更新日: 2021.11.03 その他保険

令和4年からアルバイトやパートの社会保険適用が拡大。具体的に何が変わるの?

令和4年からアルバイトやパートの社会保険適用が拡大。具体的に何が変わるの?
高齢者や女性などの社会進出が進み、働き方も多様化しました。短時間労働者(アルバイトやパートなど)として働く人も多くいます。そして、現在の社会保険適用者以外の短時間労働者についても、一定の要件を満たしている場合は社会保険加入が必須となり、社会保険適用の拡大が平成28年10月に実施されました。
 
今後、令和4年10月と令和6年10月に段階的に社会保険適用が拡大される予定です。今回は令和4年10月から実施される社会保険適用の拡大について見ていきましょう。
小久保輝司

執筆者:小久保輝司(こくぼ てるし)

幸プランナー 代表

30数年の営業経験と金融・経済の知識をマッチング納得いくまでお話しさせていただきます。

短時間労働者の社会保険加入要件とは

平成28年9月以前の「短時間労働者の社会保険加入要件」は、1週間の所定労働時間または1ヶ月の所定労働日数が正社員の4分の3以上の人が対象でしたが、
 
平成28年10月以降の「短時間労働者の社会保険加入要件」は、

(1)事業所の規模が被保険者501人以上(常時)
(2)所定労働時間が週20時間以上
(3)賃金が月8万8000円以上
(4)雇用期間が1年以上の見込み
(5)学生ではないこと    

となりました。
 
そして令和4年度10月以降の変更点は

(1)の事業所の規模が常時501人以上から「常時101人以上」に  
(4)の雇用期間が、1年以上の見込みから「2ヶ月を超える」見込みに

 
さらに令和6年度10月以降の変更点は
(1)事業所の規模が常時101人以上から「常時51人以上」になる予定です。(※1)
 

社会保険加入のメリット・デメリットとは

短時間労働者として働く場合に、社会保険に加入することによるメリットとデメリットが出てきます。主なものは以下の通りです。
 
最大のメリットは、「社会保険の保険料」は労使折半となっており、企業が保険料の半分を負担、自己負担は半分で済むということです。また厚生年金保険では、掛け金が将来の年金に上乗せされることもメリットの1つです。
 
デメリットは、保険料を払うので収入が減ることです。また配偶者の扶養に入っている場合は、配偶者の扶養から外れることになります。
 

社会保険料のシミュレーション

では、もしパートで働いていて社会保険に加入することになったら、社会保険料はどうなるのでしょうか。
具体例として、パートの「Aさん」38歳の社会保険料を、平成4年度の社会保険加入要件を当てはめ、計算してみましょう。
 
「Aさん」は現在専業主婦ですが、パートで令和4年10月より介護の仕事をし、賃金は月10万円(時給1000円、週25時間、月4週間)で半年間働く予定とします。
 
Aさんは、令和4年10月度の社会保険加入要件を満たし、社会保険料の額を決める基準となる標準報酬月額は9万8000円となります。
 
この場合、Aさんは月に健康保険料4821円、厚生年金保険料8967円、合計で1万3788円負担することになります。したがってAさんの手取り金額は8万6212円(=10万円-1万3788円)になります。
※金額は円単位、令和3年3月度の保険料額表より(※2)
 
「社会保険」には、医療保険・年金保険・介護保険(40歳から加入)・雇用保険・労災保険の5つがありますが、ここでは健康保険と厚生年金保険で計算しています。
 

その他の注意点としては

一般的に106万円と130万円は社会保険料の壁と言われ、扶養に入っている人が短時間労働者として働く場合は、注意が必要です。その内容は以下の通りです。(※3)
 

106万円(月8万8000円×12で計算)の壁とは

賃金が、年額で106万円になると配偶者の扶養から外れると言われていますが、実際には「年間の賃金」ではなく「月間の賃金」で計算されます。賃金が月8万8000円以上になり、さらに「社会保険の適用要件」を満たした場合に、社会保険に加入することになります。
 

130万円(標準報酬月額11万円×12で計算)の壁とは

130万円の壁とは、社会保険の適用要件とは違い、「被扶養者枠」(配偶者等の扶養)に入れるかどうかという壁です。年収が130万円を基準として、社会保険を適用するかどうかを健康保険組合等が判断します。
 
※「標準報酬月額」は、残業代・通勤手当・賞与を含みますが、「社会保険の適用要件」の賃金は残業代・通勤手当・賞与は含みません。
 

まとめ

短時間労働で働く場合でも、働き方によっては社会保険に入る必要があり、個人においても世帯でも収入が変わることがありますので注意が必要です。
 
社会保険料を払わずに短時間労働で働く選択肢もありますが、将来的に安心して暮らすための保障も考える必要があるのではないでしょうか。特に厚生年金は、現在負担した部分は年金として老後に加算されますので、長い目で見て働き方を考える必要があります。
 
出典
(※1)日本年金機構 令和4年10月からの短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大
(※2)全国協会保険協会 令和3年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表
(※3)厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイト
 
執筆者:小久保輝司
幸プランナー 代表

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