更新日: 2021.12.21 その他保険
2022年1月に改正される会社員が利用できる「傷病手当金」一体どこが変わったの?
その傷病手当金、2022年1月1日の改正で、さらに保障が手厚くなります。今回は傷病手当金とどのような改正が行われたのかを見ていきましょう。
執筆者:田久保誠(たくぼ まこと)
田久保誠行政書士事務所代表
CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、特定行政書士、認定経営革新等支援機関、宅地建物取引士、2級知的財産管理技能士、著作権相談員
行政書士生活相談センター等の相談員として、相続などの相談業務や会社設立、許認可・補助金申請業務を中心に活動している。「クライアントと同じ目線で一歩先を行く提案」をモットーにしている。
傷病手当金とは?
傷病手当金とは、被保険者が業務災害以外の病気やけがで療養のため仕事を休み、その間給与等が支払われない、または減額されたためその支給額が傷病手当金の給付額より少ないとき、被保険者の生活費を保障するために健康保険組合等から支給される保険給付です。基本的に、正社員や契約社員、派遣社員、パート、アルバイトなどの雇用形態や健康保険に加入している期間を問わず受給できます。
ちなみに、業務上の事由による病気やけがは、労働者災害補償保険(以下、労災保険)の対象になります。また、自営業者やフリーランスの方など国民健康保険の被保険者は、病気やけがで仕事を休んでも傷病手当金を受給できません(一部国民健康保険組合を除く)。
給付を受けるための条件は、下記の4つの条件を満たす必要があります。
1.業務外での病気やけがの療養のためであること
2.仕事に就くことができないこと
3.連続する3日間(待期期間)を含み、4日以上仕事に就けなかったこと
4.待期期間後の4日目以降は、給与の支払いがないこと
支給金額は過去12ヶ月の標準報酬月額を基準に決定します。具体的には、
1日あたりの金額=(支給開始日以前の継続した12ヶ月間の各月の標準月額を平均した額・・A)÷30日×2/3
となります。ちなみに、支給開始日以前の期間が12ヶ月に満たない場合は、(1)支給開始日の属する月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均額、(2)30万円(支給開始日が平成31年4月1日以降の場合)のいずれか低い額をAに当てはめて計算します。
資格喪失の日の前日(退職日等)まで被保険者期間が継続して1年以上あり、被保険者資格喪失日の前日に、現に傷病手当金を受けているか、受けられる状態(上記の1.2.3.4の条件を満たしている)であれば、資格喪失後も引き続き支給を受けることができます。
ただし、いったん仕事に就くことができる状態になった場合、その後再度仕事に就くことができない状態になっても、傷病手当金は支給されません。
支給期間は?
今回の法改正で変わったのはこの部分です。
2021年12月までは、傷病手当金が支給される期間は、待期期間の翌日の4日目が起算日となり、「支給開始日から起算して1年6ヶ月」が限度でした。つまり、療養→回復→療養→回復といった療養生活になった場合、回復して働いている期間には傷病手当金が支給されないため、実際の給付額は、1年6ヶ月の満額より少なくなるケースがありました。
しかし、法改正で2022年1月1日より、「支給開始日から通算して1年6ヶ月」と改正されました。
つまり、同一のけがや病気に関する傷病手当金の支給期間が、支給開始日から通算して1年6ヶ月に達する日まで対象ですので、支給期間中に途中で就労するなど、傷病手当金が支給されない期間がある場合には、支給開始日から起算して1年6ヶ月を超えても、繰り越して支給可能になります。
■支給期間の考え方
(出典:厚生労働省「令和4年1月1日から健康保険の傷病手当金の支給期間が通算化されます」(※))
まとめ
病気やけがで長期療養が必要になったときは、心身ともに不安になるだけでなく、経済的にも不安を感じるものです。そのようなとき、「傷病手当金」制度をうまく活用して少しでも不安を取り除くようにしましょう。
また、今回の改正で支給期間が通算されたことから、体調が再度悪くなっても安心して療養できるようになったので、回復時には心置きなく働けます。
(※)厚生労働省「令和4年1月1日から健康保険の傷病手当金の支給期間が通算化されます」リーフレット
(出典)
厚生労働省「令和4年1月1日から健康保険の傷病手当金の支給期間が通算化されます」
全国健康保険協会 協会けんぽ「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」(トップページ)
※2021/12/21 タイトルを一部修正させていただきました。
執筆者:田久保誠
田久保誠行政書士事務所代表