する必要がないケースもあると思いますので、まずは現在加入されている損害保険の確認を行ってみましょう。
 
出典
国土交通省 自転車損害賠償責任保険等への加入促進について
自転車活用推進官民連携協議会 重点的な取組
一般社団法人日本損害保険協会 自転車事故と保険
公益財団法人日本交通管理技術協会 TSマーク
 
執筆者:吉野裕一
夢実現プランナー

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